2020年1月23日 第4号

 公営の老人ホーム、民営の有料老人ホームまたはサービス付き高齢者住宅、グループホーム、そして在宅介護。肉親の介護が必要になった場合、このいずれかの方法を選択することになります。どの選択肢を選んでも、ある程度の出費は避けられません。

 公営の老人ホームの場合、基本的に施設による料金の違いはありません。入居者の負担額は収入により異なりますが、その割合は変わりません。民営の介護施設に入居するとなると話は変わり、家賃、管理費、食費、雑費、入居一時金などの費用がかかります。日本の施設であれば、入居にかかる費用の他に、介護保険サービス利用料金の限度額を超えたり、介護保険が適応されない介護サービスを受ける場合の自己負担金も加わります。ある程度のまとまったお金がないと、施設への入居もままなりません。これらの費用、年金収入だけで賄えるでしょうか?

 実際に介護が必要になる前に、計画的に資金の準備をしていれば何の問題もありません。しかし、介護は突然やってきます。その期間もわかりません。介護が長引くことを老後の人生設計に組み込まなかったため、経済的困窮に陥るケースも増えているといいます。納得できる施設を見つけて入所しても、預貯金が底をつき、施設で生活するために必要な費用が支払えなくなり、結果的に施設を出なければならないという事態も起きています。

 特に民営の有料老人ホームの場合、その運営は入居者が支払う費用で成り立っています。滞納が続いた場合、多くは入居者の子供である保証人に、未納分の返済を求めることになります。しかし、子供自身も、教育費や住宅ローンの支払いを抱えている世代で、おいそれと十万円、百万円単位のお金を出すことは厳しいのが現状です。未納分の返済ができないうえ、さらに滞納が続くと、施設からの「退去勧告」が出ることになります。止むを得ず退去した後、費用の負担が少ない公営の介護施設を探そうにも、空きの順番待ちが長く、そう簡単に入居には至りません。とりあえず、在宅での介護を選択することになるでしょう。公営の介護施設を退去せざるを得なくなった場合、すでに他の公営施設には空きがないことが考えられるうえ、より高額な民営の施設に入るという選択は現実的ではないため、在宅介護を余儀なくされます。

 在宅介護は、介護施設を利用するよりも月々の費用は安くすむと考えられていますが、実際は、介護のレベルにより異なります。特に認知症の介護の場合、その進行度合いは千差万別で、一概に「在宅介護は安上がり」、とも言い切れません。ホームヘルパーが身体介助や生活援助などを行う訪問介護や、看護師による訪問看護などが必要な場合、その費用は、本人の預貯金や収入から支払われます。本人の年金収入や預貯金で賄いきれなければ、介護をする配偶者や子供が負担することになります。ただし、失職や病気などの理由で、介護をする側の経済事情が変わると、介護費用の支払いができなくなり、サービス利用を取り止めざるを得なくなります。十分な蓄えがなければ、家族全体の生活そのものが立ち行かなくなり、窮地に追い込まれてしまいます。

 介護施設の費用が支払えなくなり自己破産申請、「介護離職」による家族全体の貧困化、介護の精神的負担による「介護うつ」、思い詰めるあまりの「介護殺人」。挙げていくと切りがありません。いずれも、多かれ少なかれお金の問題が絡んでいるはずです。介護の「質」以前に、先立つものがないと、満足な介護を受けることはできないのが現実です。その現実を見据えた上で、家族で話し合っておくことが、後々になって後悔しない方法でしょう。

 介護に至るまでには、様々な経緯が考えられますが、私たちは、いずれ必ず最期を迎えます。どんなに長生きしたくても、それが私たちの宿命です。しかし、その準備ができている家族はどのくらいいるでしょう?

 


ガーリック康子 プロフィール

本職はフリーランスの翻訳/通訳者。校正者、ライター、日英チューターとしても活動。通訳は、主に医療および司法通訳。昨年より、認知症の正しい知識の普及・啓発活動を始める。認知症サポーター認定(日本) BC州アルツハイマー協会 サポートグループ・ファシリテーター認定

 

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は今号をもちまして終了いたします。

しかし、日系コミュニティーに支援されて41 年余り続いてきた新報を存続させたいとの思いから、オンラインによるウェブサイトでの情報発信を継続することになりました。

SNS を含むオンラインは、弊紙で記者をしておりました三島直美と西川桂子が、責任者として引き継ぎ新体制で再出発する予定です。

今後も引き続き、ウェブサイトの閲覧をよろしくお願いいたします。