2016年10月6日 第41号

 中華人民共和国が建国された日、10月1日を祝福するイベントが、ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー市庁舎にて、各自治体の政治家などが参加して行われた。

 カナダと中国の友好関係を祝福する行事の一つとして行なわれたが、同市議会議員ケリー・ジャン氏のほか、リッチモンド市選出の連邦議会議員ジョー・ペスチソリド氏やバーナビー市の代表などが参加する中、市長代理としてジャン氏が、市庁舎前のポールに五星紅旗(中華人民共和国の国旗)を掲揚した。

 参加者は一様に赤いスカーフを巻いていたが、バンクーバーの政治団体のひとつ「進歩的な選挙民連盟(Coalition of Progressive Electors)」のメンバーで、バンクーバー市長選の候補だったミーナ・ウォン氏は、これに反発する。

 文化大革命を家族とともに中国で経験したウォン氏は、当時これを強力に押し進めた青年らの組織、紅衛兵に迫害された経験を持つ。その紅衛兵が首に巻いていたのが、この赤いスカーフだった。

 この文化大革命を指揮したのは、当時の毛沢東主席。奇しくもこの夏には、同州リッチモンドでその没後40周年を記念するコンサートが行われている。

 こうした海外での中国共産党を支持するイベントに反対している中華系団体「カナダの価値を守る同盟(Alliance of the Guard of Canadian Values)」のリーダー、ルイス・ホワン氏は、中国政府が人民をどのように扱ってきたか、また洗脳してきたかはその国民が一番知っているはずだと、取材に語っている。

 またホワン氏が危惧しているのは、中国の人権侵害だけではない。カナダ安全情報局も警告しているように、中国政府はカナダ政府や社会への影響力を強めようと画策している。地方自治体や議員などへの働きかけを強めており、多くの人がこの状況を憂い、この国の経済、社会、そして国家の安全を危惧しているとホワン氏。

 これに対しジャン氏は、こうした国旗掲揚イベントは他の国、メキシコやスロベニアに対しても行っているのに、どうして中国だけを非難するのか、これは差別だと反発する。カナダは中国の人権侵害や死刑制度に抗議を行っているし、中国も変わりつつある。しかしこの変化は単に相手を非難したり強硬な態度に出たりするだけでは起こしえなかったと説明。同席したペスチソリド氏も、中国政府と親交を深めることが、この国の民主化を進めるのに最も効果的な方法だと主張している。

 一方、バンクーバーで活動する民間グループ「フレンズ・オブ・ホンコン」のオーガナイザー、フェネラ・サン氏も、この国の政治家は、五星紅旗を掲揚することとで、中国の牢獄で拷問を受けている人々が釈放されるとでも思っているのかと、その行動に疑問を呈していた。

 

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