2019年3月21日 第12号

 カナダ官僚トップ枢密院書記長官マイケル・ワーニック氏が、ジャスティン・トルドー事務所を揺るがしているSNCラバランスキャンダルで18日、辞職を表明した。これで今年2月7日にSNCスキャンダルが発覚して以降、辞任・辞職は4人目となる。

 ワーニック氏は、ジョイス・マレー予算庁長官の就任式が終了すると辞職を発表。トルドー首相に宛てた辞職届を公表し、一連のSNCラバラン問題に対処する中で今後、野党党首と信頼関係を築いて政権運営を行っていくことは難しいと辞職の理由を説明した。保守党、新民主党(NDP)党首はワーニック氏の辞職を求めていた。

 ワーニック氏は、ジョディ・ウィルソンレイボールド前司法長官へSNCラバランを司法取引で不起訴とするよう圧力をかけた一人とされている。先月には下院司法委員会で参考人として招致され、圧力をかけるようなことはなかったと主張した。しかし、次に参考人として招致されたウィルソンレイボールド前司法長官が、ワーニック氏を最も圧力をかけてきた一人と名指しした。そのためワーニック氏は今月13日に、二度目の参考人招致で圧力をかけた事実がないことを改めて強調した。

 ワーニック氏は30年以上官僚として務め、すでに退任も目前で、あえてこの時期に辞職を発表したのはSNCスキャンダルが理由とみられている。辞職の時期については総選挙前としているが、数週間のうちではとみられている。

 これでジェラルド・バッツ前第一個人秘書官に次いで、SNCスキャンダルで辞職するのは2人目。2人とも圧力をかけた事実はない、法に触れるような誤ったことはしていないと主張しながらも辞職している。ウィルソンレイボールド前司法長官、ジェーン・フィルポット前予算庁長官はこの件で大臣を辞任したが、自由党へ止まる意思を示している。

 下院司法委員会は13日のワーニック氏の参考人招致の後、野党委員がウィルソンレイボールド前司法長官の招致を提案したが自由党委員が却下した。この件に関してウィルソンレイボールド議員は、まだ話さなければならないことがあると発言している。

 

2019年3月21日 第12号

 連邦政府は19日、来年度の予算案を発表した。今秋に総選挙を控え、広く薄く中間層を支援する選挙対策予算案となった。

 住宅問題を解消する手段として、若者の住宅購入を支援するための予算が組まれた。住宅ローンの規制緩和などで初めて住宅を購入する若者を支援する。ただオンタリオ州トロントやブリティッシュ・コロンビア(BC)州バンクーバーの2大都市ではすでに住宅価格が高騰しすぎているため、これだけの支援では焼け石に水との批判も出ている。

 他には転職やスキルアップのための支援や学生ローン返済緩和、退職年齢を過ぎても働き続ける低所得シニア向け政策などが盛り込まれている。

 今秋の選挙を前に、中間所得層への支援を前面に押し出しているが、中でも最も有権者が多い年齢層がミレニアル世代と言われる現在の20代から30代にかけての世代と団塊の世代。住宅支援やシニア支援は、こうした年齢層をターゲットにしていると専門家は分析している。

 ただ、今回の予算案が自由党政権の支持率にどれほど貢献するかは未知数。主な世論調査会社の結果では、現在支持率では保守党がリード、僅差で自由党が続き、離れて新民主党となっている。

 自由党ジャスティン・トルドー政権は現在、SNCラバランスキャンダルで国民の信用を失いつつある。スキャンダルと支持率は必ずしも正比例しないが、この問題が長引けば選挙戦に影響することは間違いないだろうとみられている。

 この日の予算案発表は、SNCスキャンダルの全容を解明しないまま、幕引きをしようとする自由党に反発した野党保守党が、ビル・モルノー財相の発表をヤジで妨害する一幕もあった。

 

