2016年10月6日 第41号

 バンクーバー市警察は9月30日記者会見を行い、9月8日から行方が分からなくなっていた日本人女性の古川夏好さん(30)について、遺体で発見されたと発表した。

 市警によると、9月28日午後7時少し前に、バンクーバー市ダウンタウンのデイビー通りに面した空き家で女性の遺体を発見。遺体が古川さんと確認されたと発表した。

 古川さんは9月12日、行方が分からないとしてバンクーバー市警に届けられたが、古川さんが最後に見かけられたのがバーナビー市だったため、連邦警察(RCMP)バーナビーが捜査を引き継いでいた。しかし遺体がバンクーバー市で見つかったため、今後はバンクーバー市警が主導で、RCMPバーナビーと協力しながら捜査が行われると市警は語っている。

 また市警はウィリアム・ビクター・シュナイダー容疑者(48)をブリティッシュ・コロンビア州バーノンで、古川さんの遺体が発見された日と同日、午前零時少し前にRCMPが逮捕したと発表。死体を適切に扱わなかった容疑で訴追した。

 市警は、シュナイダー容疑者が、9月8日にバンクーバー市内ダウンタウンで古川さんが男性と一緒に歩いている公開画像の男性であることに間違いはないとしながらも、古川さんとの関係について、また古川さん死亡との関連については記者会見では公表しなかった。ただ現在シュナイダー容疑者以外には、古川さんの死に関連した容疑者はいないと明言した。今月3日には古川さんの司法解剖が行われ、死因の特定をするとともに、最後に目撃された9月8日からの足取りなどを今後も調べていく方針を明らかにした。

 市警は、現在捜査が継続中であること、情報公開規制がかかっていることを理由にそれ以上の詳しい情報については公表できないと繰り返した。

 一方、シュナイダー容疑者は10月3日、バンクーバー市のBC州裁判所に出廷したが、選任弁護士が決まっていないことを理由に、裁判は10月17日に延期された。

 

 古川さんが行方不明になって以来、古川さんの留学エージェントである芦田祐輔さんと、友人のジェイ・ベルガラさんは、フェイスブックページ『FIND Natsumi Kogawa/古川夏好さん捜索情報』を立ち上げたり、ビラ配りをするなどして、手がかりを求めていた。

 9月14日から始められたビラ配りには、カナダ人の知り合いや、フェイスブックを見て集まった有志らの協力があった。

 芦田祐輔さんは、ことしの3月、日本で古川さんから留学について相談を受けた。バンクーバー留学が決まり、5月に古川さんがバンクーバーに留学してからも古川さんを自宅のパーティーに招いたりと、友人のような存在だったという。

 芦田さんは、「現在はまだ警察が調査している段階。行方不明になった古川さんについての詮索は止めて、彼女の冥福を祈ってほしい」と取材に語った。

 ジェイ・ベルガラさんは、古川さんがバンクーバーに留学してからの友人で、9月8日以来連絡が途絶えた古川さんを心配し、12日には警察に通報、バンクーバーの日系コミュニティなどにも捜索協力を呼びかけていた。「バンクーバー新報をはじめ、捜査に協力してくれた人々や団体には大変感謝している。古川さんの捜査協力を必死の思いで求め続けてきたが、その中で、必ずしも皆が協力してくれるという状況ではなかった。今の段階では、その詳細に触れることは避けたい」と述べた。

 古川さんの遺体発見現場であるガブリオラマンションには、たくさんの花が捧げられた。

 

2016年10月6日 第41号

 ジャスティン・トルドー首相は10月3日、温室効果ガス排出量1トンにつき10ドルの課税制度を全州で導入すると、国会で発表した。導入は2018年から実施するとしている。

 それまでに全州・準州政府は、炭素税かキャップ&トレード制度かの、どちらかを導入することを決定しなければならない。もし、2018年までにどちらかの制度の導入を実施しない場合、連邦政府が実施すると強い姿勢を示した。

 トルドー首相は国会で、最近カナダ国内で起きている大きな自然災害をあげ「気候変動から逃げることはできない。これが現実だし、どこででも起こりうること」と語った。保守党政権時代10年間の無対策を批判し、「今、我々ができることは、今日から、そして毎日、現実的な努力をすること、環境を保護することであり、それが結果的には国民の健全性につながる」と必要性を強調した。

 カナダは昨年12月にフランスのパリで行われた気候変動国際会議で2030年までに2005年比で温室効果ガスを30パーセント削減すると発表している。この会議には、昨年10月に政権交代して保守党から政権奪取に成功した自由党トルドー首相が出席し、カナダの気候変動に関する貢献を約束したが、発表した数字は保守党が昨年春に国連に提出したものをそのまま引き継いでいる。

 今回トルドー首相は、排出量への課税について、2018年に1トンあたり10ドルから始め、毎年10ドルずつ、2022年までに50ドルまで引き上げることを提案している。

