2018年5月10日 第19号

 先日、何の気なしに日系のフリー新聞を読んでいました。これと言って重大なニュースもなく、パラパラと紙面をめくっていたところ、紙面4分の1の小さい記事のタイトルが目を引きました。他のメディア経由で既に知っている事柄だったため、どのような記事になっているか、サラッと読むつもりで、 最後の下りを読んだところで、「ああ、またか」とがっかりしました。

 その記事は、日本で行われた、スポーツによる認知機能改善に関わる研究発表の内容を、ごく短くかいつまんで記述した内容でした。 問題は、その「落ち」の部分です。過去に同じスポーツに一緒に参加した人の行動を、「認知症がかなり進んでしまった人だったからそうなったんだろう」、という憶測に基づいて判断したものでした。

 この「落ち」の大きな誤解は、加齢による記憶力の低下と、認知症の認知機能の低下の区別ができていないことにあります。また、認知機能の低下が、認知症がかなり進んでから現れるものという考えも正しくはありません。その内容が、認知症についての正しい理解に基づいて書かれていないことは明らかでした。

 実は、数年前、ある団体から送られてきた案内に、認知症に関して誤解を招く表現が使用されていたことについて、改善を提案・要求したことがあります。そこで使われていたのは「恐ろしい認知症になったら大変」、「忘れたと言われると、激怒したり暴れたりする」というものでした。特に「恐ろしい」という形容詞は、 認知症を表現する時、インターネットの記事やブログでも時々目にします。「認知症になると暴力的になる」というレッテルを貼り、十把一絡げにした表現も、未だにまかり通っています。残念ながら、 認知症に関する世間一般の理解度はこの域を超えていません。認知症についてかなり話題にはなっていますが、正しい知識が「一般常識」にはなっていないのです。

 認知症の当事者や介護者の中には、認知症についての正しい知識を普及させ、誤解や偏見をなくすための活動を続けている人たちがいます。自分の周りには認知症の人がいなくても、その活動に賛同し協力する人たちもいる反面、自分には関係ないからと興味さえ示さない人もいます。また、自分はまだ若いからとか、自分の親はまだ元気だからなどという理由をつけて、自分は、親は、大丈夫と思い込んでいる人もいます。

 認知症についてある程度の知識がある人には「常識」ですが、他の病気や症状と同じく、認知症は誰がなってもおかしくありません。一般に、65歳以上の高齢になるほど発症率は高くなりますが、若年性の認知症は、30代の人でも発症します。認知症の種類によって性別による発症の傾向は異なりますが、全体的に見ると、中年期に差し掛かった人なら誰でも認知症と診断される可能性はあるのです。

 人間は、自分の知らないことに恐れを感じるもののようです。実際に自分が体験したことのないことは、他人の意見に惑わされます。否定的な言葉使いや、恐怖心を煽るような表現を無意識に使うことが、事実に反した誤った考えを植えつけ、それを助長してしまう恐れもあります。認知症についてメディアが取り上げることが多くなったことで、正しい知識を得る方法や機会も増えているはずです。認知症を特別なものとして扱うのではなく、誰もが知っておくべき「常識」と捉えれば、無闇に恐れ、認知症の話題を避ける必要はないのです。

 


ガーリック康子 プロフィール

本職はフリーランスの翻訳/通訳者。校正者、ライター、日英チューターとしても活動。通訳は、主に医療および司法通訳。昨年より、認知症の正しい知識の普及・啓発活動を始める。認知症サポーター認定(日本) BC州アルツハイマー協会 サポートグループ・ファシリテーター認定

 

 

 

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