2019年6月6日 第23号

 ブリティッシュ・コロンビア州ノースバンクーバー市のスーパーマーケットで購入したサケの切り身に、海シラミ(sea lice)の通称で知られる寄生虫が張り付いていたことを、購入した生物学者がネット上で公開、サケの海面養殖の問題点を指摘している。

 この生物学者は、地元に住むアレクサンドラ・モートンさん。調査のために5月31日、大手スーパーマーケットのスーパーストアで、養殖物のアトランティック・サーモンの切り身を購入した。地元で売られている魚に付着しているウィルスを調査するために、彼女は定期的に市販されている切り身などを購入しているという。

 そんな彼女でも、生きたままの海シラミが切り身の表面に付着していたのを発見した時は驚いたと、取材に話している。海シラミが付いたままの市販品が店頭に並ぶことは滅多にないとしながらも、これは多分、調理場で大量の海シラミがサケから洗い落とされ、その場に残っていたそのうちの一匹が何かの拍子に、加工された切り身に張り付いたのだろうと、モートンさんは推測する。

 この件についてのメディアからの質問に対し、スーパーストアを傘下に持つロブローズは、切り身の加工業者に連絡を取り、品質管理方法について協議すると回答している。また同社は消費者に提供する食品に誇りを持っており、海シラミ自身は人体に無害ではあっても、今回のようなケースは起きてはならないことだという認識を示している。また店頭に出回っている商品の全品検査を行った結果、この件以外には海シラミは見つからなかったと報告している。

 またモートンさんも、スーパー側に何ら落ち度はないと話している。一方で、この一件が示しているのは、BC州沿岸部で行われているサケの養殖(オープン・ネット海面養殖)が引き起こしている問題だと指摘する。養殖場のネットで囲われた、限られた海中に閉じ込められた養殖魚の間では、寄生虫やウイルスが蔓延しやすい。また、その付近では寄生虫の幼生が大量に浮遊するため、そばを通過する野生のサケにも影響が及ぶ。またウロコが十分に発達していないサケの幼魚などが海シラミに寄生されると、体を十分に守れないため死に至ることもあるという。

 この状況を解決するには、ネットで囲う海面養殖場ではなく、陸上のタンクで養殖することだと、モートンさん。一般に閉鎖循環式陸上養殖と呼ばれるこの方法は、すでに北米各地で行われている。しかしBC州サケ養殖業協会のショウン・ホールさんは、広大な土地にコンクリート製タンクを設置し、大量の電力を消費して中の水を巡回させるなどして、海に近い状態を作り出さなければならない点を指摘、まだ日が浅い養殖方法だとしている。

 

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