2019年6月27日 第26号

 ジャスティン・トルドー首相は20日、アメリカ・ワシントンDCを訪問し、ドナルド・トランプ大統領と会談した。2人そろって記者団の質問に答え、トランプ大統領は現在中国に拘束されているカナダ人男性2人について、今月28、29日に大阪で開催されるG20(20カ国・地域首脳会合)で中国の習近平国家主席と会談した時に言及すると明言した。

 トランプ大統領は「私ができることでカナダを助けられるなら何でもする」と語り、記者にもう一度聞かれた時も、「ジャスティン(トルドー首相)の頼みだから、もちろんやるよ」と答えた。

 ただトルドー首相はトランプ大統領に拘束されている2人のカナダ人男性について依頼したとは明言しなかった。

 カナダは厳しい立場に立たされている。中国でカナダ人男性マイケル・スパボア氏とマイケル・コブリグ氏が昨年12月に拘束されたのは、中国の通信大手華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟CFOがブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー国際空港で昨年12月1日にカナダ当局に拘束された数日後だった。カナダが孟CFOを拘束した理由は、アメリカ司法省がファーウェイと孟氏をアメリカの対イラン経済制裁に違反した詐欺罪などで起訴したとして孟氏の身柄引き渡しを要請していたことによるもので、カナダはアメリカと中国の間で板挟みになった状況に陥っている。

 それにもかかわらず中国からの報復とみられるカナダへの対策は今年に入っても続いている。カナダからのキャノーラ製品や豚肉製品の輸入が制限され、25日には豚肉だけではなくカナダ産の肉製品全てを輸入制限の対象にすると発表したとカナダの大手メディアが伝えている。

 カナダ政府には中国政府によるこれらの対抗措置に対抗できる手段がほとんどなく、今回の訪米でトランプ大統領に依頼したとみられている。

 中国政府は、カナダと中国の間に起こった問題はカナダ側に責任があると主張、カナダはどうすれば解決できるか知っているはずだとの声明を発表している。

 

2019年6月27日 第26号

 カナダ最大のLGBTQ(性的少数派)コミュニティの祭典プライドパレードが23日オンタリオ州トロントで開催された。この日はジャスティン・トルドー首相も参加。晴天に恵まれた中、「ハッピー・プライド」と声をかけながらパレードし、「カナダ最大のプライドパレードにまた参加することができてうれしく思っている」と語った。

 この日は自由党からはクリスティア・フリーランド外相も参加、保守党ではリサ・レイト議員、新民主党(NDP)はジャグミード・シング党首、グリーン党エリザベス・メイ党首、トロント市ジョン・トーリー市長らが参加した。

 オンタリオ州ダグ・フォード州首相は不参加を表明。制服警官の参加を主催側が見送ったためと理由を説明した。

 トロントのプライドパレードに制服警官が不参加となるのは今年で3年連続。2017年は警察による人種差別的な捜査への懸念から見送られ、2018年はトロント市警によるLGBTQコミュニティの行方不明者捜索に対する不誠実な対応が問題となった。今年は、トロントのゲイビレッジと深く関わっていた男性8人を標的にして殺害したと認めたブルース・マッカーサー受刑者の事件が尾を引いている。

 この日のパレードには約200団体が参加、沿道には多くの人が詰めかけ、プライドパレードを祝った。

 

2019年6月27日 第26号

 カナダの国会が20日に閉会した。今年は総選挙の年にあたるため、9月16日の再開を待たずに10月に予定されている選挙に突入する可能性が高いとみられている。

 そのため各党は、国会会期中に間に合わせるように政策を発表。夏の非公式な選挙戦に訴える構えを見せている。

 自由党は18日に、トランスマウンテン・パイプライン拡張工事計画承認を発表。その前日には気候変動緊急動議を発動し、経済と環境の両立を訴えた。自由党は支持率で現在、野党保守党にリードされている。次期選挙で政権維持を実現するためにも、経済だけではなく若者の関心が高い環境問題への対策も重要との位置づけで環境政策の充実を訴えていくとみられる。

 野党保守党も、これまでは環境問題を無視した政策が目立ったが、19日アンドリュー・シェア党首が環境対策を発表した。自由党が実施した炭素税に反対する保守党は、炭素税抜きでもパリ協定を実現できる環境政策と自信をみせている。クリーンテクノロジーへの投資や、よりクリーンなエネルギーを輸出することで他国の排出量を削減させる対策などが盛り込まれている。しかし実際にカナダの排出量が削減されるのか不透明で環境活動家からは天然資源産業が提案した環境対策を真似ただけと批判を浴びている。

