2016年10月13日 第42号

 カナダ・モーゲージ&ハウジング・コープ(CMHC)は6日、海外購入者および外国資本のバンクーバー不動産市場への影響についての報告書を発表した。その中で、8月2日にブリティッシュ・コロンビア州政府が導入した海外購入者税の影響はまだ分からないと報告した。

 グレーターバンクーバー不動産市場は、販売数では前年同月比で8月が26パーセント、9月が32・6パーセントと大幅下落、価格も8月は前月比で17パーセント下落していると報告している。

 しかしCMHCによれば、海外購入者税導入前からすでに販売・価格とも下落傾向にあり、同税導入はそれをやや加速させた影響はあるが、それだけが要因ではないとしている。 高騰し続けるバンクーバー不動産市場の要因として、海外からの投資目的による購入の影響が大きいことがあげられ、海外購入者を対象に今夏には連邦、州、市が次々と政策を打ち出した。その一つがBC州政府による海外購入者税15パーセントの導入で、他にも連邦政府が海外投資家の抜け道を塞ぐ目的でキャピタルゲイン税免除の規制を厳格にしたり、バンクーバー市は住居者のいない非居住住宅を対象に新課税を導入することを発表したりしている。

 しかしCMHCによると、バンクーバー市場が高騰している原因は海外投資家によるものだけが要因ではなく、低金利、人口増加、経済成長、住宅供給不足、区画整備などもあるとしている。

 BC州政府の海外購入者税がバンクーバーでの海外投資家の住宅購入にどのくらいの影響があるかは、まだしばらくは分からないだろうと報告している。ただ、8月、9月のバンクーバーの住宅販売が減少したのとは対照的に、トロントでの販売・価格は相変わらず上昇していると報告し、海外購入者がバンクーバーから移った可能性もあると指摘している。

 ジャスティン・トルドー首相は同日、連邦政府としても住宅価格の動向は注視していると記者会見で語った。

 

2016年10月13日 第42号

 自由党政権の議案が5日、国会で可決され、カナダが正式にパリ協定を批准することが決まった。

 同日の国会で、パリ協定承認の是非を採択。自由党、新民主党(NDP)、ケベック連合党が賛成し、207対81の大差で可決された。保守党は反対に回った。

 昨年12月にフランスのパリで開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で採択された新たな法的枠組みとなる「パリ協定」は、署名した196カ国が各国での批准手続きを経て発効される。発効条件は、批准国55カ国以上で、その国々の地球温暖化ガス総排出量が55パーセントに達すること。国連は5日、協定の発効条件が満たされたと発表し、30日後の11月4日に発効することが決まった。

 同日に批准となったカナダの削減目標は、2030年までに2005年比で温室効果ガス排出量を30パーセント削減するというもの。これは昨年、保守党政権が決定し国連に提出した目標だが、自由党は政権交代後約40日でCOP21が開催されたため、保守党の削減目標を「最低限」の目標として引き継いだ。しかし環境省は、この目標ですら達成は厳しいと報告している。

 目標達成のため、政府は3日、二酸化炭素排出に課税を義務付ける政策を国会で発表した。ジャスティン・トルドー首相は、2018年から1トンにつき10ドル、毎年10ドル引き上げ、2022年に50ドルとする案を発表。10州3準州一律で実施、炭素税、もしくはキャップ&トレード制度を選択できるとしている。炭素税はブリティッシュ・コロンビア州とアルバータ州で、キャップ&トレード制度はオンタリオ州とケベック州ですでに導入されている。その他の州では2018年までに導入されない場合、連邦政府が導入を決定すると厳しい姿勢を示している。

 これには3州が反対し、特にサスカチワン州政府は提訴も辞さないとの構えを見せている。

 パリ協定は京都議定書に続く国際的な枠組みで、発効後は法的拘束力を持つ。アメリカや中国など、温室効果ガス大量排出国もすでに批准している。

 

2016年10月13日 第42号

 国際ガールズデーの11日、ソフィー・トルドー首相夫人がトロント証券取引所(TSX)の開始を告げるイベントに参加した。

 この日、トルドー夫人を囲んだのは、少女や若い女性の権利を支援する慈善団体関係者や少女たち。カウントダウンに参加し、取引開始のベルを鳴らした。

 トルドー夫人は慈善団体の一つ、プラン・インターナショナル・カナダのグローバル大使を務め、以前には同団体のBecause I Am A Girlキャンペーンにもかかわっていた。

 プラン・インターナショナルとは「子どもとともに地域開発を進める国際NGO」で、世界中で子供たちの環境改善に力を入れている。その活動の一つが、特に少女や若い女性を対象にしたBecause I Am A Girlで、「女の子だから」差別されている地域での少女の権利向上などを支援している。この日は、プラン・インターナショナルも創設に関わった国際ガールズデー。2011年12月9日に国連総会で正式決定された。

