2020年4月30日 第14号

 毎日の各州会見で新たな新型コロナウイルス感染が発表されているが、同時に、経済活動再開に向けた規制緩和計画も進んでいる。

 最も早く規制緩和計画を発表したのはサスカチワン州。スコット・モー州首相は23日の会見で、経済再開に向けた5段階の計画を発表。第1段階は5月4日、歯科、眼科、カイロプラクティック治療などの再開、さらに比較的リスクの低い、釣りやボートなどのアウトドア活動も可能となり、5月15日にはゴルフ、キャンプを再開する。第2段階として、5月19日に小売店、美容院などを再開予定とした。モー州首相は、再開といっても公衆衛生局が示しているこれまでの規制は継続し、感染拡大の再現は避けなければならないとし、現在適用されている、集まりは10人以下という規制も継続すると語った。緩やかな再開後も感染拡大の経過は観察し、状況に応じて対応すると説明。第3段階以降の日程は、その上で決定すると語った。サスカチワン州では、計画を発表した次の日から感染者数が増加している。ただ4月27日時点で、感染者数累計365人と比較的少ない。

 すでに連続9日間、新たな感染者ゼロのニューブランズウィック州も規制緩和を始めている。公園やビーチ、ゴルフコースの使用も再開、大学やカレッジも、一部キャンパスの使用を再開している。州民も他の1家族に限定して会うことができるとしている。現在の感染者は6人、112人が回復している。

 オンタリオ州は27日、経済活動再開計画3段階を発表した。第1段階は、レストランのデリバリーやテイクアウトの再開、公園などの屋外スペースの使用再開、葬儀などのイベントへの参加人数の緩和などで、第2段階は、事務所や小売店、サービス業の再開、第3段階は、コンサートやスポーツイベントの再開など、大規模な規制緩和としている。

 しかし、オンタリオ州は新たな感染者数が減少傾向にあるとはいえ、4百人以上の感染が毎日確認されている。ダグ・フォード州首相は今回の計画発表は、「州民やビジネスの活動のための青写真を示すもので、州が今後どのように経済再開に向けた準備をしていくか分かるようにするため」と語り、あくまでも再開の方法であり、再開までの日程ではないと説明した。

 感染が最も多いケベック州でも27日、規制緩和に関する発表があった。フランソワ・レガルト州首相はまずは5月11日に、モントリオール以外でデイケアと小学校を再開、19日にはモントリオールでも再開すると語った。ただし、州内の入院患者状況が落ち着いた状態を維持した場合と条件を付けた。大学を含むそれ以外の学校は秋以降とした。

 ケベック州は国内も感染者数、死亡者数ともに最も多く、現在でも毎日約8百人の感染が確認されている。長期療養施設での悲劇的な事件があって以降、カナダ軍に支援を要請する事態に発展している。

 アルバータ州はこれまでのところ、経済再開に向けた動きは全くない。

 国内の主要州で比較的感染状況が落ち着いているブリティッシュ・コロンビア(BC)州では、27日に発表された1日の新たな感染者が11人と、3月14日以来の水準まで下がった。それでもBC州衛生管理局長ボニー・ヘンリー博士は慎重な姿勢を崩さない。27日の会見では、近いうちにメイドインBCの計画を発表すると言及するにとどまった。規制緩和はゆっくりと段階的に実施、少し数字が下がったからといって、一気に緩和することはない、フィジカルディスタンスは引き続き実施が必要と語った。

 トルドー首相は、経済活動再開のための規制緩和については、公衆衛生局長などの専門家のアドバイスを参考に、州政府と協力してガイドラインを示すと語った。「各州で感染状況などが違うため、詳細は州政府が決定するが、カナダで統一した認識で実施していく」と会見で述べた。ワクチンが有効になるまでは、フィジカルディスタンスが解除されることはないと念を押した。

 

2020年4月30日 第14号

 各州が経済活動再開に向け、計画的な規制緩和策を検討しているが、ジャスティン・トルドー首相は「ワクチンが利用できるまではフィジカルディスタンスなどの一定の規制は続く」と明言した。今年中は、新型コロナウイルス感染対策を意識した、ニューノーマルな現実が続くことになるとの認識を示している。

 フィジカルディスタンスなどの公衆衛生に関する規制については、違反した場合には、罰金や禁固刑を科すという厳しい態度で臨んでいる州政府も多い。

 ケベック州やオンタリオ州など、感染が拡大している州ではもちろん、比較的ウイルス封じ込めに成功しているブリティッシュ・コロンビア州でも、違反した場合は、最高で2万5千ドルの罰金か禁固刑という罰則が設けられている。バンクーバー市など、各市で罰則を設けている場合もある。各市では見回りを強化し、多くの場合は注意のみだが、必要なら違反切符で罰金を科している。

 一方で、見回りでも警察が新型コロナウイルス関連で違反切符を切ることはない。詐欺が横行している現状で、新型コロナウイルスの不安をあおる詐欺などには注意が必要と呼びかけている。

