2019年4月4日 第14号
連邦政府は、独自の環境対策を導入していない4州に対して連邦政府が設定している炭素税の導入を4月1日から実施した。
自由党政権は2015年に政権を取って以降、環境対策強化を公約に掲げ、その一環として炭素税導入を約束していた。まずは各州が独自に連邦政府の設定している炭素税、もしくは同等の環境対策を設定し実施するよう州政府に要請。実施しない州は連邦政府の炭素税を2019年4月1日から強制的に実施すると発表していた。
この日実施された州は、サスカチワン、マニトバ、オンタリオ、ニューブランズウィック。1トン当たり20ドルの炭素税が導入された。
連邦炭素税は正確には今年1月1日からこれら4州へ実施が開始されたが、企業に限定されていた。今回は全ての化石燃料が対象となる。そのため、ガソリン価格や暖房費など市民生活に直結する。ガソリンには1リットル当たり4・4セント、天然ガスは1立方メール当たり約4セントが炭素税として加算され、プロパンガス、ブタンガス、航空機用燃料にも対象となる。
一方で同4州の州民には年間128ドル以上がタックスリターンで連邦政府から返金される。返金額は家族構成や州によって異なる。連邦政府は、徴収した炭素税は全て州民に還元する税収中立を強調し、直接返金するほか、環境対策に充てられると主張している。
4州の中でジャスティン・トルドー首相が炭素税導入を主張していた当初から反対だったサスカチワン州は、今回も炭素税は州民に負担を強いるだけで実質的に温室効果ガスの排出量を削減する効果はないと批判している。
オンタリオ州は前自由党政権時代にはキャップ&トレード制度を導入した対策を実施していたが、昨年選挙に大勝した炭素税に反対の進歩保守党政権が同制度を破棄。その後も独自の対策を実施せず、連邦制度の導入対象となった。オンタリオ州ダグ・フォード州首相は、炭素税は雇用を減らすだけの税金で全ての価格を上昇させると反対の主張を繰り返している。
トルドー首相は、無料で大気を汚染してもいいという時代は終わった、これからは大気汚染にはその代償が支払われなければならないと語り、環境対策における炭素税の正当性を主張している。
連邦炭素税は、今年1トンにつき20ドル、毎年10ドル加算され、2022年には1トンにつき50ドルが課税される。
カナダはフランス・パリで2017年に開催された国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議で掲げた目標「パリ協定」で2030年までに2005年比で30パーセントの温室効果ガス削減を目指すとしている。また同会議では気温上昇を平均2度以下に抑えることで合意し、目標を1・5度以下とした。
しかし、4月1日に環境省が発表したデータによると、カナダは世界の国々に比べて2倍の速さで気温が上昇しているという。このままでいけば排出量が最も抑えられた政策が成功した場合には1・8度、排出量削減に失敗した場合は6・3度上昇するとの今世紀末までのシナリオを発表した。
カナダで最も早くに炭素税を導入したのはブリティッシュ・コロンビア州で2008年。連邦政府に先駆けて導入。北米で最初の導入となった。ケベック州ではキャップ&トレード制度を導入。アルバータ州でも2016年から炭素税を導入している。これらの州では今回の連邦炭素税導入は適用されない。そのため政府からの返金もなく、早くから環境対策をしている州に対する連邦政府の対策にも批判の声が上がっている。
2019年4月4日 第14号
ジャスティン・トルドー首相は4月2日、ジョディー・ウィルソンレイボールド前復員軍人大臣兼国防副大臣とジェーン・フィルポット予算庁長官兼デジタル政府大臣を除名処分とすることを決定したと発表した。
2人の元閣僚は、今年2月以来自由党政権を揺るがしているケベック州にあるSNCラバラン社の救済スキャンダルで、トルドー首相とその側近の行動を批判していた。
SNCスキャンダルは、同社の贈賄に関する裁判を司法取引で不起訴とするようトルドー首相をはじめ首相事務所関係者が当時法務大臣で司法長官だったウィルソンレイボールド議員に働きかけをしていた問題。表向きは同社が起訴されればケベック州にとって多大な雇用損失となるとしていたが、10月の総選挙で自由党が政権を維持するにはケベック州での得票は不可欠との政治的な理由が背後にあったことが明らかになり問題となった。
この件については下院司法委員会でウィルソンレイボールド前司法長官やトルドー首相の前第一個人秘書官ジェラルド・バッツ氏、枢密院書記長官マイケル・ワーニック氏が証言した。しかしその証言内容に食い違いがあったため、ワーニック氏は2度証言する機会を与えられたが、ウィルソンレイボールド前司法長官には2度目の機会が与えられず、司法委員会はこの件について幕を引いた。
しかし3月29日に前司法長官が同委員会に提出した詳細な証拠書類とワーニック氏との会話を録音した音声が公開されると、自由党内では閣僚が無断で関係者との会話を録音するのは不適切、そのような同僚を信じて一緒に選挙を戦えないとの不満が噴出し、トルドー首相による除名処分となった。
フィルポット前予算庁長官は、この件が明るみに出た当初からウィルソンレイボールド前司法長官を援護し、この件に関するトルドー首相の対応を不信に感じると予算庁長官を辞職した。
トルドー首相と自由党は除名処分でこの問題に区切りを付け、選挙戦モードに入りたいとの思惑がある。この件でトルドー首相と自由党への支持率が急降下し、現在の世論調査では保守党に首位の座を明け渡している。
しかし、野党はこれでトルドー首相と自由党への追及を緩める気配はなく、ウィルソンレイボールド前司法長官も、トルドー首相から除名を告げられたと明かした自身のツイートで、「まだ明らかにすることがある」と表明するなど、この一件は長引く様相を呈している。
