2019年5月30日 第22号

 晴天と高温が続き、乾燥した状態となっているブリティッシュ・コロンビア州の南部沿岸部では、30日正午より住宅の庭での焚火など、裸火の使用が禁止された。

 個人住宅で枯草やゴミなどを燃やす際の炎の大きさが、カテゴリー2(幅50センチ以上3メートル以下、高さ50センチ以上2メートル以下)となる焚火のほか、0・2ヘクタール以下の面積の芝焼き、ドラム缶型焼却炉(burn barrel, burning cage)などの使用、また花火やスカイランタン(天灯)を打ち上げることが禁止となる。

 対象となる地域はローワーメインランドのほか、バンクーバー島とガルフ・アイランド、サンシャイン・コーストのほか、ハイダグワイとなる。なお、この規制がいつまで続けられるかは、明らかにされていない。

 キャンプファイヤー(幅、高さとも50センチ以下の炎)は今のところ、局地的に禁止されている以外は制限対象とはなっていない。しかしキャンプファイヤーをする場合には、周りの状況に十分注意を払い、常に誰かが火の管理をするよう、沿岸部森林火災管理局では注意を喚起している。

 事業用裸火(幅3メートル以上、高さ2メートル以上)については規制は行われないものの、より厳重な管理と当局への登録がなされていることが必須となる。

 

2019年5月30日 第22号

 ブリティッシュ・コロンビア(BC)州上訴裁判所は25日、トランスマウンテン・パイプライン拡張計画についてのBC州政府の訴えを全会一致で退けた。

 BC州政府は、アルバータ州からBC州バーナビー市まで敷かれているトランスマウンテン・パイプラインの拡張工事計画について、2016年に連邦政府が計画を承認した後、環境問題や海洋汚染を理由に、BC州内に敷かれるパイプラインについてはBC州政府が承認権を有すると訴えていた。これに対し裁判所は、同工事計画は連邦政府の管轄であり、BC州政府に工事を停止する権限がないとの見解を全会一致で決定した。

 トランスマウンテン・パイプライン拡張工事計画は、2016年秋にジャスティン・トルドー自由党政権が承認。アルバータ州エドモントン近郊からBC州バーナビー市までの現存する約1150キロメートルのパイプラインに並列して建設する拡張計画で、完成すればカナダのオイルサンドを現在の3倍となる1日あたり89万バレルまで輸送できることになる。オイルサンド輸出拡大を狙う連邦自由党政権とアルバータ州政府は同拡張工事を推進。しかし環境問題を理由にBC州政府、関係する先住民族、環境活動家、バンクーバー市、バーナビー市が反対し、真っ向から対立している。

 昨年8月BC州最高裁判所が、連邦政府の承認は環境問題への調査不足と先住民族の人々への説明不足だと、工事の差し止めを言い渡した。これにより、連邦政府は改めてカナダエネルギー委員会に環境対策への調査を指示し、今年3月、同委員会は環境対策での不備を認めながらもカナダ経済への貢献が大きいとして改めて承認した。

 連邦政府は今年6月18日に工事計画を承認するかどうかを再判断する。その連邦政府の判断基準に、今回の裁判所の判決は好材料となるとされている。

 しかしBC州政府は、連邦最高裁判所に上訴することを表明している。BC州デイビッド・イービー司法長官は「この問題はカナダの最高裁判所で明確にされるべき案件」と記者会見で語った。BC州ジョン・ホーガン州首相は、「BC州政府に(この問題の)決定権があると確信している」と自信を見せ、BC州上訴裁判所はBC州の主張に同意しなかったが、上訴が妥当と考えていると語り、「判断は司法長官に任せる」と述べた。

 同パイプライン拡張工事については、独占的にアメリカ市場へと輸出されているオイルサンドを海外、特にアジアへと市場拡大を狙う連邦政府とアルバータ州政府が強く推進している。しかしオイルサンドはアルバータ州で主に産出されるため、アジアへの輸出には太平洋岸のBC州政府の協力が欠かせない。

