2019年5月30日 第22号

 現在、無所属で連邦議員を続けているジェーン・フィルポット議員とジョディ・ウィルソンレイボールド議員が27日、自身の選挙区で記者会見を開き、次期総選挙には無所属で出馬することを表明した。

 フィルポット議員はオンタリオ州マークハム・ストーフビル選挙区で会見し、無所属で出馬する理由について、自分の信念に基づいて行動することを恐れるべきではない、とのメッセージを若い女性たちへ行動で示したかったと語った。「ここで私が出馬を辞めれば、これからカナダを担っていく若い女性たちにどのようなメッセージを送ることになるだろうかと思った。私は自分の意思を貫く必要がある」と述べた。

 ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー・グランビル選挙区で会見したウィルソンレイボールド議員は、無所属で出馬することにはリスクがあることは承知していると語り、「それでも国民の支援があれば無所属で出馬することが現状ではベストの選択肢だと確信している。現在の政治文化を変えるためにもそれがベスト」と述べた。

 両議員とも、無所属として活動することで真に国民と向き合えると強調。党にどう行動するかを指示されることもなければ、政党幹部にどう投票するかを指示されることも、企業ロビイストに影響されることもないと無所属の利点を強調した。

 ウィルソンレイボールド議員は、妥協が信念を凌駕し、仲間はずれが協調性より重要視されるような、(党内の)多様性の欠如を受け入れるわけにはいかない、党の力が強すぎると語り、この数カ月間にSNCラバラン社スキャンダルや党内での抗争で、それを学んだと語った。

 両議員が現在、無所属で議員活動をしている原因は、今年になって明らかになったSNCラバラン社スキャンダル。全国紙グローブ&メールが掲載した自由党政権によるSNCラバラン社救済策をめぐって、当時司法長官だったウィルソンレイボールド議員とジャスティン・トルドー首相をはじめとする自由党政権幹部との対立が明らかになった。

 自由党政権は、ケベック州モントリオールに本社を置くSNCラバラン社の贈賄事件について、ウィルソンレイボールド前司法長官に司法取引で解決するように圧力をかけ、これに応じなかった前司法長官は、今年1月に法務大臣兼司法長官から退役軍人担当大臣に事実上の降格人事処分を受けた。

 この事件が発覚後、自由党政権は雇用と経済の観点からSNCラバラン社を救済することはカナダにとって利益があると主張し、圧力をかけたことへの正当性を強調。ウィルソンレイボールド前司法長官の判断を非難していた。

 しかし、当事者による説明などでウィルソンレイボールド前司法長官の主張に正当性と論理性があることが明らかになった。それでも自由党政権は、自らの正当性を強調するために主要閣僚や新人議員などを使ってウィルソンレイボールド前司法長官を非難し続けた。その中で唯一、事件発覚当初から前司法長官の立場を支持していたフィルポット前予算庁長官が、この件に関する党のやり方に抗議するとして大臣辞職を表明。自由党に激震が走った。それでも自由党はSNCラバラン社救済は必要との主張を貫き、トルドー首相はウィルソンレイボールド前司法長官とフィルポット前予算庁長官を除名処分とした。

 SNCラバラン社問題についてはまだ解決していない。

 ただ、この事件の発覚後と対応のまずさにより、自由党は支持率を落とし、現在は野党第一党保守党に支持率でリードされているとの世論調査結果が発表されている。今年10月に実施される次期総選挙では厳しい戦いが予想されている。

 ウィルソンレイボールド前司法長官とフィルポット前予算庁長官は、無所属になったあと、他党から次期総選挙に出馬するのではないかとの憶測があった。最も可能性が高かったのは、グリーン党。グリーン党は現在、連邦議員はエリザベス・メイ党首と、今春 BC州ナナイモ選挙区で実施された補欠選挙で当選したの2議員のみ。しかし地方議会でも最近の選挙でグリーン党旋風が巻き起こっており、もし両議員がグリーン党から出馬すれば、連邦議会の流れが変わることは間違いなかった。

 メイ党首は、二人が無所属で出馬すると決めたのは残念としながらも、考え方が最も近い両議員とこれからも協力すると語り、二人の選挙区にはグリーン党からは候補者を出さないことを明言した。

 他の3党は、自由党、保守党、新民主党(NDP)は、その2選挙区で候補者を立てることをすでに表明している。

 

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