2020年3月19日 第12号
アメリカ・カリフォルニア州オークランドに着岸したクルーズ船グランドプリンセスのカナダ人乗客が、カナダ政府が用意したチャーター機で10日未明に帰国した。この日からオンタリオ州トレントンで14日間の隔離に入っている。
グランドプリンセスはカリフォルニア州サンフランシスコ沖を航行していたが、同クルーズ船の2月のツアーに参加していた乗客がアメリカで死亡。そのためクルーズ船の乗員を検査したところ、新型コロナウイルス感染が確認されたため数日間着岸できずにいた。その後、アメリカがオークランドに着岸を許可し、乗員以外の乗客が下船。カナダ人乗客237人のうち228人が、政府の用意したチャーター機で帰国した。フランソワ−フィリップ・シャンパーニュ外務大臣によると、新型コロナウイルス感染が確認されたカナダ人乗員はクルーズ船に残り、感染が確認されていないがアメリカに残ることを希望した乗客もいたと説明した。
チャーター機での帰国に際しては症状がでていないことが条件だった。しかし、これまでに帰国後の隔離中に8人の感染が確認されている。クルーズ船については、横浜に停泊していたダイヤモンドプリンセスのカナダ人乗客も政府が用意したチャーター機で帰国。おなじくオンタリオ州で14日間隔離されたが感染者は確認されなかった。しかし、アメリカで2月11日から21日までグランドプリンセスのクルーズ船ツアーに参加し、帰国したカナダ人乗客が感染している事例が全国各地で相次いでいる。これを受けカナダ公衆衛生局長テレサ・タム博士は9日にクルーズ船への参加自粛を要請、13日には500人以上が参加するクルーズ船については、7月1日までカナダに寄港することを禁止すると発表した。
2020年3月19日 第12号
ブリティッシュ・コロンビア州では17日に感染者が186人となったと発表した。BC州衛生管理局長ボニー・ヘンリー博士が州政府エイドリアン・ディクス保健相と会見を開き、新たに3人の死亡が確認され、昨日から感染者数が83人増えたと語った。
死亡した3人のうち2人はノースバンクーバー市にある長期療養施設リンバレー・ケアセンターの入居者。これで16日に発表された3人と9日の国内初の死亡者と合わせて州内7人すべてが入居者となっている。BC州では急速に感染者が増加している。16日には前回の会見から30人増加と発表、100人を超えたばかり。こうした事態を受け、ヘンリー博士はこの日、公衆衛生非常事態を宣言した。「この宣言で迅速に対応できるようになる」と語った。
BC州はすでに50人以上の集会禁止を発表している。それを踏まえてヘンリー博士は「バーやクラブは閉鎖しなければならない」と語り、レストランやカフェも同様だが、人と人との距離を取ることで開店は可能とし、それができなければ閉店、もしくはテイクアウト、デリバリーに移行しなくてはならないと説明した。
食料品店、薬局、商店など生活に欠かせないビジネスは対象外だが、買い物の時でもソーシャルディスタンスをできるだけ保つよう注意を呼びかけた。
この日の午前中にはBC州ジョン・ホーガン州首相、ロブ・フレミング教育大臣、キャロル・ジェームズ財務大臣が会見した。フレミング教育大臣は、幼稚園から高校まですべての学校を休校とすると発表。すでに春休みに入っている学校が多いが、まだ授業を行っている学校などすべてを対象とすると語った。即日より実施。再開時期は設定せず、状況により判断するという。多くの学校では3月30日に再開する予定となっていた。医療関係者の支援としてデイケアは対象外とするが、状況によって対応するとホーガン州首相は説明した。
2020年3月19日 第12号
18日、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州、バンクーバー市はそれぞれ非常事態宣言を発表した。これは政府・自治体がパンデミックに対処するための必要な措置を取れるということだ。
連邦政府は17日の会見で国立公園を閉鎖すると発表した。全国で新型コロナウイルス(COVID-19)対策として公共施設が次々と一時閉鎖を発表している。
BC州メトロバンクーバーでも各市が新型コロナウイルス対策を発表している。バンクーバー市は16日、ケネディ・スチュワート市長が会見を開き「市としての最優先事項はウイルスの拡散をできるだけ遅くすること」と述べ、市ができるあらゆる対策を講じると語った。
