2019年6月6日 第23号

 カナダ政府が、中国税関がカナダからの豚肉製品の検査を強化する予定との告知をカナダ国内の養豚産業に6月4日に通達していたことが分かった。ロイターが伝えた。

 最初の報道ではカナダ産精肉製品との情報があったが、実際には豚肉製品が対象という。マリークロード・ビボー農務・農産食品大臣が声明で明らかにした。「現在、豚肉製品の製造企業や養豚産業と対策を協議中で、行政上の過誤による貿易支障ではないということを明確にし、品質を保証することが重要と認識している」と説明している。

 中国側は、最近輸入した豚肉製品に規則違反が見つかったケースがあったことや、アフリカ豚コレラへの危険性を考慮した対応との声明を発表しているとロイターは伝えている。中国の養豚産業は豚コレラの発生で大打撃を受けているという。

 中国からカナダ製品輸入に制限がかけられれば、カナダの養豚産業への影響は大きい。昨年12月に中国通信大手ファーウェイ孟晩舟副会長兼CFO(最高財務責任者)がブリティッシュ・コロンビア(BC)州バンクーバー国際空港で拘束されて以降、今年に入り、キャノーラ生産大手2社の製品の輸入が禁止され、豚肉製品製造業2社の輸入許可が一時的に停止されている。

 今回の措置が報復かどうかについては伝えられていない。

 

2019年6月6日 第23号

 カナダ中央銀行は5月29日、金利を現行の1・75パーセントに据え置くと発表した。金利については現状に妥当との判断を強調した。

 中央銀行は2017年7月から2018年10月までの間に5度の金利引き上げを実施している。その後も一時は積極的な引き上げを示唆していたが、経済状況の変化から最後に金利を引き上げて以降は現行を維持し、必要となれば引き下げも視野に入れているとの表現に変化している。

 今年4月24日の経済見通しでも、2019年前期の経済成長をそれまでの1・7パーセントから1・2パーセントに下方修正している。しかし経済の停滞は一時的なものとの認識を示し、今後の世界経済の情勢に注視するとしている。

 中央銀行は、これまで通り危険水準に達している国民の世帯当たりの負債額への懸念を示すともに、カナダに直接影響がある低迷する原油価格やアメリカ・中国の緊張した貿易関係にも注視すると報告している。

 

2019年6月6日 第23号

 自由党政権内で早くもジャスティン・トルドー首相に代わる党首候補の名前が挙がっていることが明らかになった。5月28日にトロント・スター紙が党関係者の話として伝えた。

 同紙によると、次期党首候補には現在イギリス中央銀行総裁マーク・カーネイ氏の名前が挙がっているという。

 同氏は2008年2月にカナダ中央銀総裁に就任し、その手腕でリーマンショックからカナダ経済を守ったと評価された。2013年7月からイギリスに引き抜かれる形で現職に就いている。任期は2020年1月まで。

 2015年に発足したトルドー政権は、発足当時は高い支持率を誇っていたものの、SNCラバランスキャンダルやパイプライン抗争、環境問題、中国問題などで支持率を落とし、現在は野党第一党保守党に支持率でリードされているという世論調査結果も出ている。

 今年10月に実施される総選挙では厳しい選挙戦が予想され、仮に政権を継続できたとしても、約140議席程度で過半数を大きく下回ることが予想されている。

 そんな中で飛び出した党内からのカーネイ総裁への党首交代論。今後の選挙戦にどのような影響が出るのか、注目されている。

 

2019年6月6日 第23号

 ジャスティン・トルドー首相は6月4日、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州バンクーバーで記者会見し、全国で多くの先住民族女性・少女が殺害され、行方不明になっている事実を「民族浄化のための大量虐殺」と表現した報告書についてカナダ政府は「受け入れる」と語った。

 トルドー自由党政権が2016年に設置した先住民族女性・少女の殺害・行方不明に関する調査委員会(MMIWG)による1200ページに及ぶ調査報告書が3日にケベック州ガティノーで発表された。

 内容は、先住民族、特に女性や少女、性的少数派(2SLGBTQQIA)を標的にした殺人・行方不明事件についての事実や改善策の提案などとなっている。先住民族はカナダの総人口の4パーセントにしか過ぎないにもかかわらず、先住民女性・少女が殺害・行方不明に巻き込まれている割合は、その他のグループと比較して約12倍、白人女性と比較すると16倍にものぼるとしている。

 この事実の要因には、ヨーロッパからの入植時代から今日まで続く「先住民族破滅」を目的とした政策が影響しているとも報告している。1700年代に起こった先住民族殺害への報奨金制度から子供に寄宿生活を強要するレジデンシャルスクール制度、独自文化継承禁止政策、さらには今日でも続く医療や経済活動へのアクセス欠如、警察の対応などが、多くの先住民族、特に女性や少女たちに大きな影響を与えているという。

 トルドー首相は3日のガティノーでの記者会見では、「大量虐殺」という言葉を使用しなかったが、4日のバンクーバーでの記者会見では報告書の内容として「大量虐殺」という言葉を政府として受け入れることを表明、ただ、記者の個人として受け入れるかとの問いには明言しなかった。トルドー首相は「使用されている単語については議論が巻き起こっているが、国家として、リーダーとして、国民として、我々に何ができるかということに焦点を当て、悲惨な状況を終わらせるための段階に入らなくてはならない」と述べた。

 今回の報告書で、先住民族の状況を「大量虐殺」と表現したことについては、賛否両論が巻き起こっている。

 

2019年6月6日 第23号

 アメリカのマイク・ペンス副大統領が5月30日に首都オタワを訪問し、ジャスティン・トルドー首相と会談した。ペンス副大統領の訪加は、昨年カナダで開催されたG7(主要7カ国首脳会議)以来。

 会談では、昨年11月にカナダ、アメリカ、メキシコの3カ国首脳によって署名された新北米自由貿易協定(アメリカ・メキシコ・カナダ協定:USMCA)の批准について確認したことをペンス副大統領が記者会見で明らかにした。USMCAは北米自由貿易協定(NAFTA)に取って代わる3カ国間の自由貿易協定となる。

 カナダは5月29日に批准手続きを開始、メキシコでも議会で手続きに入ることを30日に発表した。アメリカでは民主党が過半数を占める下院で批准に難色を示しているという。それでも、この日の記者会見でペンス副大統領はアメリカでの批准に楽観的な姿勢を見せた。

 この他にも、対中国で両国が協力するとペンス副大統領。中国で逮捕された2人のカナダ人男性の釈放に向けて努力することを確認したと語った。昨年12月にブリティッシュ・コロンビア(BC)州バンクーバー国際空港で中国の通信大手ファーウェイの孟晩舟副会長兼CFO(最高財務責任者)をアメリカの要請により拘束。直後に中国でカナダ人男性2人が拘束されたため、報復措置とみられている。さらに今年になってカナダの大手キャノーラ会社の製品輸入を禁止するなど、報復とみられる措置が続いている。孟CFOは現在もバンクーバーで自宅軟禁が続いている。

 ペンス副大統領は今年6月に日本で開催されるG20(20カ国・地域首脳会合)でドナルド・トランプ大統領がカナダ人男性2人の釈放について中国の習金平国家主席と話すだろうと語った。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。