2017年9月21日 第38号

 認知症の人を在宅介護する場合、介護者となるのは、一般的に同居する家族です。デイサービスを利用していても、帰宅後の介護は、同居する家族が担う役割です。一時的に介護を代替する施設への短期入所や、介護保険枠を超える在宅介護サービスによるレスパイトケアを除き、24時間利用できる介護サービスはありません。何が起きても、在宅介護に休日はないのです。

 しかし、来る日も来る日も介護に明け暮れていると、そのうち限界がきます。その限界を超えてもなお、場合によっては、限界を超えているという自覚がないまま介護は続きます。そのうち、介護者に負担がかかりすぎ、体に不調が現れます。身体的な不調だけでなく、精神的な不調、「介護うつ」を発症する場合もあります。家族が気づかない間に、症状が悪化することもあり、介護者が自殺したことで症状に気づくという、最悪のケースもあります。

 在宅介護をしている人が「介護うつ」を発症する原因はさまざまです。まず考えられるのは、介護による精神的なストレスです。ストレスといっても、何にストレスを感じるかは人それぞれ。例えば、オムツ替えや排泄ケアなどの作業、介護を受ける人とのコミュニケーションの問題、介護のためになくなる自分の時間、かさむ介護費用、介護に終わりが見えないことへの不安、介護のために見送った仕事やキャリア。挙げていくときりがありません。その多くは、介護からくる疲労、不満や不安が、強いストレスに発展してしまいます。

 また、介護者が、施設や専門職に任せることを無責任と感じている場合もあります。介護に対する周りからのプレッシャーがあったり、介護者本人が責任感から無理をし、自分にプレッシャーをかけてしまいます。その結果、全く人の手を借りずに介護をしようとし、自分自身を追い詰めることになります。責任感が強い人が介護をすると、頑張り過ぎて、自分の体に鞭打ってまで一生懸命に介護してしまうため、体と心のバランスが崩れ、気づかないうちに「介護うつ」になっていることもあります。

 介護者の中には、介護をするためにやむなく仕事を辞めたり、(介護離職)、自由な時間がなくなり、趣味や娯楽活動を止めざるを得なくなる方がかなり多いようです。その結果、社会と疎遠になり、相談相手がいないという、孤独感や疎外感を感じてしまいます。相談相手がいる場合でも、暗い内容の相談を持ちかけることへの後ろめたさから、本当の悩みを打ち明けられないこともあります。友達と遊びに行ったり、食事に行ったりする時間もなく、ストレスの捌け口がなくなってしまいます。自分のしたいことができないことは、それだけで大きなストレス要因になります。

 介護が続く限り、「介護うつ」の原因はなくなりませんが、介護が終わった後も油断は禁物です。やり遂げることに全てをかけてきた介護が終わった途端に、自分の人生の意味、生きる目標を失い、「燃え尽き症候群」のような症状から、うつ状態になってしまうこともあります。

 介護をしている中で、介護者の「介護うつ」がわかったとき、大切なのは「家族の支え」です。①病気になった原因探しをしない、②励まし過ぎない、③大きな決断は求めない、④無理に特別なことをしないという、「うつ病」への接し方(働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」参考)に気をつけ、快復を目指します。同時に、介護の専門職の手助けや、いろいろな介護関連のサービスを最大限に利用することで、介護者への負担を軽くします。自由になった時間を使って、ほんの1時間でも、自分のためだけに何かをすることがストレスの捌け口となります。「ひとりで背負い込まない。」それが、介護者が心身の健康を保ちながら介護を続けるためのキーポイントです。

 


ガーリック康子 プロフィール

本職はフリーランスの翻訳/通訳者。校正者、ライター、日英チューターとしても活動。通訳は、主に医療および司法通訳。昨年より、認知症の正しい知識の普及・啓発活動を始める。認知症サポーター認定(日本) BC州アルツハイマー協会 サポートグループ・ファシリテーター認定

 

 

 

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