2019年4月4日 第14号
ブリティッシュ・コロンビア(BC)州ビクトリア市にある州議事堂で女性の服装について議論が巻き起こった。
発端は先週、議事堂内で袖のない服装で仕事をしていた女性ジャーナリストや新民主党(NDP)スタッフに議事堂職員が腕を覆うよう規則で決められていると注意したことだった。
この話を聞いた他の女性たちが、腕を出した服装で議事堂に出勤した写真をソーシャルメディアに掲載。時代遅れの女性蔑視行為だと抗議した。
これを受け4月1日、BC州議会議長ダレル・プレカス氏が、州議事堂での服装規制を見直すよう調査を指示。調査が終了するまで、議員、政府・党の職員、メディアを含む議事堂で仕事をする全員が、職場にふさわしい服装を心がけるようにとの声明を出し、女性については職場にふさわしい服装の幅が広く「袖のない服装も含まれる」との認識を示した。
今回の件でNDP政権キャロル・ジェイムズ財務相は、議長の対応を歓迎。「ここで働く人々は自分たちの環境をわきまえた人たちであり、いちいち服装をチェックされる必要はないでしょう」と語った。
プレカス議長は、州議事堂はこれまで男性の職場との意識が続いていたとの認識を示し、今回の件はこうした不均衡な歴史的事実を是正する機会となると声明で発表している。
服装規定が変更されれば1980年以来となる。
2019年4月4日 第14号
ケベック州で3月28日、宗教的なシンボルの着用を禁止する法案が議会に提出された。可決すれば、公的機関に従事する職員が公務に就いている時間に限り、宗教的シンボルとみなされる服装が禁止されることになる。
宗教的シンボルには、イスラム教のニカブ、ヒジャブ、シーク教のターバン、ユダヤ教のキッパ(男性が被る小さな帽子)や、キリスト教の十字架などが含まれる。
州政府機関で働く職員、州立学校の校長、教師、弁護士、裁判官や、銃器を携帯している警察官、裁判所の警備員などが対象となる。ただし、既得権者除外条項の適用により、法律が施行される以前からその職に就いていた者については免除される。
ケベック州ではイスラム教の女性が顔全体を覆うニカブと呼ばれる服装に対して、これまでもさまざまな法案でニカブ着用を制限する方法を模索してきた経緯がある。前自由党政権からその傾向はあったが、昨年誕生した保守系CAQ政権はこれを公約とし、過半数で選挙に勝利した。
CAQフランソワ・レガルト州首相は、今回の法案を「我々の価値とその重要性を示したものになった」と主張した。 同州首相は、法案に多くの州民が支持するための試みとして州議事堂の議長席の頭上に設置されている十字架像を取り外すことを約束している。この十字架像は1936年に設置されて以降、外されたことはないという。
一方で、各界から非難する声が相次いでいる。ジャスティン・トルドー州首相は同日、「現代の自由社会で市民が宗教によって差別される法案を合法化することがまかり通ることが信じられない」と語った。
自身もシーク教徒としてターバンを着用している連邦新民主党(NDP)ジャグミード・シング党首は、宗教的な差別ということだけではなくこうした職業を目指す子供たちの夢を奪うことになると非難した。
レガルト州首相は、できれば夏までに法案を可決したいと意欲を見せている。
2019年4月4日 第14号
大麻の使用が、子育て中の母親や妊婦に良い影響を与えるという主張を、インターネット上で続けている女性グループがある。
グループ代表のひとりであるカリーン・シールさんは、合法化されたとはいえマリファナ吸飲者に対する否定的な固定観念のため、マリファナを使用している母親たちは、そのことを家族などに知られないように多大な労力を強いられていると主張。そんな呪縛から自らを解き放つために、マリファナ使用についての肯定的な面を世間に啓蒙する目的でフェイスブックのグループ『デ・フルール・マ・シェール(Des fleures ma chéreー私の愛しい花)』を立ち上げた。
「今でも人々は、マリファナ吸飲者はだらだらと、TVの前でピザを食べ続けていると思い込んでいる」と取材に語るシールさん。しかし彼女は大麻を使用しながら家事をこなし、子供たちと遊んでいるし、普段よりも子供に対して辛抱強くなれると話し、大麻が自分をより良い母親、より良い人間にしてくれると主張する。
カナダ保健省は、受動喫煙の危険性から、母親に大麻を使用しないよう勧告している。さらに子供に対する注意力や緊急時のとっさの判断や行動力を鈍らせる危険性にも触れている。
しかしシールさんの主張に賛同し、フェイスブック・グループに参加している女性の数は何百人にも上っている。その中には起業家や精神科医、ファッションモデルのほか写真家など、様々な職業を持つ人もいるという。またケベック州モントリオール市に拠点を置く別のフェイスブック・グループ『聖母マリア(Mother Mary)』は、メンバー5千人を擁するなど、母親や妊婦の大麻使用を肯定的に捉える女性の数は確実に増えている。
シールさんは二人目の子供を身ごもった時、大麻から抽出された、向精神成分が入らないオイル(CBDオイル)を使用した。その前に処方されていたオピオイド鎮痛剤を使用していた時はひどい睡眠障害に悩まされたのだが、このオイルを使うようになってからは、普段と同じように眠ることができたと話している。
しかし『マリファナに関する21の語られない事実』の著者でもある医師のアントニー・カナムガイヤーさんによると、THCと呼ばれる向精神成分は胎盤を通じて胎児に達するため、胎児は母親の摂取量の10〜30パーセントを取り込むことになるという。そのため、妊婦は大麻使用を控えるようアドバイスしているほか、大麻は胎児の中枢神経系や免疫システムの発育に大きな影響を及ぼす可能性があると指摘している。