2019年7月4日 第27号

 連邦政府キャサリン・マッケナ環境・気候変動相は6月26日、自動車による温室効果ガス削減対策でアメリカのカリフォルニア州政府と協力する覚書に署名した。これにより排出量対策でカナダがアメリカ政府ではなくカリフォルニア州政府側を支持することが濃厚となったとみられている。

 今回の合意では、自動車やピックアップトラックを対象に排出量削減で協力する。内容は、排出量に関する基準、電気自動車や燃料電池自動車などの排出量ゼロ自動車普及の推進、現在のガソリン車をよりクリーンにすることで協力、支援金や販売普及策、インフラ整備などの調査結果を共有することなどが盛り込まれている。

 カナダ政府は現在、排出量ゼロ車を購入する場合、最高で5000ドルの支援金を提供している。これは各州で実施されている同様の支援制度に上乗せすることができる。

 アメリカではドナルド・トランプ大統領が現在、バラク・オバマ前大統領時代に設定した自動車による排出量規制の基準を緩和する政策を導入予定で、さらに各州が独自の環境基準を設定することに制限をかけるとしている。しかし環境政策でアメリカをリードするカリフォルニア州がこのトランプ大統領の政策に正面から反対し、すでに独自基準を導入している環境対策を継続することを表明している。カリフォルニア州の姿勢に少なくとも13州が賛同している。

 その結果アメリカ国内に自動車の排出量に2つの基準が存在することになり、6月初めにはゼネラルモーターズやトヨタ自動車、フォルクスワーゲンなど世界を代表する自動車メーカー17社が基準統一のためトランプ政権とカリフォルニア州が話し合いをするよう要請した。

 アメリカがオバマ政権時代の基準を見直すことを昨年に発表して以降、カナダの基準設定について独自調査をすると発表。現在は中間報告段階で最終的な決定はアメリカの決定後に発表するとしているが今回の合意で、カリフォルニア側に付くとみられている。

 カナダとアメリカの自動車産業は非常に複雑な構造で産業全体が統合された状態にあるため、2つの基準はカナダの自動車産業にも影響する。昨年にはようやく新北米自由貿易協定(USMCA)が合意に至ったばかりで、カナダの自動車産業界からは連邦政府が早急にカリフォルニア側に付くことを示唆することに懸念を示している。

 

2019年7月4日 第27号

 ブリティッシュ・コロンビア州ローワーメインランドの公共交通機関を運用するトランスリンクは1日、運賃の値上げを以下のように実施した(カッコ内が値上げ後の新料金)。

大人用1回乗車券:5セントの値上げ(1ゾーン3ドル、2ゾーン4・25ドル、3ゾーン5・75ドル)

割引対象者用1回乗車券:5セントの値上げ(1ゾーン1・95ドル、2ゾーン2・95ドル、3ゾーン3・95ドル)

大人用チャージ済みコンパスカード:10セントの値上げ(1ゾーン2・40ドル、2ゾーン3・45ドル、3ゾーン4・50ドル)

割引対象者用チャージ済みコンパスカード:10セントの値上げ(1ゾーン1・95ドル、2ゾーン2・95ドル、3ゾーン3・95ドル)

大人用マンスリー・パス:3ドルの値上げ(1ゾーン98ドル、2ゾーン131ドル、3ゾーン177ドル)

割引対象者用マンスリーパス:2ドルの値上げ(全ゾーン56ドル)

大人用1日乗車券:25セントの値上げ(全ゾーン10・50ドル)

割引対象者用1日乗車券:25セントの値上げ(全ゾーン8・25ドル)

 トランスリンクは現在、輸送能力の増強、混雑緩和、およびこれまでバス路線がなかった地域への新たな路線の拡張を計画している。そのための予算は20億ドルと見込まれ、トランスリンクはその資金調達のため、今後10年にわたって毎年運賃値上げを予定しているという。この計画によると、今後10年間で500台のバスが追加されるほか、ミレニアム・ラインとエキスポ・ラインに合計56両、カナダ・ラインに24両の新車両が追加されることになる。

 

2019年7月4日 第27号

 オンタリオ州南西部、人口9万7000人あまりの都市ウォータールー市の住人が、永住権証(PRカード)を持たずに海外旅行に出かけたため、帰国できなくなってしまった。

 カナダ永住者が外国からカナダへ帰国する際には、有効なパスポートとPRカードを携行している必要がある。しかしマーガレット・パターソンさんは、有効なPRカードを持たずに妹のキャシー・スティルウェルさんとともに、イギリス・ロンドンへの旅行に出かけてしまった。

 イギリス生まれだが、7歳の時に家族とともにカナダへ移住してきたパターソンさんは、以来60年以上もカナダで暮らしている。旅行には有効なイギリスのパスポートはもちろんのこと、移民として到着した時のオリジナルの移民書類、SINカード、運転免許証、保健カードなどありとあらゆる公的証明書を携えていったパターソンさんだったが、唯一PRカードを持っていなかったため、ロンドンの空港で警備員と航空会社職員から、帰国に必要な書類が揃っていないことを理由に飛行機への搭乗を拒否された。

 ウォータールー市の移民コンサルタント、クリス・ダウさんによると、有効なPRカードを所持していないカナダ移民が外国からカナダへ帰国する場合には、永住者用渡航文書(PRTD:Permanent Resident Travel Document)を取得する必要がある。この文書の発行手数料は50ドルだが、その手続きにかかる時間は状況により大きく変わるという。

 パターソンさん姉妹は、この文書が発行されるまでホテルに滞在していたが、そのための費用はどんどん膨れ上がっていった。またウォータールー市でパターソンさんの帰りを待っていた娘のキャシー・パターソンさんは取材に対し、父親はパーキンソン病を患っており、母親は一家にとってかけがえのない存在であり、その不在の間の苦境を訴えていた。

