2019年5月30日 第22号

 大規模森林火災が町の近くに接近、避難命令も出されたアルバータ州北部にある人口3000人あまりの町ハイレベルで、危険と隣り合わせになりながらも、消火活動に従事している関係者のために営業を続けている店がある。

 今週初めの段階で1000平方キロメートル以上に成長した森林火災は、ハイレベルのわずか3キロメートルの地点まで接近していた。町と周辺地域の住民約5000人に対し20日に出された避難命令は、解除までにはまだ1週間以上かかるとみられている。

 そんな中、この町のコーヒーチェーン、ティムホートンズを両親とともに経営するジャレド・スナイダーさんは取材に対し、店を続けてほしいという関係者からの要望に、二つ返事で引き受けたと話している。従業員の数は10人に減らしたものの、多くのボランティアとともにメニューを一部制限しながらも通常どおり、年中無休24時間営業を続けている。

 また家庭の事情で退去命令に従い、店を休むようにスナイダーさんが申し渡した従業員たちも、できれば居残って店を手伝いたがっていたという。こうした地元愛と仕事に誇りを持った従業員たちを目の当たりにして、スナイダーさんはとても心を打たれたと語っている。

 また、地元のために踏みとどまっているのはティムホートンズだけではなかった。町役場森林課からの要請を受けた大型ホームセンター、ホームデポも消火活動を支援するため、営業を続けている。そのほか町中にある5つのホテルも、消火活動関係者のために宿泊施設を提供している。その中のひとつ、フラミンゴ・インはレストランも引き続きオープンしている。スタッフの1人ジャマイカ・マルツァロさんは、こうして消火活動を支援できるのはうれしいことだとして、営業停止の命令が出される最後の日まで営業を続けるつもりだと語っている。

 ガソリンスタンドのいくつかも、緊急車両のために営業を続けている。町の南端にあるコープのガソリンスタンドは、2週間前に導入したディーゼル発電機のおかげで、先週の初めに起こった停電でもガソリンを販売できた唯一のガソリンスタンドだった。経営者のウェイン・ノーズワージーさんもやはり、避難するよう直接命令されるその日まで、営業を続けると語っていた。

 またティムホートンズを営業し続けているスナイダーさんは、消火活動を支援するためにカナダ西部の各地から、消防だけではなく重機オペレーターやトラック運転手、水タンクローリー運転手など様々な人が集まってくるのを見て、ありがたく素晴らしいことだと感想を述べている。

 泥まみれになり、憔悴しきった表情で店を訪れる人たちにコーヒーやアイスカプチーノなどを、笑顔とちょっとした世間話で提供することで、少しでも元気づけてよい日を送ってもらえればと願っていると、スナイダーさんは話していた。

 

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