 新民主党(NDP)は健康保険の拡大やファーマケア、住宅問題の解消を訴えた政策とパイプライン建設を反対する環境対策を発表している。しかし、これまでのところ支持率が回復する兆しは見えていない。

 グリーン党は自分たちの政策が最も環境対策と経済発展を両立させた内容と主張している。最近の選挙で連邦、州政府ともに議席を伸ばしているグリーン党。この勢いが保守党にさえも環境問題対策を選挙前に発表させる要因の一つになっていると考えられている。

 この夏は激しい選挙戦になるとみられている。

 

2019年6月27日 第26号

 オンタリオ州ダグ・フォード州首相は、大幅に改造した新内閣を20日、発表した。昨年6月7日の州議会選挙で圧勝した進歩保守党は、6月29日に政権が発足。それから約1年で大幅内閣改造となった。

 政権発足後、フォード州首相を支えていた財務大臣ヴィック・フェデリ議員は経済開発大臣へ、何かと物議を醸してきた教育大臣リサ・トンプソン議員は政府・消費者サービス大臣へ降格、キャロライン・マルルーニ司法長官は運輸大臣に異動となった。大きな降格があった中で、これまで全く役職に就いていなかった新人議員を大抜擢した。一方で、改造を発表した当日に、自身の友人や親せきを高額役職に就かせるなどしていたことが全国紙で掲載され、批判を浴びた。

 政権発足から1年、次々と独自政策を実施してきたが、州民の反感を買う政策も多かったことから、この1年で支持率は急降下。23日にメインストリート調査会社が発表した世論調査では、現在の支持率は19・9パーセント。政権発足時の73・4パーセントから53・5パーセントも下落。19・9パーセントは選挙当時、自由党政権で最低の支持率といわれたキャサリーン・ウィン党首の支持率よりも低い数字となっている。

 支持率の低さは、NBA(北米プロバスケットボールリーグ)で優勝したトロント・ラプターズの優勝パレードに参加した時のフォード州首相に向けられたブーイングにも表れていた。

 今回の内閣改造で支持率が急上昇することはない。3年後の選挙までフォード州首相にとっては厳しい政権運営が迫られる。

 連邦保守党は、今秋に控えている連邦総選挙に向け、フォード州首相との距離を置き始めている。

 

2019年6月27日 第26号

 ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー国際空港を飛び立った旅客機が、2つあるエンジンのうち1つが停止したため、バンクーバー国際空港に引き返し緊急着陸した。

 この飛行機は米アラスカ州アンカレジ行きのエアカナダ538便で、使用機材はエアバスA320型機だった。112人の乗客を乗せた同便は23日午後1時過ぎに定刻通り離陸した。そして巡航高度に達し機内サービスが始まった頃、客室乗務員が異臭に気がついたと、モントリオールからの乗客ケイティ・ヤコビッチさんは取材に当時の様子を語っている。その後間もなく、座席のエンターテイメントシステムの画面が真っ黒になったという。

 機内サービスは中止され、特に何のアナウンスもなかったものの、飛行機がUターンをして南に向かい始めたのは明らかだったと、ヤコビッチさん。やがて機長からのアナウンスがあり、この便は計器が異常を示したため、約10分でバンクーバー国際空港に緊急着陸すると伝えられた。そして機長が、実は飛行中にエンジンが停止したため、バンクーバー国際空港に引き返さざるを得なかったことを初めて乗客に明らかにしたのは、無事着陸して到着ゲートに移動し始めてからのことだった。旅客機は複数あるエンジンの1つが停止しても飛行を継続できる性能を持っており、パイロットもこうした事態に対応する訓練を受けていると、エアカナダは取材に説明している。

 飛行中はかなりの振動があったものの、客室乗務員らは常に落ち着いており、乗客が不安を感じることはなかったとヤコビッチさんは話している。

 バンクーバー国際空港に着陸したのは午後3時を少し回ったところだった。乗客はロビー到着後、エアカナダから食事券を受け取るなどして、代替機の準備が整い再び搭乗が開始されるまでの2時間余りを空港で過ごした。「飛行中に緊急事態が発生したにしても、乗組員の対応は素晴らしいものだった」と、ヤコビッチさんは感想を述べている。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。