 有効なPRカードを持っていなかったために帰国できなかった例は度々報道され、2017年にはノバスコシア州に住む英国籍のカナダ移民の男性が、同じようなケースで米ネバダ州ラスベガス空港でカナダ行きの飛行機の搭乗を拒否されたことを、メディアが取り上げている。

 この時は、PRカードなしでも入国できる方法|徒歩か車による入国|を実行するため、男性はラスベガスから空路カリフォルニア州ロサンゼルス、さらにイリノイ州シカゴへと向かい、最終的に国境近くの都市バッファローに到着。ここからはバスを乗り継ぎ、ナイアガラフォールズを挟んでカナダと接するアメリカ側の町ナイアガラフォールズに降り立った。そして徒歩で国境を渡り、カナダに無事入国している。

 

2019年7月4日 第27号

 ベビー用品のおしりふきやウェットティッシュなど、そのままトイレに流しても大丈夫とうたっている商品は、本当に流しても詰まりなどを引き起こさないのだろうか。オンタリオ州ロンドン市役所の下水道検査官であるとともに、同州トロント市のライアソン大学の博士課程に在籍しているバリー・オールさんが行った研究によると、満足な結果を出した商品はひとつとしてなかったという。

 同大学の都市水道研究室は汚水処理業界の国際基準に照らした厳格な商品テストのために、標準的な都市部の家庭のトイレの下水モデルを構築し、101の商品をテストした。そのうちの23商品には、『トイレに流せる(flushable)』との表示がなされていた。使い捨てワイプ商品の『トイレに流せる』度合いを、こうした基準でテストするのは、恐らく世界で初めてだろうと、オールさんは取材に説明している。

 しかし結果として、その基準を満たすような商品は全くなかったと、オールさん。そもそも商品に『トイレに流せる』という表示を掲げることに対する規則や基準は、どこにもないという。その上でオールさんは、トイレに流しても大丈夫なのは、排泄物とトイレットペーパーだけで、トイレはゴミ箱代わりにはなり得ないと断言している。

 メーカーは独自の『トイレに流せる』基準に照らし合わせて、『トイレに流せる』商品を作っているものの、その基準は現実の公共下水道の環境とは一致していない上に、メーカーはその基準を改めようとはしないと、オールさんは指摘する。そんな中、今回の研究報告が、テストに合格しない商品には『トイレに流せない』という表示を義務付ける方向にカナダや他の国々の政府を動かすきっかけになればと、取材に話している。

 こうした使い捨てパーソナルケア商品による下水道の詰まりの問題は、世界中の自治体で顕著になってきている。一般家庭内で問題が起きれば、その修理費用などで市民も問題意識を持ち始めるが、それが公共下水システムでの問題となると、関心は一気に薄れてしまう。

 プラスチックや合成繊維を含んだ商品は、水中では分解されない。逆に下水の中に漂う廃棄オイルや毛髪、デンタルフロスなどと絡み合い、ロープ状の塊に成長して下水管や処理場のポンプなどを詰まらせる。ある調査によると、こうした塊による被害はカナダ全体で年間2億5千万ドルに上るという。

 こうした問題に対処するため、日本ではトイレに流したあと、何秒かで水に溶けてしまうような使い捨てワイプやペットの糞用袋が開発されていると、オールさん。

 オールさんの研究を資金面で支えてきたカナダ汚水処理協会会長のウィリアム・フェルナンデスさんも、こうした『トイレに流してはいけない』商品による下水システムのトラブルは、カナダ全体で年々増えていると取材に答えている。昨年からは使い捨て商品メーカーが、表示に関する自発的な規則を設定し始めたものの、しっかりした基準の義務化が必要だとフェルナンデスさん。

 「消費者は、商品に書かれていることが正しいと信じる。しかしトイレは3つのP(pee, poop, paper)に対応するようにしか作られていない」と語っている。

 

2019年7月4日 第27号

 マニトバ州のウィニペグ地域保健局は6月28日、同局の管轄地域内に住む30代の男性が麻疹に感染、入院したことを発表した。

 男性は回復傾向にあり、他の人への感染のリスクは低いとしながらも、以下のフライトや場所に居合わせた人は感染の恐れがあると、注意を喚起している。男性はフィリピンで麻疹に感染したものと、同保健局ではみている。

・6月24日にブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー国際空港に午後5時10分頃到着した、フィリピン・マニラ発フィリピン航空116便

・6月24日午後7時頃にバンクーバー国際空港を離陸した、マニトバ州ウィニペグ行きウェストジェット458便

・以上の2便の乗継のために滞在していた、バンクーバー国際空港の到着及び出発エリア

・6月25日ウィニペグ・アシニボイン・クリニック(Winnipeg Assiniboine Clinic)またはウィニペグ・ヘルス・サイエンス・センター

 なお、この件とは別に、ケベック州モントリオール市公衆保健局が7月1日、同市に隣接する人口40万1000人ほどの都市ラバルで麻疹感染者2人を確認したと発表、さらにその2人の詳しい足取りを公表している。

 1人目は6月26日にコーヒーショップやモントリオール北部のショッピングセンターの公共エリアを訪れていた。また2人目は6月26日から29日の間に、ラバル市の公共交通機関やレストランのほか、薬局、1ドルショップ、またフィットネス・クラブなどを訪れていた。

 麻疹は咳などの飛沫を媒介する、感染力が非常に強い感染症。適切な治療を施さなければ生命に危険が及ぶこともあり、特に妊婦や免疫力に問題がある人、また1歳未満の乳児は合併症を引き起こす危険性が高い。もし感染が疑われるようならば、医療機関に連絡を取るよう、ウィニペグ保健局では呼び掛けている。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。