2020年2月13日 第7号
クリスマス休暇が終わり、新しい年が明けたと思っていたら、早くも2月。暖冬だといわれていたところ、1月中旬に、バンクーバー地域は珍しく大雪。交通機関は麻痺し、交通事故や道で転倒した人の救助に、救急隊は大忙し。通常、BC州全体で1日1100件以上の救急隊の出動要請があり、そのうちの約4分の3は、バンクーバー地域を含むローワー・メインランドでの要請です。雪の日は出動回数が増え、転倒事故は普段の2倍に増えるそうです。(B.C. Emergency Health Services) 大雪警報は数日間続き、ニュースでは、必要がない限り、できるだけ外出は避けるようにと警告。最も積雪量が多かった日は、小学校から大学まで、学校はすべて休校になりました。
大雪が降ると、雪かきの仕事が始まります。市の条例により、持ち家か賃貸かに関わらず、その家の住人が、家の前や横に隣接している公共の歩道の雪かきをする義務があります。雪の日の朝は、10時までに雪かきをしなければなりません。雪かきを怠ると罰金が課せられます。雪を積もりっぱなしにしている隣人を、近所の人が市役所に通報することもあるようです。しかし、この雪かき。高齢者や体の不自由な人にはとても無理です。同居する家族や、近所に手伝ってくれそうな友達や知り合いのいない人はどうすればいいのでしょう。
そこで登場するのが、「スノー・エンジェルズ」というボランティアのプログラムです。近隣に住むボランティアの人たちが、自分では雪かきができない人の代わりに、積もった雪を取り除き、必要があれば、道が凍らないように融雪剤も撒いてくれます。地域のコミュニティーに貢献するエンジェルたちは、地元の高校生という場合もあります。ただし、手伝ってもらえるのは公道に限られ、家の敷地内の通り道は含まれません。
雪かきの問題が片付いても、車椅子やスクーター、ウォーカーや杖などの歩行補助機器を使う人にとって、雪が降ると移動に危険が伴います。雪は止んでも、歩いて踏み固められた歩道の雪は氷のように滑り、転倒事故の原因になります。転倒事故によるけがは、その7割を「頭部」と「脚部」が占め、「腰部」、「足部」がそれに続きます。けがの種類は、「骨折」と「打撲」が最も多く、特に70代以上の人のけがの約4割が「骨折」とされています。(ウィンターライフ推進協議会)
高齢者の「骨折」は、骨粗しょう症により骨が弱くなっていることで起きることが多く、わずかな力がかかるだけでも「骨折」に繋がります。「脊椎圧迫骨折」もそのひとつで、しりもちをついたはずみで起きやすく、普段の生活の中でいつの間にか起きている場合もあります。「上腕骨近位部」、つまり腕の付け根の「骨折」は、転んで肩を打った時や、肘や手をついた時に起こります。「橈骨遠位部」は手首で、転んで手をついた時によく起こります。「大腿骨近位部」は、太ももの付け根で、長期間、安静にする必要があるため、筋力が低下し、褥瘡、肺炎、認知症などを発症し、寝たきりになる頻度が高い「骨折」です。特に「大腿骨近位部」の「骨折」の場合、「寝たきり」になることを防ぐには、骨折部位が安定するまで安静にする「保存治療」ではなく、可能であれば、「手術療法」による治療を行い、手術後、早い時期からリハビリを行い、機能回復をはかることが望ましいとされています。
雪に降り閉じ込められると、食事の宅配、ホームヘルプなど、普段利用しているサービスが受けられなくなるだけでなく、緊急事態が発生した際に、救助にあたる人たちのアクセスが妨げられることが予想されます。外出もままならないため、いつも買い物をする近所のスーパーにも行けません。一人暮らしで、頼りにできる家族や知り合いが近くにいなければ、生活に支障をきたします。
「たかが雪」と侮るなかれ。
ガーリック康子 プロフィール
本職はフリーランスの翻訳/通訳者。校正者、ライター、日英チューターとしても活動。通訳は、主に医療および司法通訳。昨年より、認知症の正しい知識の普及・啓発活動を始める。認知症サポーター認定(日本) BC州アルツハイマー協会 サポートグループ・ファシリテーター認定