2019年9月26日 第39号

 「アリセプト」、「レミニール」、「イクセロン」、「メマリー」(カナダでは「エビクサ」)。

 いずれも、日本およびカナダで承認されている認知症の薬の名称です。アルツハイマー型認知症、またはその他の認知症の症状の進行を抑制する薬です。なかでも、「アリセプト」は、日本の製薬会社エーザイが開発したもので、1997年に米国で、1999年に日本で承認され、認知症治療薬の世界の先駆けとなりました。1998年には、画期的な医薬品の開発者に送られる、薬のノーベル賞といわれる「ガリアン賞(英国)」の「特別賞」を受賞しています。

 しかし、これらのどの薬も、病態のそのものの進行を抑制するものではないため、世界中で、研究者や製薬会社が競って根本治療薬の研究開発を行っています。ところが、このところ、根本治療薬の開発中止が相次いでいます。7月、大手製薬会社ノバルティスなどが、臨床試験(治験)の最終段階、第三相試験に入っていたアルツハイマー病治療薬候補の治験の中止を発表しました。3月には、バイオジェンとエーザイが、研究を進めていた治療薬候補の治験を中止したばかりです。

 認知症と診断されている人は、世界に約5千万人いるとされています。その7割がアルツハイマー型認知症といわれており、脳内に「アミロイドβ」というタンパク質が蓄積し、神経細胞が徐々に壊れることなどが原因とされています。現在、上記の4種類の薬が治療に使われており、酵素による神経伝達物質「アセチルコリン」の分解を妨げることにより、「アセチルコリン」が増え、神経の働きを活発にさせることで、症状の改善を狙います。認知症患者の増加に伴い、さらに効果の高い薬への要望が高まっています。

 2013年に、主要8カ国首脳会議(G8)議長国である英国の呼びかけにより、同年、ロンドンではじめて「認知症サミット」が開催されました。各国の担当閣僚のほか、世界保健機関(WHO)の責任者、研究者、製薬会社の関係者などが参加して、認知症患者や家族への対応や最新の研究について協議が行われます。その最初の会議では、「2025年までに治療法の特定を目指し、各国共同で研究費を大幅に増額する」ことなどを盛り込んだ共同声明が発表されました。しかし、現時点で、「アミロイドβ」の蓄積を防いだり、取り除いたりして進行を抑える根本的治療薬は、未だ承認されていません。

 実は、これまでにも、大手製薬会社が相次いで治験を中止したという経緯があります。その理由として、治験に参加し薬を使った人と使わなかった人を比較した際、期待していた効果が見られなかったり、薬を使うことにより、かえって認知機能が低下していたりしたことが挙げられています。副作用も見られ、脳浮腫が起きることもそのひとつでした。また、根本治療薬の開発が進まない理由について、脳内に「アミロイドβ」が溜まり始めてから症状が出るまでに、かなり長い時間がかかること、神経細胞が壊れてから、蓄積した「アミロイドβ」を取り除く薬を使っても遅いことがわかってきたことが挙げられます。

 2019年2月の時点で、治験の最終段階に入っている根本治療薬の候補は17種類。他にも、第一段階、第二段階の候補は60種類以上。(米ネバダ大学ラスベガス校の研究より)今後数年のうちに、これらの結果が出始めると予測されています。しかし、ひとつの薬を開発する期間は、9年から17年といわれており、研究対象となった候補物質のほとんどは、承認に漕ぎ着けることなく、途中で開発が断念されています。(日本製薬工業協会資料より)

 私自身が、高齢者と呼ばれるようになるまでに、まだしばらく時間がありますが、その頃には、根本治療薬が開発されていることを大いに期待します。

 


ガーリック康子 プロフィール

本職はフリーランスの翻訳/通訳者。校正者、ライター、日英チューターとしても活動。通訳は、主に医療および司法通訳。昨年より、認知症の正しい知識の普及・啓発活動を始める。認知症サポーター認定(日本) BC州アルツハイマー協会 サポートグループ・ファシリテーター認定

 

 

 

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