2019年6月6日 第23号

 ジャスティン・トルドー首相は6月4日、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州バンクーバーで記者会見し、全国で多くの先住民族女性・少女が殺害され、行方不明になっている事実を「民族浄化のための大量虐殺」と表現した報告書についてカナダ政府は「受け入れる」と語った。

 トルドー自由党政権が2016年に設置した先住民族女性・少女の殺害・行方不明に関する調査委員会(MMIWG)による1200ページに及ぶ調査報告書が3日にケベック州ガティノーで発表された。

 内容は、先住民族、特に女性や少女、性的少数派(2SLGBTQQIA)を標的にした殺人・行方不明事件についての事実や改善策の提案などとなっている。先住民族はカナダの総人口の4パーセントにしか過ぎないにもかかわらず、先住民女性・少女が殺害・行方不明に巻き込まれている割合は、その他のグループと比較して約12倍、白人女性と比較すると16倍にものぼるとしている。

 この事実の要因には、ヨーロッパからの入植時代から今日まで続く「先住民族破滅」を目的とした政策が影響しているとも報告している。1700年代に起こった先住民族殺害への報奨金制度から子供に寄宿生活を強要するレジデンシャルスクール制度、独自文化継承禁止政策、さらには今日でも続く医療や経済活動へのアクセス欠如、警察の対応などが、多くの先住民族、特に女性や少女たちに大きな影響を与えているという。

 トルドー首相は3日のガティノーでの記者会見では、「大量虐殺」という言葉を使用しなかったが、4日のバンクーバーでの記者会見では報告書の内容として「大量虐殺」という言葉を政府として受け入れることを表明、ただ、記者の個人として受け入れるかとの問いには明言しなかった。トルドー首相は「使用されている単語については議論が巻き起こっているが、国家として、リーダーとして、国民として、我々に何ができるかということに焦点を当て、悲惨な状況を終わらせるための段階に入らなくてはならない」と述べた。

 今回の報告書で、先住民族の状況を「大量虐殺」と表現したことについては、賛否両論が巻き起こっている。

 

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