 アルバータ州政府ジェイソン・ケニー州首相は今回の判決について「アルバータ州だけではなく、BC州を含むカナダ全体にとっていい判決」と歓迎した。

 BC州では2017年選挙で州政府が自由党からNDPに交代。NDP政権はグリーン党の協力関係で成り立っているため、環境への影響が大きいオイルサンドの輸送、輸出について、政権交代直後から反対の立場を取っている。

 今後も、BC州からの強い反対は続くとみられている。

 

2019年5月30日 第22号

 マレーシア政府は28日、先進国から運ばれてきたゴミ入りのコンテナについて、送り元を調べて送り返すとの方針を発表した。3300トンものゴミが、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアなどから送られてきていることが分かっているという。

 「マレーシアは先進国のゴミ捨て場ではない」とマレーシア政府は怒りを露わにしている。マレーシア政府によると、昨年、中国がプラスチック製品ゴミの輸入を禁止して以降、途上国がゴミ輸出先の標的になっていると説明している。

 先週にはフィリピンの大統領が大量のゴミをカナダに送り返すと発表。カナダから送られてきたゴミの引き取りについて、カナダ政府が不誠実な対応をしたため、在カナダのフィリピン大使や総領事を召還する事態にまで発展している。

 マレーシア政府は、今回の件は氷山の一角との見解を示し、ゴミ処理について先進国に国際規則を守って、もっと誠実に対応してほしいと注文した。

 カナダでは、プラスチックゴミの約11パーセントが国内でリサイクルされる以外は、国外でリサイクルするために輸出されるか、ゴミ処理されているとみられている。

 

2019年5月30日 第22号

 現在、無所属で連邦議員を続けているジェーン・フィルポット議員とジョディ・ウィルソンレイボールド議員が27日、自身の選挙区で記者会見を開き、次期総選挙には無所属で出馬することを表明した。

 フィルポット議員はオンタリオ州マークハム・ストーフビル選挙区で会見し、無所属で出馬する理由について、自分の信念に基づいて行動することを恐れるべきではない、とのメッセージを若い女性たちへ行動で示したかったと語った。「ここで私が出馬を辞めれば、これからカナダを担っていく若い女性たちにどのようなメッセージを送ることになるだろうかと思った。私は自分の意思を貫く必要がある」と述べた。

 ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー・グランビル選挙区で会見したウィルソンレイボールド議員は、無所属で出馬することにはリスクがあることは承知していると語り、「それでも国民の支援があれば無所属で出馬することが現状ではベストの選択肢だと確信している。現在の政治文化を変えるためにもそれがベスト」と述べた。

 両議員とも、無所属として活動することで真に国民と向き合えると強調。党にどう行動するかを指示されることもなければ、政党幹部にどう投票するかを指示されることも、企業ロビイストに影響されることもないと無所属の利点を強調した。

 ウィルソンレイボールド議員は、妥協が信念を凌駕し、仲間はずれが協調性より重要視されるような、(党内の)多様性の欠如を受け入れるわけにはいかない、党の力が強すぎると語り、この数カ月間にSNCラバラン社スキャンダルや党内での抗争で、それを学んだと語った。

 両議員が現在、無所属で議員活動をしている原因は、今年になって明らかになったSNCラバラン社スキャンダル。全国紙グローブ&メールが掲載した自由党政権によるSNCラバラン社救済策をめぐって、当時司法長官だったウィルソンレイボールド議員とジャスティン・トルドー首相をはじめとする自由党政権幹部との対立が明らかになった。

 自由党政権は、ケベック州モントリオールに本社を置くSNCラバラン社の贈賄事件について、ウィルソンレイボールド前司法長官に司法取引で解決するように圧力をかけ、これに応じなかった前司法長官は、今年1月に法務大臣兼司法長官から退役軍人担当大臣に事実上の降格人事処分を受けた。

