2019年4月4日 第14号
ジャスティン・トルドー首相は4月2日、ジョディー・ウィルソンレイボールド前復員軍人大臣兼国防副大臣とジェーン・フィルポット予算庁長官兼デジタル政府大臣を除名処分とすることを決定したと発表した。
2人の元閣僚は、今年2月以来自由党政権を揺るがしているケベック州にあるSNCラバラン社の救済スキャンダルで、トルドー首相とその側近の行動を批判していた。
SNCスキャンダルは、同社の贈賄に関する裁判を司法取引で不起訴とするようトルドー首相をはじめ首相事務所関係者が当時法務大臣で司法長官だったウィルソンレイボールド議員に働きかけをしていた問題。表向きは同社が起訴されればケベック州にとって多大な雇用損失となるとしていたが、10月の総選挙で自由党が政権を維持するにはケベック州での得票は不可欠との政治的な理由が背後にあったことが明らかになり問題となった。
この件については下院司法委員会でウィルソンレイボールド前司法長官やトルドー首相の前第一個人秘書官ジェラルド・バッツ氏、枢密院書記長官マイケル・ワーニック氏が証言した。しかしその証言内容に食い違いがあったため、ワーニック氏は2度証言する機会を与えられたが、ウィルソンレイボールド前司法長官には2度目の機会が与えられず、司法委員会はこの件について幕を引いた。
しかし3月29日に前司法長官が同委員会に提出した詳細な証拠書類とワーニック氏との会話を録音した音声が公開されると、自由党内では閣僚が無断で関係者との会話を録音するのは不適切、そのような同僚を信じて一緒に選挙を戦えないとの不満が噴出し、トルドー首相による除名処分となった。
フィルポット前予算庁長官は、この件が明るみに出た当初からウィルソンレイボールド前司法長官を援護し、この件に関するトルドー首相の対応を不信に感じると予算庁長官を辞職した。
トルドー首相と自由党は除名処分でこの問題に区切りを付け、選挙戦モードに入りたいとの思惑がある。この件でトルドー首相と自由党への支持率が急降下し、現在の世論調査では保守党に首位の座を明け渡している。
しかし、野党はこれでトルドー首相と自由党への追及を緩める気配はなく、ウィルソンレイボールド前司法長官も、トルドー首相から除名を告げられたと明かした自身のツイートで、「まだ明らかにすることがある」と表明するなど、この一件は長引く様相を呈している。