2019年4月4日 第14号
オンタリオ州トロント大学スカボローキャンパスの学生代表に選ばれた女生徒が、その出自を理由に、中国人留学生から組織的な攻撃を受けている。
この女性は、チベット生まれでカナダ国籍を有するチェミ・ラモさん(22歳)。学生代表に選ばれた直後から、中国人による嫌がらせや脅迫のメッセージが送り続けられている。その中には「中国がお前の親だ。覚えておけ」であるとか、「お前がこのキャンパスの代表を続けられないようにしてやる」などというものがあった。
また中国語の掲示板サイト微信(We Chat)上では、ラダー・ストリートという名の投稿者が「トロント大学の学生自治会が、チベット独立分子に乗っ取られる」と投稿、中国人留学生らにラモさんの代表就任を阻止するよう呼び掛けている。またこの投稿者は、何百万ドルという、中国人学生がこの大学に毎年もたらしているお金で、ラモさんが利益を得るようなことがあってはならないとも訴えている。
また、ラモさんの辞退を求める署名活動も始められており、1万人以上の署名が集まっているという。
こうした状況についてラモさんは、コミュニティのリーダーとして、自分が情熱をもって接していこうとしている仲間や学生の中から、自分を動揺させるような動きが起こっていることを見るのは悲しいと取材に語っている。さらにこのことをトロント大学に相談、自治会はラモさんの身の安全のためとして、彼女のオフィスを閉鎖することとした。
またラモさんは、このような大規模な攻撃の背景には、どのような力が働いているのかを気にしている。この点については、40年間カナダ安全情報局(Canadian Security Intelligence Service ー CSIS)に勤めていた、元アジア太平洋地域担当の上級職員マイケル・ジュノー=カツヤさんがコメントしている。ジュノー=カツヤさんは、ラモさんがチベット解放運動のグループと積極的に関わっていることを指摘する。確固たる証拠を得ているわけではないが、このことによって、中国当局の目には彼女が危険人物として映ったのだろうと語っている。
また大学という場所は知的財産を盗み取ったり、政治的影響力を広めたりするのには格好の場所であり、ラモさんへの抗議行動の背景には中国政府の力が働いているのではないかというメディアの問いに対して「まず間違いないだろう」と答えている。
ラモさんは大学側が正式な調査を開始するなど、積極的に行動を起こすことを願っている。なおオタワ市の中国大使館は、この件についてのメディアからの質問には応対していない。