2019年11月21日 第47号

 共に50代半ばを過ぎた夫婦。夫は、大学入学を機に実家を離れ、首都圏で就職してから、実家には戻っていません。幸いリストラにも合わず、同じ会社で働き続け、今年で勤続35年。ところが半年ほど前、夫の実家の母親が買い物中に転倒し、大腿骨骨折で入院。夫には兄弟がおらず、近くに住む身内で母親の世話に協力してくれる人はいません。退院後、一人暮らしを続けるのは心配だと、母親を呼び寄せ、同居をすることになりました。そろそろ定年退職後の人生を考え始めた矢先でした。

 元々、妻と義母は折り合いがいいほうとは言えず、同居するまではなんとかうまく付き合っていましたが、 同居となると話は別です。夫は仕事が忙しく、出張も多いため、介護はパートで働く妻が一手に引き受けざるを得ません。妻にとって夫の母親は「赤の他人」。育ててもらった恩義もないため、介護をし続けることが、大きなストレスとなっています。ところが、夫は仕事人間。仕事を理由に自分の母親の介護を全く手伝いません。日常の介護に協力できなくても、せめて介護の苦労話を聞いてくれれば、日々の介護を頑張ることができるのに、夫にその気はありません。夫のためになると思い、献身的に介護をしても、相談にのってもくれず、妻が介護するのが当たり前と考えているようで、感謝の一言さえありません。これ以上介護をすることに限界を感じ、妻は真剣に離婚を考えています。

 長い結婚生活の後で離婚に至る、「熟年離婚」が取り沙汰され始めてから久しくなります。子供たちが巣立った後や、夫が定年退職をした後に、妻が離婚の話を持ち出す。夫のDV、モラルハラスメント、不貞等、その理由は様々です。この「熟年離婚」のうち、かなりの割合が、配偶者の親の介護を理由とする「介護離婚」と考えられています。

 介護は、肉体的にも精神的にも大きなストレスとなる活動です。介護をする相手が実の親や肉親であれば、育ててもらったという恩義や、自ら感じる愛情をもって、何とか乗り切れても、配偶者の親の介護の場合、実の親や肉親に対して感じるような感情は元々ありません。配偶者の親とのそれまでの人間関係にもよりますが、いわば「赤の他人」に対し、「無償の愛」をもって介護を続けることを期待されても困ります。

 「介護離婚」に至る理由はいろいろ考えられますが、妻と夫の兄弟姉妹との折り合いの悪さもそのひとつです。義理の兄弟姉妹との関係があまり良くないため、介護に協力的でなかったり、義理の親族が遠方に暮らしていれば、妻が介護を一手に引き受けることになります。特に、夫が長男、夫以外は姉妹で結婚して家を出ている、または、夫の親が同居している場合に加え、妻が自分の親の介護もしている場合も、ストレス度は更に高くなります。

 義理の親や兄弟姉妹との関係が良くても、夫が介護に協力的でなければ、介護は続けられません。仕事を優先しすぎて家のことを顧みず、自分の親の介護も全て妻に任せてしまうようでは、妻に愛想をつかされ、離婚を切り出されても仕方がないでしょう。

 介護のために、妻が自分の生活を大きく変えなければならないこともあります。妻が仕事をしている場合、仕事量を調節するだけでなく、仕事を辞めて介護に専念することになるかもしれません。仕事もできず、自分の時間も持てないままストレスが溜まる一方で、介護に体力と時間をどんどん奪われる。妻が自分の生活や心の健康を維持するために、離婚を考えざるを得なくなる気持ちも理解できます。

 本来、妻には夫の親を介護する義務や責任はありません。民法に「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。」という条項がありますが、親族と血縁関係がない配偶者には当てはまりません。特に夫は、これを踏まえた上で、自分の親の介護を考える必要があります。

 


ガーリック康子 プロフィール

本職はフリーランスの翻訳/通訳者。校正者、ライター、日英チューターとしても活動。通訳は、主に医療および司法通訳。昨年より、認知症の正しい知識の普及・啓発活動を始める。認知症サポーター認定(日本) BC州アルツハイマー協会 サポートグループ・ファシリテーター認定

 

 

 

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