2019年6月13日 第24号
ジャスティン・トルドー首相は10日、ケベック州モン・サン・ティレールで記者会見し、使い捨てプラスチック製品の使用を禁止する計画を発表した。早ければ2021年には実施するという。
しかし、使用を禁止するプラスチック製品の種類や実施に向けてのタイムラインなど、詳細については明らかにしなかった。
2021年まで実施しない理由について政府は、これから「科学的根拠」に基づいた調査で禁止する製品を決定していくと語り、実施されれば中小企業に大きな影響を与え、消費者にも影響があるため、その準備期間としても猶予が必要との見解を述べた。
使い捨てプラスチック製品には、ビニール袋、飲み物のカップやフタ、ストロー、プラスチック製ナイフ・フォーク類、持ち帰り用容器などがある。自由党政権はこれらの製品の使用禁止を視野に入れて検討するとみられている。
こうした使い捨てプラスチック製品使用禁止の動きは、すでにヨーロッパで広がっている。昨年カナダで開催されたG7(主要7カ国首脳会議)で「海洋プラスチック憲章」が発案され、議長国のカナダをはじめ、イギリス、イタリア、ドイツ、フランス、欧州連合が署名、日本、アメリカは参加を拒否した。
カナダ政府環境・気候変動省によると、現在カナダでは使い捨てプラスチック製品がプラスチックごみの約3分の1を占めているという。ビニール袋は毎日約34万枚(年間150億枚)、ストローは毎日約5700万個使用されていると試算している。これらのほとんどがゴミとして捨てられる。政府の調べによると2016年にはプラスチックゴミでリサイクルされたのは9パーセント、87パーセントはゴミとして埋め立てられたという。
今年4月にはフィリピンで、2013・14年にカナダからリサイクル用として輸入されたプラスチックゴミが実は一般ゴミが混ざった物だったとして、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領が1500トンのゴミをカナダに送り返すと激怒し、戦争も辞さないとの強い姿勢でカナダにゴミの引き取りを迫った。さらに5月15日の期限を過ぎても態度を示さなかったカナダ政府を批判、在カナダのフィリピン大使や領事を召還した。5月30日にはカナダが引き取ったが、その費用は11万4000ドルになるという。またマレーシアでも同様の事態が起き、マレーシア政府は3000トンのゴミをカナダをはじめ、アメリカ、日本、イギリスに送り返すと発表した。
カナダ政府は今後、プラスチック製品を製造販売する企業が、製造からリサイクルまでの責任を負う仕組みをつくっていくと発表している。
新民主党(NDP)は先週、党の環境対策として2022年までに使い捨てプラスチック製品を禁止することを盛り込んでいる。
2019年6月13日 第24号
カナダ統計局は5月のカナダの失業率が、統計を始めた1976年以降で最も低い5・4パーセントを記録したと7日に発表した。4月の失業率は5・7パーセントだった。
5月の就業者数は27700人増。ただ自営業者が61500人増加したのに対して、フルタイム雇用者は33800人減少、うち13100人が公的機関で、20700人が民間企業となっている。専門家は、数字上は史上空前の好景気のように聞こえるが、内容はそうでもないと指摘。5月は就業時間数も減少しているため、手放しで喜べる状況でもないと語っている。
事業別では、就業者数が増加したのはサービス業で22800人。ヘルスケアやソーシャル・アシスタント産業で20400人、専門職・科学技術職で17200人。一方で、事業所・建築設備サポート関連で19400人減、宿泊・飲食産業で12000人減少した。
地域別では、オンタリオ州が20900人増、ブリティッシュ・コロンビア州で16800人増と好調だった。失業率が最も低いのはBC州で4・3パーセント(前月4・6)。前月から0・3パーセント改善している。次いでケベック州5・0パーセント(同4・9)、オンタリオ州5・2パーセント(同6・0)。主要都市では、BC州バンクーバーが4・2パーセント(同4・4)、モントリオールが5・4パーセント(同5・4)、トロントが6・3パーセント(同6・6)だった。
2019年6月13日 第24号
ブリティッシュ・コロンビア(BC)州バンクーバー市で9日、トランスマウンテン・パイプライン拡張工事計画に反対するデモが開かれた。フォールスクリークに集まった約500人がジャスティン・トルドー首相に対して、計画を承認しないように呼びかけた。
