2019年8月8日 第32号

 土曜日の午前10時からの、認知症ビレッジ「The Village」のオープンハウス。そこは、ラングレーの緑の多い住宅街の中にありました。着いたのは午前10時を少し回っていましたが、既にかなりの人が集まっています。 特に見学ツアーが準備されているわけではなく、自由に見学する方式で、正面玄関を通り、「コミュニティー・センター」のスペースに入ると、皆、思い思いのペースで見学を始めています。随所にスタッフが待機し、質問に答えてくれます。

 施設内には、「コテージ」と呼ばれる居宅が6棟あります。生活介助が必要な入居者向けの居宅が4棟で、そのうちの2棟を見学することができました。残りの2棟が、常時、介護が必要な入居者向けの居宅です。部屋の大きさや造りはどれも同じですが、後者の2棟の部屋にはカーペットがなく、天井には、介護用リフトを取り付けられるレールが備わっていると聞きました。

 「コテージ」には、キッチン、ダイニング、暖炉のあるリビングのスペースを中心に、部屋が12部屋ないし13部屋。ダイニングの隣には、 仕切りを引くと壁ができ、プライベートな部屋になるスペースもあります。その他に、サンルームやアクティビティルームがあり、自由に余暇時間を楽しむことができます。「コテージ」は2棟単位で「デュープレックス」と呼ばれ、「デュープレックス」毎に、二人用の部屋がひとつあります。 「コテージ」毎に「ハウスリーダー」がいて、全体を管理し、ケアエイドおよび看護師がそれをサポートします。常時、介護が必要な人向けの2棟には、看護師が1日24時間常駐します。

 「コテージ」以外は共有スペースで、コミュニティー・センター、 ジェネラルストア、サロン、クリニックがあります。建物の外には菜園用の畑があり、今すぐにでも野菜が植えられそうです。まだ空っぽですが、小さな家畜小屋もあり、地元の農家と契約し、その都度、住む動物が変わるそうです。小さいながら、ピクニックができるスペースもあります。建物の周りは小道で繋がり、「コテージ」の裏口から散歩に出ることもできます。ひとりで裏口から出ても、 行方がわからなくなることはなく、入居者が着用するリストバンドから、所在がわかるようになっています。リストバンドは、共有スペースと自分の部屋のある建物に出入りできるようにプログラムされています。

 公立の介護施設と同じように、食事時間やアクティビティーなど、一日のスケジュールはありますが、それに従わなくても構いません。例えば、今朝はあまりお腹が空いていないから、ブランチにしようとか、夜、急にクッキーを焼きたくなったとか、私たちの普段の生活を考えた時、毎日、予定通りに運ぶとは限りません。それと同じように、入居者が好きな時に好きなことができるようにサポートすることを念頭に置いているそうです。

 途中、他の見学者の話をそれとはなしに聞いていると、かなり具体的に家族の入居を考えているような人から、家族や知り合いが入っている施設と比較する人や、とりあえず見に来たという感じの人まで、見学の目的は様々なようです。夫婦と思しき二人連れ、母親と成人した娘の親子連れ、兄弟姉妹、友人のグループ、三世代の親子連れまで、いろいろな人がいます。圧倒的に多いのは女性で、中高年、特に団塊の世代以上という印象を受けました。見学の仕方も、熱心にスタッフに質問をする人もいれば、さっと見て回る人までいろいろです。

 まだ入居者がいないため、実際の様子を垣間見ることはできませんでしたが、 入居者の要望に沿った、行き届いたサービスが提供されることでしょう。しかし、ここはあくまでも私立の施設。ウェブサイトでも公開されている月々の入居費を見てみてください。残念ながら、庶民に手の届く金額ではありません。

 「介護はお金が物を言う」ことを実感したオープンハウスでした。

 


ガーリック康子 プロフィール

本職はフリーランスの翻訳/通訳者。校正者、ライター、日英チューターとしても活動。通訳は、主に医療および司法通訳。昨年より、認知症の正しい知識の普及・啓発活動を始める。認知症サポーター認定(日本) BC州アルツハイマー協会 サポートグループ・ファシリテーター認定

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。