2016年10月6日 第41号

 ジャスティン・トルドー首相は10月3日、温室効果ガス排出量1トンにつき10ドルの課税制度を全州で導入すると、国会で発表した。導入は2018年から実施するとしている。

 それまでに全州・準州政府は、炭素税かキャップ&トレード制度かの、どちらかを導入することを決定しなければならない。もし、2018年までにどちらかの制度の導入を実施しない場合、連邦政府が実施すると強い姿勢を示した。

 トルドー首相は国会で、最近カナダ国内で起きている大きな自然災害をあげ「気候変動から逃げることはできない。これが現実だし、どこででも起こりうること」と語った。保守党政権時代10年間の無対策を批判し、「今、我々ができることは、今日から、そして毎日、現実的な努力をすること、環境を保護することであり、それが結果的には国民の健全性につながる」と必要性を強調した。

 カナダは昨年12月にフランスのパリで行われた気候変動国際会議で2030年までに2005年比で温室効果ガスを30パーセント削減すると発表している。この会議には、昨年10月に政権交代して保守党から政権奪取に成功した自由党トルドー首相が出席し、カナダの気候変動に関する貢献を約束したが、発表した数字は保守党が昨年春に国連に提出したものをそのまま引き継いでいる。

 今回トルドー首相は、排出量への課税について、2018年に1トンあたり10ドルから始め、毎年10ドルずつ、2022年までに50ドルまで引き上げることを提案している。

 これについて各州の反応は二分している。この日、トルドー首相が国会で炭素税導入を提案したのと同時進行で、モントリオールでは連邦政府キャサリン・マッケナ環境相が、全国州・準州環境相と会合し、政府の意向に理解を求めた。しかし、以前から炭素税に反対しているサスカチワン州、ノバスコシア州、ニューファンドランド・ラブラドール州は、会合途中で退場。サスカチワン州はブラッド・ウォール州首相が声明を発表し、この件について連邦政府を提訴することも辞さない構えを見せた。これら3州は天然資源産業が主要産業であり、課税導入は州経済に直撃するとの立場を取っている。

 一方で、すでに炭素税を導入しているブリティッシュ・コロンビア州、炭素税導入を予定しているアルバータ州、キャップ&トレード制度を導入しているケベック州、オンタリオ州では連邦政府の今回の発表を支持している。特にBC州ではすでに1トンにつき30ドルの炭素税を実施し、さらにクリスティ・クラーク州首相は更なる引き上げも示唆している。国内最大の天然資源産業を持つアルバータ州は、昨春、進歩保守党から新民主党(NDP)に政権が変わり、環境問題に積極的に取り組んでいくことをすでに公表している。原油価格が急落し経済が厳しい状況となっているが、2017年までには1トンにつき20ドルの炭素税導入を検討している。ただ、今回のトルドー首相の発表については、見返りとしてパイプライン建設を進めるよう要求している。

 国会では今週、パリ協定に批准するかの決定が行われる。

 

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