トランスマウンテン・パイプライン拡張計画は、アルバータ州エドモントン近郊からBC州バーナビー市のターミナルまで延びるアルバータのオイルサンドを運ぶパイプラインを拡張する事業計画。完成すれば、オイルサンド輸送量は1日89万バレルと現在の3倍になり、バーナビー市のターミナルからオイルサンドを運ぶタンカー航行数は、現在の月5隻から毎日1隻に増加する。そのため、事故の危険性が増し、海洋生物への影響が計り知れないと反対派は主張している。
同パイプライン事業は2016年に一度トルドー政権が承認したものの、昨年8月に連邦上訴裁判所が、海洋生物への影響への調査と先住民族への説明責任が不足として承認を無効とし、連邦政府は改めて海洋への影響調査をカナダエネルギー委員会に指示。今年2月22日に同委員会は、経済的貢献が大きいとして条件付きながら事業を承認した。
それを受けトルドー政権は今月18日までに事業を継続するか否かを決定する。
バンクーバーでは、BC州政府をはじめ、環境活動家、先住民族、バンクーバー市、バーナビー市などが事業に反対を表明、反対運動が続いている。
今回参加した先住民族のBCインディアン・チーフ・ユニオン代表ジュディ・ウィルソン氏は、裁判所の判決が出たにもかかわらず連邦政府は相変わらず説明不足のままと語り、もし仮に政府が承認しても最後まで対抗すると語っている。
2019年6月13日 第24号
在カナダ中国大使盧沙野(ルー・シャーイエ)氏が6月末で退任し、フランスの大使として赴任することが分かった。5日、CTVが伝えた。
盧氏は2017年に赴任。昨年12月にブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー国際空港でファーウェイCFO(最高財務責任者)孟晩舟氏が逮捕拘束されて以降は、カナダの全国紙グローブ&メールに意見記事を掲載するなど、カナダ政府を強く非難している。
カナダと中国の関係は、孟CFOが拘束されて以降、緊張状態が続いている。昨年12月には中国国内でカナダ人男性2人が拘束され、今年に入り中国政府はカナダ製キャノーラ製品輸入制限や、豚肉製品の検査基準引き上げなどの措置を取っている。
カナダでも、政府が今年1月にジョン・マッカラ在中国カナダ大使が辞任して以降、後任を発表していない。これでギクシャクする両国で両大使が不在となる。
一方、孟CFOについては6日にブリティッシュ・コロンビア州裁判所で2020年1月20日に身柄引き渡しに関する裁判を開始することが決まった。孟CFOは2018年12月1日にバンクーバー国際空港でアメリカの要請により身柄を拘束された。現在はバンクーバーの自宅で軟禁生活を送っている。
2019年6月13日 第24号
オンタリオ州トロントを拠点とする北米プロバスケットボール(NBA)トロント・ラプターズが、NBA決勝に進出しカナダ全国で大いに盛り上がっている。
ラプターズが3勝1敗で迎えた10日、トロントでの決勝第5戦は高い視聴率を得た。その第5戦のテレビ放映中に、保守党アンドリュー・シェア党首を批判するコマーシャルが流された。メディアによると、放映料は5万ドルにもなると推測されるという。
このコマーシャルを一体誰が何を意図して流したのか、波紋を呼んでいる。
放映したのはエンゲージ・カナダといわれる組織で、2014年12月に設立されたとされている。主に政治的なコマーシャルを扱うことで知られている。2015年の総選挙前には、当時の保守党政権スティーブン・ハーパー首相を批判するCMを流している。
同社広報によると、「企業利益を支配することへの抵抗」とCMの意図について声明を発表している。
CM内容は、シェア党首が隠し事をしているとか、オンタリオ州ダグ・フォード州首相の中間層を苦しめるような政策に続く可能性について批判している。
エンゲージ・カナダは草の根的組織としているが、労働組合や政党関係者とのつながりが深く、自動車産業従業員などで構成されたカナダ最大の労働組合ユニフォなどが支援している。
今回のCMが誰の依頼によって、誰が支払ったものなのかは、公表されていない。政治的CMについては、今秋の総選挙を前に6月30日以前であれば、依頼主や料金を公表する必要がないとトルドー政権が規則を定めている。
エンゲージ・カナダは6月末までCMを続けると発表している。