 この事件が発覚後、自由党政権は雇用と経済の観点からSNCラバラン社を救済することはカナダにとって利益があると主張し、圧力をかけたことへの正当性を強調。ウィルソンレイボールド前司法長官の判断を非難していた。

 しかし、当事者による説明などでウィルソンレイボールド前司法長官の主張に正当性と論理性があることが明らかになった。それでも自由党政権は、自らの正当性を強調するために主要閣僚や新人議員などを使ってウィルソンレイボールド前司法長官を非難し続けた。その中で唯一、事件発覚当初から前司法長官の立場を支持していたフィルポット前予算庁長官が、この件に関する党のやり方に抗議するとして大臣辞職を表明。自由党に激震が走った。それでも自由党はSNCラバラン社救済は必要との主張を貫き、トルドー首相はウィルソンレイボールド前司法長官とフィルポット前予算庁長官を除名処分とした。

 SNCラバラン社問題についてはまだ解決していない。

 ただ、この事件の発覚後と対応のまずさにより、自由党は支持率を落とし、現在は野党第一党保守党に支持率でリードされているとの世論調査結果が発表されている。今年10月に実施される次期総選挙では厳しい戦いが予想されている。

 ウィルソンレイボールド前司法長官とフィルポット前予算庁長官は、無所属になったあと、他党から次期総選挙に出馬するのではないかとの憶測があった。最も可能性が高かったのは、グリーン党。グリーン党は現在、連邦議員はエリザベス・メイ党首と、今春 BC州ナナイモ選挙区で実施された補欠選挙で当選したの2議員のみ。しかし地方議会でも最近の選挙でグリーン党旋風が巻き起こっており、もし両議員がグリーン党から出馬すれば、連邦議会の流れが変わることは間違いなかった。

 メイ党首は、二人が無所属で出馬すると決めたのは残念としながらも、考え方が最も近い両議員とこれからも協力すると語り、二人の選挙区にはグリーン党からは候補者を出さないことを明言した。

 他の3党は、自由党、保守党、新民主党(NDP)は、その2選挙区で候補者を立てることをすでに表明している。

 

2019年5月30日 第22号

 50年前の今月25日、元ビートルズのメンバー、ジョン・レノンは妻のオノ・ヨーコとともに、パジャマ姿で平和を訴える1週間のイベント『ベッド・イン』を、ケベック州モントリオール市のホテルで始めた。

 舞台となったのは、同市中心街にあるフェアモント・ザ・クイーンエリザベス・ホテルの1742号室。寝間着姿になった2人は、この部屋のベッドでくつろぎながら、詰めかけた報道陣や当時隆盛を極めた反体制文化の指導者らを迎え、世界へ平和のメッセージを発信した。また、ジョン・レノンのソロデビュー曲で大ヒットした『平和を我らに(Give Peace a Chance)』のレコーディングも、この時なされている。

 同ホテルは50周年を記念して、この部屋を当時の面影をしのばせるデザインに改装した。半世紀が過ぎてジョン・レノンを知らない世代が増える中、そうした若い人たちにも、この時のレノンとヨーコの雰囲気を味わい理解してもらいたかったと、同ホテルの報道担当ジョアン・パピノーさんは取材に説明している。

 内装にはビンテージの録音機器のほか、花柄のティーカップセット、また当時の二人がベッドに寝ころびながら、老子道徳経の英訳版(The Way of Life)を見入っている場面や、花のにおいをかいでいる場面などを撮った写真が飾られている。また清掃係が「廊下と室内は非常に汚れ、花びらがそこら中に散らかっている」と書き残した、当時のハウスキーピング記録も展示されている。

 またホテルのロビーには、ジョン・レノンが当時運転していたのと同じタイプの白いロールスロイスも展示されている。

 同ホテルのウェブサイトによると、この1742号室の特別デザインは6月1日より12月31日までの期間限定で、宿泊費は1泊2999カナダドルからとのこと。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。