2017年2月9日 第6号

 「何か気付かなかったんですか?」

 心の中で「この、やぶいしゃあーっ!」と叫びながら、私が母のかかりつけ医にぶつけた言葉です。

 久し振りに日本に一時帰国した私は、一歩、実家に足を踏み入れた途端、その尋常でない状況に絶句しました。何もかもが片付かないまま、ごった返し、散らかり放題。「片付けられなくなる」認知症の症状の究極を目の当たりにしたのです。今でも、その光景が目に浮かびます。大きな危機感にかられ、半ば強引にかかりつけ医との予約を取り付け、すぐに話を聞きに行きました。

 ところが、かかりつけ医いわく、変化に気づいてはいたが、加齢の症状だと思ったと言うのです。問い詰めると、身だしなみを気にしなくなった、元気がない、表情が乏しくなったなど、兆候と考えられる症状がいくつもありました。患者である母は、高齢者がよく訴える症状の薬をたくさんもらって帰るだけの「定期受診」。かかりつけ医とは名ばかりで、結局、何も診ていなかったことがあからさまになったのです。「なんだかおかしい」と気づいた時点で対応し、早期発見ができていれば、進行を遅らせることができたかもしれない。アルツハイマー型認知症という診断が出るまで、あれほど時間はかからなかったはず。今でも、時々考えてしまいます。

 認知症が大きな社会問題となっている今、患者に一番近いかかりつけ医がそんな状態では、早期発見は望めません。せめて、患者より詳しい専門知識で認知症を疑い、高度な診断や検査が必要と判断したら、専門の病院やクリニックに紹介する。それが、患者やその家族が期待する対応です。ところが、認知症については、医師の年代により、知識レベルが違うらしいのです。現役の医師の話では、医学部のカリキュラムに認知症教育が組み込まれ始めた1980年代から1990年代を境に、知識レベルにかなり差があるそうです。けして、全てのかかりつけ医がダメだと言っているわけではありません。医師の診断を受けることは大事なことです。でも、医者任せにせず、自分や周りの人のちょっとした変化に気付けるように、正しい知識を身につけることも、 認知症の早期発見に繋がります。

 「気のせい」にせず、「なんだかおかしい」と感じた時が、受診のチャンスです。早期発見と静かな進行の分かれ目かもしれません。

 


ガーリック康子 プロフィール

本職はフリーランスの翻訳/通訳者。校正者、ライター、日英チューターとしても活動。通訳は、主に医療および司法通訳。昨年より、認知症の正しい知識の普及・啓発活動を始める。認知症サポーター認定(日本) BC州アルツハイマー協会 サポートグループ・ファシリテーター認定

 

 

今週の主な紙面
4月27日号 第17号

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