 これについて各州の反応は二分している。この日、トルドー首相が国会で炭素税導入を提案したのと同時進行で、モントリオールでは連邦政府キャサリン・マッケナ環境相が、全国州・準州環境相と会合し、政府の意向に理解を求めた。しかし、以前から炭素税に反対しているサスカチワン州、ノバスコシア州、ニューファンドランド・ラブラドール州は、会合途中で退場。サスカチワン州はブラッド・ウォール州首相が声明を発表し、この件について連邦政府を提訴することも辞さない構えを見せた。これら3州は天然資源産業が主要産業であり、課税導入は州経済に直撃するとの立場を取っている。

 一方で、すでに炭素税を導入しているブリティッシュ・コロンビア州、炭素税導入を予定しているアルバータ州、キャップ&トレード制度を導入しているケベック州、オンタリオ州では連邦政府の今回の発表を支持している。特にBC州ではすでに1トンにつき30ドルの炭素税を実施し、さらにクリスティ・クラーク州首相は更なる引き上げも示唆している。国内最大の天然資源産業を持つアルバータ州は、昨春、進歩保守党から新民主党(NDP)に政権が変わり、環境問題に積極的に取り組んでいくことをすでに公表している。原油価格が急落し経済が厳しい状況となっているが、2017年までには1トンにつき20ドルの炭素税導入を検討している。ただ、今回のトルドー首相の発表については、見返りとしてパイプライン建設を進めるよう要求している。

 国会では今週、パリ協定に批准するかの決定が行われる。

 

2016年10月6日 第41号

 ジャスティン・トルドー首相が10月3日に国会で導入を検討していることを明らかにした全国的な炭素税導入について、国民は概ね支持していることが世論調査で分かった。

 世論調査会社ナノス・リサーチが9月24日から27日に実施した電話による世論調査結果では、回答者のうち、パリ協定の実現に向けた全国的な環境対策を支持、もしくはとりあえず支持すると答えたのは77パーセント。また温室効果ガス排出量への課税を支持、もしくはとりあえず支持は59パーセント、そのうち62パーセントは炭素税、もしくは同等の課税を全国展開することを支持すると答えている。

 しかし、3日にモントリオールで行われた連邦政府キャサリン・マッケナ環境相と全州・準州政府環境相との話し合いは、サスカチワン州、ノバスコシア州、ニューファンドランド・ラブラドール州の環境相が途中で退場し、共同記者会見が中止されるなど、全州合意による導入への道のりはかなり険しいものとなっている。

 国会では5日に、パリ協定批准の是非について採決が行われる予定で、与党が過半数を占めているため、可決するとみられている。カナダは、2030年までに2005年比で30パーセントの温室効果ガス排出量削減を掲げているが、現在のままではこの目標達成は厳しいとの環境省の調査では報告されている。

 

2016年10月6日 第41号

 連邦政府ビル・モルノー財相は10月3日、不動産に関する規定を変更することを発表した。一つは海外投資家の住宅売買に影響する規定で、もう一つは国民の負債を抑制するもの。

 モルノー財相は、連邦政府が不動産市場に直接介入することはしないが、不動産市場が安定的、かつ効果的に機能することを目指す必要はあると語った。

 海外投資家に対しては、不動産が高騰し続けるオンタリオ州トロントとバンクーバーの市場を考慮し、キャピタルゲイン税免除の規則をより厳しく明確にし、抜け道を塞ぐ対策を講じた。

 国民の負債抑制については、住宅ローンの借り入れ規則を厳しくし、無理な不動産購入により国民の負債額が増額し返済不能とならないための対策としている。

 専門家は、今回の連邦政府の規制強化で、国内の不動産事情がどう変化するかは未知数としている。ただ、8月にブリティッシュ・コロンビア州政府が海外投資家の住宅購入について15パーセントの新課税を導入したり、同州バンクーバー市が非居住物件への課税を発表するなど、時には「バブル」と表現される高騰する不動産市場を考慮した各政府の対策がある程度、不動産を適正価格へとうまく落ち着かせるのではと期待されている。

 今回の連邦政府の対策について、バンクーバー市やトロント市の市長は歓迎する声明を発表している。

 

2016年10月6日 第41号

 ロジャーズ・メディアは9月30日、現在発行している雑誌のうち4誌を完全デジタル化すると発表した。その他の雑誌も、発行回数を減らすとしている。

 完全デジタル化されるのは、フレア、スポーツネット、マネーセンス、カナディアン・ビジネスの4誌。来年1月から実施される。デジタル化後は、ウェブサイトもしくはアプリで閲覧できる。

 発行回数が減らされるのは、カナダを代表する雑誌マックリーンズ。これまでの週刊から月刊に変更する。ただ新しい記事はデジタル版で毎週更新される。

 今回の変更についてロジャーズ・メディアのスティーブ・マイチ氏は広告収入の減少を理由にあげた。報告によれば昨年比で30パーセント落ち込んでいるという。

 ロジャーズ・メディアは、カナダのメディア大手ロジャーズ・コミュニケーションの子会社で、ロジャーズ・スポーツネットなど24のテレビ局や52のラジオ局、雑誌は57誌を発行している。

 今回の変更による人員削減などについては公表していないが、それほど大規模なものにはならないとしている。

 同社は先月、オンラインでのオンデマンドビデオサービス「ショーミ」のサービスを停止すると発表したばかりだった。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。