2019年3月21日 第12号

 アルバータ州レイチェル・ノッテリー州首相は19日、州議会議員選挙を4月16日に実施すると発表した。

 ジェイソン・ケニー党首の連合進歩保守党(UCP)と一騎打ちとなる選挙は、全国の注目を浴びている。

 石油・ガスを中心とする天然資源産業を主要産業とするアルバータ州は、2014年の原油価格急落以降、経済的に厳しい状況が続いている。現在の新民主党(NDP)政権はそんな中で2015年、それまで44年続いていた保守系政権を打ち破って政権奪取に成功した。

 ノッテリー州首相は、それまでの保守党政権との違いを示すため、環境対策に力を入れたり、自由党政権との蜜月ぶりを示したりと、順調な政権運営を続けていた。

 しかし、2016年にジャスティン・トルドー首相が承認したトランスマウンテン・パイプライン拡張工事計画が、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州で新しく発足したNDP政権によって2018年1月に阻止されると、それまでの順調な流れは一気に変わった。

 アルバータ州政権は連邦政府と一緒にBC州政権に圧力をかけたが、2018年8月にはBC州最高裁判所が、環境対策と先住民への配慮が不十分と拡張工事を差し止めた。同年5月には連邦政府が同パイプラインを45億ドルで買収したが、工事は一歩も進まないまま現在に至っている。その間に、野党は保守系2党が統合しUCPを結成。党首に元連邦保守党政権閣僚のケニー氏が就任して、野党の勢いが増している。

 今回の選挙の争点の一つは、このトランスマウンテン・パイプライン。石油産業の復活が経済の復活と信じるアルバータ州民にとって、同パイプライン完成を約束することが票につながる。理由はこれまでアメリカ一辺倒の輸出だったアルバータ州オイルサンドをアメリカ以外の市場、主にアジアに輸出するための最短手段であり、それによりオイルサンド価格も適正化されるとアルバータ州議員たちは主張している。

 支持率ではUCPがリードしているが、最近になってUCPに選挙不正疑惑が持ち上がっている。投開票まで1カ月を切って、ここからNDPがどこまで巻き返せるか。野党が勝てば、炭素税などに強烈に反対しているため、連邦政府にも大きな影響があるとみられている。

 

2019年3月21日 第12号

 ブリティッシュ・コロンビア(BC)州バンクーバー市のバンクーバー港がある湾で、2隻のタンカーが衝突していたことが17日分かった。

 カナダ運輸省によると、MVカラボス・ハーモニーの電源が切れ、MVパン・アカシアに衝突したという。両船とも衝突の損傷が大きく修理が完了するまでバンクーバー沖に停泊することを余儀なくされると発表している。

 事故の原因などはカナダ運輸安全委員会が調査中だが、現在のところけが人などはなく、衝突による海洋汚染や市民生活への影響はないと発表している。

 MVカラボス・ハーモニーはマーシャル諸島船籍のばら積み貨物船で、MVパン・アカシアはパナマ船籍のコンテナ船。積荷内容も調査中としている。

 

2019年3月21日 第12号

 オンタリオ州トロント市内にある地方空港で、トラブルに見舞われた小型飛行機が空港近くを通る道路を横切る形で、不時着した。道路を横切る際には高度がほぼゼロで、傾いた機体の片方の主翼はすでに路面をこすっていた。またこの状況は、走行中の自動車のドライブレコーダーが記録していた。その映像には、車の直前を傾きながら横切る飛行機の姿が画面いっぱいに映っており、ほんの一瞬のずれで大事故になっていた可能性がある。

 不時着した飛行機は、アメリカの小型飛行機メーカー、シーラスが製造したSR20型。当時は女性訓練生と飛行教官が乗り、この空港(ボタンビル空港)の滑走路を利用して離着陸の訓練を繰り返していた。

 飛行機が横切ったのは、空港北側を南北に通る16番アベニュー。そのすぐ西には、南北方向に高速404号線が走っている。飛行機が付近を走行中の車と衝突しなかったことは奇跡だと、同地区を管轄するヨーク地区警察のデーブ・ミッチェル巡査部長は取材に語っている。

 飛行機は滑走路から離陸したものの、思うように上昇できなかったたという。道路を横切った飛行機はそのまま道路わきの空き地に不時着、機体の原型はとどめたものの大きなダメージを受けた。なお搭乗していた2人に大きなけがはなかった。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。