2019年6月27日 第26号

 オンタリオ州トロント・ピアソン国際空港で今月初め、同空港に到着した時に眠っていた乗客が、そのまま飛行機に取り残された。目覚めたあとに、この事態に気がついた女性はパニックに陥ったと、取材に語っている。

 ケベック州ケベックシティ発のエアカナダ機でトロント・ピアソン国際空港に到着したティファニー・アダムスさんが目覚めたのは、その数時間後の真夜中近くのことだった。機内には誰もいないどころか全ての電源が落とされており、暗く冷え切っていた。彼女はショックを受けながらも、友人のディアンナ・ノエル=デールさんに電話をかけ状況を説明しようとしたが、バッテリーが間もなく切れてしまった。充電しようと座席のUSBポートに接続したものの、飛行機全体の電源が落とされていたため、徒労に終わった。

 パニック状態になりコックピットに向かったアダムスさんは、そこにあった携帯無線機で助けを求めようとしたが、うまく作動しなかった。たまたま見つけた懐中電灯で、外に向かって合図を送り始めた。さらに客室ドアを開けることに成功したものの、地面まで15メートルほどもある出口からは、飛び降りるわけにもいかなかった。

 さらに飛行機はゲート近くではなく、ターミナルビルから離れたところに止められていた。再び懐中電灯で開け放ったドアから合図を送り続けたアダムスさん。ようやくグラウンドハンドリングのスタッフが彼女に気づき、はしご車を出して彼女を救出した。この作業員は、こんなところに乗客が置き去りにされたことにショックを受けていたが、「私も同じ気持ちだった」と語るアダムスさん。着陸前に背もたれがちょっとでも戻っていなかったり、テーブルが収納されていなければすぐに気がつくくせに、シートベルトをしたまま居眠りしている乗客に気がつかず皆帰ってしまうというのは、一体どういうことなのかと苦言を呈している。

 ターミナルに戻ったアダムスさんは、すぐさまエアカナダの地上係員に苦情を伝えた。係員はその夜を過ごすホテルと、そこまでのリムジンを用意すると申し出たが、アダムスさんはとにかく家に帰りたいと、これを拒否。係員は謝罪するとともに調査すると彼女に告げた。

 この一件以来、アダムスさんは睡眠障害の一種である夜驚症に度々襲われ、暗いところにひとり閉じ込められるのではという恐怖心から夜中に目を覚ますようになり、十分な睡眠がとれなくなったと訴えている。

 エアカナダはそのフェイスブックで、アダムスさんの体験談に驚くとともに、事態を深刻に受け止め調査を行うとしている。

 

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