2019年8月22日 第34号

 先日、日本の週刊誌のオンライン版から、目を引く記事が送られてきました。主題は「横断歩道の白線を跨げない人は要注意!」。「歩幅」と認知症発症に関係があり、「歩幅」が狭い人ほど認知症になりやすいというのです。

 この調査は、東京都健康長寿医療センター研究所の協力研究員のチームにより、70歳以上の人666人を対象に行われました。まず、1149人を対象に、暮らしぶりや身体機能を調べ、介護が必要な人や認知症が疑われた人などを除いた人数が666人です。対象者の「歩幅」を測り、「歩幅」の「狭い人」、「普通の人」、「広い人」にグループ分けし、最長で4年間、追跡調査を行いました。その結果、「歩幅」の「狭い人」は「広い人」に比べ、その後、認知機能が3・39倍低下していました。この傾向は、年齢に関係なく見られ、「歩幅」が狭い状態で年を重ねている人ほど、認知症のリスクが高いことが見えてきたのです。

 この「歩幅」は、歩く速度を算出する時に、「歩調(足を動かし地面を踏むテンポ)」と一緒に計算されます。調査では、この「歩調」も、「早い人」、「遅い人」に分けて調べています。「遅い人」を「早い人」と比較した数値は1・01倍とほとんど差がみられず 「歩調」は認知機能の低下との因果関係はないことも明らかになりました。

 ここで、身長により「歩幅」が異なり、背が高ければ、当然「歩幅」も広くなるはずという疑問が浮かびます。研究に使われたデータは、年齢、性別、身長、病気の有無などの影響を加味して補正されているということで、個人差があっても、条件が等しく当てはまるようになっています。ただし、「歩調」に変化がなくても、「歩幅」が狭くなれば歩く速度が遅くなることから、歩く速度も認知機能の低下に関係があると考えられます。

 それでは一体、「歩幅」がどれくらい狭くなったら、注意が必要なのでしょうか? この調査では、その目安を「65センチ」としています。「歩幅」は、一方の足の踵から、もう一方の足の踵までの寸法で測ります。横断歩道の白線の幅が約45センチ*ですので、白線を踏まずに越えられれば、45センチと足の大きさ(20センチ+α)を足した長さとなり、65センチ以上の「歩幅」があると考えてもよいそうですが、白線を踏んでしまう人は、「歩幅」が狭く、認知機能が低下していることが考えられるということです。

 この調査を行った協力研究員は、通常の加齢変化より早い時期から歩行機能が衰える人がいて、それが「歩幅」に現れることから、「歩幅」の狭さが認知症のリスクが高まっているサインになると見ています。加齢による筋肉量の減少に加え、足を出そうとする脳からの指示がうまく伝わらないため、「歩幅」が狭くなります。普段から意識して「歩幅」を広くし、脳への刺激を与え、活性化することが認知症の予防に役立つとし、今より5センチ、できれば10センチ、意識して「歩幅」を広げて歩くことを勧めています。ただし、歩くことがいいからといって闇雲に歩きすぎても、逆効果になりえます。例えば、 膝や股関節が悪い人は症状が悪化する、筋力が衰えている人は転倒のリスクが高まることなどが考えられます。

 認知症は、進行性の脳機能障害です。脳や体の疾患が原因となり、記憶や判断力などの認知機能が低下し、日常生活に支障が現れている状態です。あまり知られていませんが、認知症の種類により、認知機能に障害が現れる前に、脳の運動機能を司る分野に影響が現れるものもあります。例えば、「小股歩行」や「すり足歩行」など、足に症状が現れます。 いつもスタスタと歩いていた高齢の親や友人の歩く速度が遅くなった、または、「歩幅」が狭くなったと感じたら、要注意です。もしかすると認知症の兆候かもしれません。

*参考:BC州の横断歩道に関する規定では、白線の幅は60センチ。

 


ガーリック康子 プロフィール

本職はフリーランスの翻訳/通訳者。校正者、ライター、日英チューターとしても活動。通訳は、主に医療および司法通訳。昨年より、認知症の正しい知識の普及・啓発活動を始める。認知症サポーター認定(日本) BC州アルツハイマー協会 サポートグループ・ファシリテーター認定

 

 

 

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