この日、BC州衛生管理局長ボニー・ヘンリー博士は、12日に発表した集会での最大人数を250人から50人へと引き下げた。連邦政府も同様の発表を同日に行った。これにより多くの公共施設の閉鎖が余儀なくされた。
市が管理するコミュニティセンター、図書館、プール、アイスリンク、フィットネスセンター、ゴルフ場がこの日から使用できなくなった。ダウンタンイーストサイドとイエールタウンの一部の不可欠なセンターのみ使用可能となっている。
さらに市の公園庁が管轄するバンデューセン植物園、ブレーデル・コンサバトリー(クイーンエリザベス公園内)、スタンレーパーク・トレインも閉鎖となる。
BC州ではBC宝くじ協会が州内すべてのカジノ施設を16日午後11時59分で閉鎖すると発表した。BC州ヘンリー博士の50人以上の集会禁止を受けた対応と説明した。リバーロックカジノリゾートやハードロックカジノ・バンクーバーを運営するグレートカナディアン・ゲーミング・コーポレーションは、BC州以外にもオンタリオ州、東海岸州でカジノ施設を運営している。オンタリオ州では17日に緊急事態宣言が出され、BC州、プリンスエドワード島州では公衆衛生非常事態が宣言された。
2020年3月12日 第11号
新型コロナウイルス(COVID-19)の影響が各方面で出ている中、最も影響を受けている業界の一つ航空会社では、運休減便が相次いでいる。
エアカナダは10日、イタリアへの直行便を全便運休すると発表した。3月11日から5月1日まで実施される。イタリアで新型コロナウイルスの感染が拡大しイタリア政府による対策の影響で、需要が見込めないためと説明した。11日のローマ発モントリオール着が休止前最後のフライトとなった。
エアカナダはすでに中国の北京と上海への直行便を1月末から全便運休していたが、2月25日にはさらに4月30日まで運休を延長すると発表した。またトロント・香港線を5月30日まで運休し、その間はバンクーバー・香港線で対応すると発表。韓国での感染拡大を受けトロント・ソウル線も4月1日から30日まで運休し、バンクーバー・ソウル線で対応すると発表している。現時点で日本への直行便の運休、減便は発表されていない。
香港に本社を置くキャセイパシフィック航空は3月5日バンクーバー支店を閉鎖すると発表した。すでに客室乗務員などには通知しているという。149人が解雇される。ただしパイロットは対象外としている。キャセイパシフィックは、昨年香港で起きた若者による大規模デモによる影響で2019年後半の業績が悪化、加えて新型コロナウイルスの影響でさらに打撃は大きくなると予想されている。しかし今回の閉鎖発表は、デモや新型ウイルスが影響する前から業績不振で再編を計画した一環とみられる。2019年にはトロント支店も閉鎖している。キャセイパシフィックは1983年からバンクーバー・香港線を就航。バンクーバー支店閉鎖は2021年6月26日と発表している。
2020年3月12日 第11号
カナダ銀行は4日、政策金利を1・75パーセントから0・5パーセント引き下げ1・25パーセントとした。新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大の影響による世界的な経済への悪影響から、主要国で金利引き下げが相次ぎ、カナダもこれに追随した。さらに必要な場合は、さらなる金利引き下げも考慮していると明らかにした。「カナダ銀行は経済と財政状況を注視しながら、主要7カ国(G7)中央銀行や財政当局と協力していく用意がある」と声明を発表した。
カナダ銀行が0・5パーセント金利を引き下げるのは2009年3月の世界的な財政危機に陥って以来。カナダは比較的順調に金利を引き上げ、2018年10月から1・75パーセントを維持していた。しかし、今回は原油価格が急落していることや、それにともないカナダドルも対米ドルで大幅に下げている。石油産業が主要産業であるカナダにとって、カナダ経済への悪影響は避けられない。
カナダ銀行はこれまで金利の引き下げについては慎重な姿勢を示していた。国民の一世帯による返済負担率が記録的に高いことから、さらなる負債の増加を避けるためにも、これまでに何度も引き下げを見送ってきた。ジャスティン・トルドー首相は、「経済成長の減速は避けられない事態となってきた。カナダへの影響も大きいとみられるため、解決策を探す必要がある」と語った。