 

2020年4月30日 第14号

 連邦政府は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、収入が減少した個人や企業・団体向けの支援策を、4月に入ってから続けて発表している。

 最も早くに実施されたのは、仕事に行けなくなった人や仕事がなくなった人で、収入がゼロになった個人向けの現金給付策、カナダ緊急対応資金援助CERB。条件に該当する個人で給付を希望する人に4週間2千ドルを支給。4月6日から申請が開始し、初日で百万人、2日目も70万人の申請があったと、ジャンイブ・デュクロ予算庁長官が会見で明らかにした。

 その後、収入がゼロという条件は、収入があっても大幅な減収となって厳しい状況に追い込まれている人々を救えないとの声に対応し、4月15日には条件の緩和を発表。1カ月千ドルを上限として、収入がある人もCERBに申請できると変更した。

 大学生を対象にした現金支給策、カナダ緊急学生資金援助CESBは22日に発表された。夏休みに学費を稼ぐ大学生にとって、経済が停止している現状況では仕事を確保することが難しいと説明。現役大学生のほかに、秋から大学に入学予定者や、2019年12月に卒業した大学生も含めて対象とするとした。給付期間は5月から8月の4カ月。歳入庁ウェブサイトから申請できる。

 また、夏休みに仕事を探している学生向けに、7万6千件の雇用を創設すると発表。現在、人手不足になっている分野を中心に、若者の雇用を手助けする。ジャスティン・トルドー首相は朝の会見で、カナダは教育やサービス、働き方に価値を見出す国であり、学生はこの国の将来を背負って立つ人材であるとして、今回の新型コロナウイルスによって厳しい現状に立ち向かっていると思うが、政府の対策で少しでも希望を見出してほしいと語り、「カナダが君たちに期待している」と語った。

 企業に向けては、3月27日に発表された4万ドルの融資策、CEBAの申請受け付けが4月に始まった。しかし、対象範囲が狭く、小規模な事業が対象外となるとの指摘を受け、対象を拡大した。事業規模にかかわらず、人件費の75パーセントを支援するカナダ緊急対応賃金助成金、CEWSは4月27日から申請開始となった。初日の数時間で1万件の申請があったとトルドー首相が会見で明らかにし、申請企業は早ければ5月7日から受給できると語った。申請は歳入庁ホームページから。

 その他、産業別の支援策も順次発表。天然資源産業や漁業水産加工業、チャリティー団体や非営利団体など、ホームレスや家庭内暴力に苦しむ家族を救う団体などにも支援を表明している。

 

2020年4月30日 第14号

 原油価格が史上初のマイナスとなった4月20日。新型コロナウイルス感染拡大で需要が落ち込んだこと、サウジアラビアとロシアの価格競争など、さまざまな要因が絡んで、原油価格が歴史的な急落となっていると伝えられている。

 天然資源産業が重要な位置を占めるカナダにとって、原油価格急落はさらなる経済停滞の要因にはなるが、一方で市民にとっては、ガソリン価格が格安状態になるうれしいニュースとなっている。

 特に、国内でも最もガソリン価格が高いといわれているメトロバンクーバーでも、最近では見たことがないような1リットル80セントを切るガソリンスタンドも現れている。自宅待機が続く中でのガソリン価格下落は、なんとも皮肉だが、この機を狙って満タンにしている市民も少なくないようだ。

 

2020年4月30日 第14号

 カナダが新型コロナウイルスと闘っている中、感染拡大を食い止めるためにその先頭に立っている公衆衛生トップの愛国心を疑うというコメントを、野党議員がSNSに投稿して批判を浴びている。

 投稿したのは連邦野党保守党のデレク・スローン議員。保守党はアンドリュー・シェア党首が辞任を表明したため、今年初めから党首選に入っているが、スローン議員は党首選に立候補している候補の一人。スローン議員は21日、カナダ公衆衛生局長テレサ・タム博士を解雇すべきと主張。「国連、WHO(世界保健機関)、中国共産党の宣伝はカナダの公衆衛生にはいらない」と投稿している。そして動画内で、タム博士の忠誠心は「カナダにあるのか、それとも中国か」とコメントした。シェア党首は、スローン議員のコメントについて会見で聞かれると「言及する立場にない」と明言を避けた。

 タム博士は、英国領香港生まれイギリス育ちのアジア系女性。スローン議員のコメントは、アジア系カナダ人への差別的発言としても批判されている。この投稿について23日の会見で質問されたタム博士は、「私は今、カナダ国内のパンデミックを制御することに集中している。どんな雑音もその目的を達成するための妨げとはならない」と回答。現在は一日20時間仕事をしていると笑い、「多くの同僚と一緒にこの危機に臨んでいる。カナダチームの一員であることを誇りに思っている」と語った。

 スローン議員のコメントについては、保守党内からも批判が出ている。党首選ではほとんど無名で、最下位近くを走っているとされるスローン議員。売名行為だったのではとの声も上がっている。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。