2019年3月7日 第10号

 ジョディー・ウィルソンレイボールド前法務相兼司法長官は2月27日、カナダ大手建設会社SNCラバランの贈賄事件を不起訴処分とするようジャスティン・トルドー首相やその側近から圧力を受けたと証言した。

 約4時間に及んだ下院司法委員会でウィルソンレイボールド前法相は、トルドー首相やビル・モルノー財務相ら11人が2018年9月から12月にわたってSNCの贈賄事件を不起訴にするよう圧力をかけてきたと証言。その中でトルドー首相が政治的な影響について発言したことも明かし、政治介入にあたると警告したと語った。

 ウィルソンレイボールド前法相は、彼らによる働きかけは一貫した継続的なものだったと証言。中には、トルドー首相の前第一個人秘書官ジェラルド・バッツ氏の名前も含まれていた。バッツ氏は3月6日に同委員会で証言することが決定している。

 SNCラバランは、ケベック州モントリオールに本社を置くカナダ最大手の建設会社の一つ。2001年から11年にかけてリビア政権に対して政府事業受注のために4億5千万ドルの賄賂を贈ったとして2015年にカナダで訴追されている。

 事件は刑事裁判にかけられることが決定している。ウィルソンレイボールド前法相は、すでに刑事裁判にかけられることが決定している案件を、政治判断で司法取引として決着をつけるよう司法長官に圧力を掛けることは「不適切だ」と何度も発言した。ただ、それは違法行為とまでは言えないとの見解を示した。

 今年の1月にトルドー首相から内閣改造で法相から復員軍人大臣兼国防副大臣へ異動させると聞いた時には、SNCラバラン案件で首相らの要求を受け入れなかったことが理由だろうと思ったと語った。同氏は復員軍人相も2月に辞任している。

 トルドー首相はウィルソンレイボールド前法相の発言について、「一連の出来事に関する我々の見解は、ウィルソンレイボールド前法相の見解とは完全に異なる」と語り、SNCラバランへの刑事裁判への判断はウィルソンレイボールド前法相が単独で決定したことだと強調した。

 野党保守党アンドリュー・シェア党首は、SNCラバランを司法取引で不起訴にするためにトルドー首相らが前法相に圧力を掛けたことは明らかで、違法行為にあたる可能性があると主張。「首相はすぐに辞任するべきだ」と記者会見で語った。

 同新民主党(NDP)ジャグミード・シング党首は宣誓下の公聴会を開いて、事実関係をはっきりさせるべきと主張。内容によっては辞任要求もあり得ると語った。

 トルドー首相は、我々は国民のために常に最善で合法的に行動していると、自分たちの正当性を主張した。

 

2019年3月7日 第10号

 ジェーン・フィルポット予算庁長官が3月4日、辞任を発表した。突然の辞任表明に首都オタワに衝撃が走った。

 フィルポット前予算庁長官は辞任にあたり声明を公表。ジョディ・ウィルソンレインボールド前法務相兼司法長官の下院司法委員会での証言を受け、トルドー内閣への信任が揺らいだと説明している。

 前法務相はカナダの大手建設会社SNCラバランの贈賄事件を司法取引で不起訴処分とするよう、トルドー首相や側近らに「継続的に」3カ月にわたって圧力をかけられたと証言。しかし、圧力に屈しなかったため法務相から復員軍人相に異動となったと感じているとも証言した。

 トルドー首相らは一貫して前法務相への圧力を否定。見解の違いと説明し、誤った行為はしていないと繰り返している。

 他の閣僚らがトルドー首相に同調する中、フィルポット前予算庁長官だけがSNCラバランスキャンダルが発覚後もウィルソンレインボールド氏へサポートを表明していた。

 フィルポット前予算長官は2015年に当選して以降、保健大臣や先住民サービス大臣と主要閣僚としてトルドー政権を支えてきた、首相が最も信頼する閣僚のひとり。今年1月14日のウィルソンレイボールド前法務相が降格となった内閣改造で、先住民サービス大臣から予算庁長官に異動となった。そのフィルポット氏の辞任は、辞任という事実だけではなく、SNCラバランスキャンダルへの内閣の対応に不信感を公表したことが衝撃を持って受け止められた。