 この日は自ら「フェミニスト」と公言しているジャスティン・トルドー首相も声明を発表。自由党政権は少女や若い女性のための支援に尽力すると述べ、自分や夫人と共に女性の可能性を引き出し、夢をかなえるための支援に国民もぜひ参加してほしいと語った。

 トルドー夫人はこの日からソーシャルメディアを始めたことも公表。「これまでソーシャルメディアを拒否し続けてきたけれど…そろそろ始め時かと思って」と綴った。始めたのは、フェイスブックとインスタグラム。フェイスブックには長女と写ったモノクロ写真と英仏両語でのメッセージが書き込まれ、「いいね」はすでに3万を超えている。これまでソーシャルメディアの力を存分に利用してきたトルドー首相は、ソフィ夫人がようやくソーシャルメディアを始めたと自身のインスタグラムに綴って応援した。

 

2016年10月13日 第42号

 ユーコン準州のホワイトホースから2日朝、90キロメートルほど離れた湖でのボート猟に出かけた3人組。しかし湖畔で装備を満載したボートを失い、救難隊が来るまでの4日間を、ほとんどの道具なしで過ごすこととなった。

 3人は獲物を探すために湖畔に上陸したものの、折からの風がボートを湖面に押し戻してしまった。波がボートをどんどん沖に運んでいってしまったため、彼らにできたことは、岸からそのボートが波にひっくり返される様子を見守ることだけだった。

 彼らの手元に残ったのは、着ていた衣類といくつかのライター、ナイフと双眼鏡だけ。何の連絡手段もなかった。しかしアウトドア経験豊富な3人組は、すぐさま救難隊を待つ準備にとりかかった。

 家族には4日の夜には帰宅すると伝えてあったので、捜索が開始されるまで、少なくともあと3日は待たなければならないことは明白だった。

 まだ青い葉のついている針葉樹の枝を何本も折り、重ねて風雨をしのぐシェルターを作った後、2カ所で火を起こした。ひとつは暖をとるため、もうひとつは捜索隊への信号用として。さらにひとりが着ていた赤いフローティング・スーツをほどいて一枚の布状に広げ、湖岸の開けた場所に目印として置いた。ただ、食料はあたりに自生していたローズヒップの実と、湖の水だけだった。

 家族が警察に捜索願を出したのは、帰宅予定の翌日の5日のことだった。3人組が家族に伝えていた行き先から、警察は可能性の高い場所2カ所を捜索、間もなく彼らの車を発見。ここからはヘリコプターによる捜索が行われ、同日午後6時ごろには3人を発見した。

 3人は空腹だったこと以外は健康上問題なかったという。警察は3人が無闇に歩き回ったりせず、遭難時のセオリーーシェルター、暖、目印の確保ーを確実に行ったことを高く評価していた。

 

2016年10月13日 第42号

 サンクスギビング・デーの10日、ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーの慈善団体が、3000食の七面鳥をホームレスなどのために用意した。

 これは、ユニオン・ゴスペル・ミッションが毎年行っているもので、今年はバンクーバー・イーストサイド2カ所と、ニューウェストミンスターの1カ所で、合計300人以上のボランティアによって行われた。

 強力な麻薬フェンタニルやその他の薬物の過剰摂取などの薬物事故の急増、ホームレス人口の増加、賃貸物件の家賃高騰と空室率の低下など、支援を必要としている人を取り巻く環境は年々悪化していると、同団体は取材に語っている。

 そのことを裏付けるかのように、同団体を訪れる人も増えつづけているという。同団体が運営する75床の簡易宿泊所は8月29日より満室が続いており、これまでに25人を断らなければならなかった。

 同団体の公報を務めるジェレミー・ハンカさんは、先週断った1人の青年のことを取材に語っている。彼はフルタイムの仕事を持ち、心身ともに健康で麻薬の使用歴もなかったが、それまで住んでいるところを出ざるをえなくなり、同団体を訪ねたという。「時給12ドルの仕事を続けているのに、住める場所がない町というのは、一体どうなっているのか」と危機感をにじませていた。

 こうした逆風が吹く中だからこそ、そうした人々に差し伸べられた手があることを知ってもらうためにも今回のイベントには力を入れたとハンカさんは語っていた。

 同団体ではこの日のために1週間前から準備を進めてきた。調理した七面鳥は1100キログラム、ジャガイモは360キログラム。また用意したクランベリーソースは260リットルになった。

 同団体代表のビル・モラードさんは、このイベント自身よりも、その後の展開を心待ちにしていると、取材に語っている。食事のためにここを訪れ、団体の活動を知った何人もの人が中毒や住居、就職といった問題の相談のために、ここを再訪するのを待っているのだ。多くの人が逆境から立ち上がり、新しい希望に向かって歩んでいくのをここで目の当たりにしてきたという。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。