2019年5月30日 第22号

 パンツ下着、吸水パンツ、紙パンツ、薄型パンツ…。どれもパンツタイプの大人用紙おむつの呼び方です。その形容も、超薄型、下着感覚、薄型軽快など、「おむつ」というイメージではありません。中には、色のバリエーションが5色もあるものやローライズ、お茶に含まれる成分カテキンの効果で、アンモニアの消臭、抗菌作用のあるものまであります。尿取りパッドと合わせて使い、おむつそのものでなく、パッドを交換する2ピース方式が主流です。自分で着脱できない場合は、テープタイブのものが活躍します。

 大人用紙おむつ市場は、今や業界では子供用のおむつを上回る売り上げを見せています。日本の例として、業界最大手のユニチャームによると、大人用おむつの売り上げは、2013年の第3期に600億円を突破し、初めて子供用おむつの売り上げと逆転しました。また、国内市場全体をみても、2010年に子供用1530億円、大人用1440億円だった紙おむつ市場が、2012年には子供用1390億円、大人用1590億円と、子供用を追い抜きました。

 2013年8月に実施された内閣府の調査によると、高齢者の介護で苦労したことは、「排泄」(62・5%)がトップ。続いて「入浴」(58・3%)、「食事」(49・1%)の順でした。中でも、排泄時の付き添いやおむつ交換が最も苦労するという結果が出ています。因みに、大人のおむつ交換の回数は、1日平均6・6回で、健常な人のトイレの回数とほぼ同じです。

 排泄が困難になり始めるのは、要介護度の5段階のうち、要介護3になる頃です。要介護度が高くなると、自分で上衣やズボンなど、衣類の着脱ができなくなり、「排泄障害」がおきることもあります。この時期に、第三者による介助を必要とするようになります。「排泄障害」とは、トイレに行けない、トイレが使えない、または、トイレで排泄できない状態です。運動機能の障害に起因する場合、排便・排尿をつかさどる内臓機能に起因する場合、さらに、トイレで排泄する習慣を失った認知機能の障害に起因する場合などがあり、それらが複雑に絡み合っています。なお、歩くことができなくても、座位が取れ、排泄ができれば、「排泄障害」にはあたらず、おむつは必要ありません。

 認知症だった母のことを振り返ると、トイレで上手く排泄できなくなったのは、やはり要介護度が3になった頃と記憶しています。トイレまでなんとか行けても、排泄後の処理ができなくなりました。トイレに間に合わないこともありました。そのうち、尿意や便意を感じにくくなり、失禁することが増え、おむつに頼らざるを得なくなりました。

 寝たきりではなかったため、使用したのはパンツタイプの紙おむつと尿取りパッドです。パンツタイプというと、一見、交換しやすそうですが、バランスを保つことが難しくなっている上、さらに立ったままの状態での交換は、思いのほか難しいものでした。確かに、尿取りパッドを使うことにより、介護する側の負担は軽くはなったと思います。しかし、いつも便秘がちだった人が、服用していた薬のせいか、お腹の調子が悪いことが増え、排泄後の処理はますます難しくなりました。子供のおむつ交換のように、いざとなったら寝かせて処理することもできず、実家に置いたままになっていた赤ん坊用のお尻洗いを使いました。それでもきれいにならない場合は、結局、お風呂場で洗う手段を取りました。

 自分のおむつを換えてくれた人のおむつを、今度は自分が換えることに複雑な思いはありましたが、抵抗感はありませんでした。体の大きさの違いはあるものの、子供たちのおむつを換えた経験が大いに役立ちました。しかし、相手は大人です。おむつをすること自体に、少なからず、恥ずかしさを感じていたでしょう。

 おむつを使うとなった時、本人の尊厳を大切にしながら介助することが、何より欠かせない要素だと思っています。

 


ガーリック康子 プロフィール

本職はフリーランスの翻訳/通訳者。校正者、ライター、日英チューターとしても活動。通訳は、主に医療および司法通訳。昨年より、認知症の正しい知識の普及・啓発活動を始める。認知症サポーター認定(日本) BC州アルツハイマー協会 サポートグループ・ファシリテーター認定

 

 

 

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