 首相は「辞任は残念だ」と語ったが、これまで重大な案件に取り組んできたフィルポット前予算庁長官の貢献に感謝すると語った。

 これで3日前に改造したばかりの内閣を再び改造する必要が出てきた。当面はカーラ・クワルトロー公共サービス・調達・アクセシビリティ大臣が兼任する。

 

2019年3月7日 第10号

 ジャスティン・トルドー首相は3月1日、2月12日に辞任したジョディー・ウィルソンレイボールド前復員軍人大臣兼国防副大臣の後任人事のための小規模内閣改造を実施した。前回1月の改造から6週間で2回目の内閣改造となる。

 復員軍人大臣兼国防副大臣に就任したのは、ローレンス・マコーレー前農務・農産食品大臣。2015年11月にトルドー政権が発足して以降、復員軍人相はこれで5人目。農務相にはマリークロード・ビボー前国際開発大臣が就任、国際開発大臣はマリアム・モンセフ女性の地位大臣が兼務する。今回の内閣改造で新しく閣僚入りした議員はなく閣僚の異動のみとなった。意図的に新しく閣僚入りさせることは避けたとみられている。

 今回の人事はウィルソンレイボールド前復員軍人相の辞任によるものだが、辞任の背景にはSNCラバランスキャンダルがあったと2月27日の下院司法委員会で本人が証言したばかり。今年1月14日の内閣改造まで法務相兼司法長官を務めていたウィルソンレイボールド氏は、トルドー首相や側近の圧力にも屈せず大手建設会社SNCラバランへの司法取引による不起訴処分を拒否したため、復員軍人相へ異動。事実上の「降格」処分となった。

 トルドー首相は「降格」人事を否定。スコット・ブライソン前予算庁長官が突然の辞任を昨年12月に発表しなければ、内閣改造はなくウィルソンレイボールド議員も法務相のままだったと説明している。

 

2019年3月7日 第10号

 キャノーラ(菜種)輸出カナダ最大手の一つリチャードソン・インターナショナル社のキャノーラの輸入を認めないと中国が決定したことが3月1日分かった。同社代表がテレビインタビューに答え、明らかにした。中国の税関が同社の登録を無効にしたという。

 カナダにとって中国は最大のキャノーラ輸出先。リチャードソンへの輸入禁止はカナダのキャノーラ輸出にとって大きな打撃になるとみられている。

 クリスティア・フリーランド外相はモントリオールで記者の質問に「非常に懸念している」と答え、「今回の措置に科学的な根拠はないとみている」と語った。中国は、過去にカナダのキャノーラを害虫などの懸念から一部輸入制限したことがある。

 リチャードソン社代表は、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟副会長兼最高財務責任者(CFO)がカナダ当局に拘束された問題で政治的な意図があるのではと推測していると語っている。

 同日にカナダ法務省は、孟氏のアメリカへの引き渡し手続き開始を決定したと発表した。

 

2019年3月7日 第10号

 ケベック州上位裁判所は3月1日、タバコ会社3社に約150億ドルの賠償を命じた。約10万人の喫煙者、元喫煙者によるタバコ会社3社に対する2件の集団訴訟は、2015年にケベック州最高裁判所が損害賠償を命じる判決を下したが、タバコ会社側が判決を不服として控訴していた。賠償金額は2015年からの利子も含めると約170億ドルになるという。

 原告側は、1950年代には同社の製品がガンなどの健康被害をもたらすと知っていながら、消費者に適切な注意を怠ったと1998年には訴えを起こしていた。

 タバコ会社3社、日本のJT傘下の子会社JTIマクドナルド、イギリスのブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT) 子会社のインペリアル・タバコ・カナダ、アメリカのフィリップ・モリス・インターナショナル子会社のロスマンズ・ベンソン・アンド・ヘッジズは判決を不服とする声明を発表。2社は判決内容を精査し、今後の対応を検討するとしている。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。