2019年4月11日 第15号

 連邦政府キャサリン・マッケナ環境・気候変動相は8日、カナダ最大のスーパーマーケットチェーン店ロブロウに環境対策費1200万ドルを支援すると発表した。全国370店舗に温室効果ガス排出量の低い冷蔵システムを取り入れるために費やす3600万ドルの一部に充てられるという。この冷蔵システム導入により、同チェーン店の排出量を23パーセント削減できると政府は説明している。

 しかしソーシャルメディアではこの対応に批判の声が上がっている。ロブロウは2018年度の利益が7億5400万ドルという。政府から支援を受ける必要のない大企業に対してわざわざ支援金を与える有効性がどこにあるのかと政府の対応に疑問を投げかけている。

 野党も政府の対応を批判。新民主党(NDP)ジャグミード・シング党首やカナダ国民党マキシーム・ベニエ党首は、「大企業優遇策」と批判している。

 今回の支援は、連邦政府が環境対策の一環として発表している「低炭素経済への挑戦」と称しているプログラムに用意された4億5千万ドルの中から支出されるもので、州政府、市、先住民族、企業、非営利団体などが温室効果ガス排出量を削減するための革新的なプロジェクトに対して支援される。

 ロブロウへの支援に国民から批判の声が上がっていることに対してマッケナ環境相は、このプログラムは対象となる団体や機関なら誰でもが申請でき平等にチャンスがあると説明している。

 

2019年4月11日 第15号

 サスカチワン州フンボルトのジュニア・ホッケーチームのメンバーが乗ったバスが、一時停止を怠ったセミ・トレーラートラックと交差点で衝突、16人が死亡13人がけがを負った事故から、6日で1年がたった。

 先週末にはカナダ各地で追悼イベントが開催されたが、事故で重体となった翌日に臓器提供を行った選手ローガン・ブレさんの追悼と臓器移植の啓もうのため、7日が『グリーン・シャツ・デー』と定められ、多くの人が緑色のシャツを着た。

 グリーン・シャツ・デーの公式ツイッターは7日、「2018年4月7日、フンボルト・ブロンコスのローガン・ブレさんは6人の命を救い、カナダ人に臓器提供登録を促した」とツイート。さらに緑のシャツを着て、臓器提供登録を行うことを呼び掛けていた。また多くのフォロワーがこれに応え、緑色のシャツを着た自撮り画像をいくつも投稿していた。

 事後現場から搬送された病院で、回復の見込みはないことを告げられたブレさんの母親の心の中に浮かんだ思いは、息子の臓器を提供することだった。ブレさんは事故が起こる5週間前、21歳の誕生日に臓器提供の登録をしたばかりだった。

 ブレさんの臓器提供によって6人の命が助かったことは事故後間もなく明らかにされ、このことに触発された人々がこぞって臓器提供の登録を行った。その数は20万人を超え『ローガン・ブレ効果』とまで呼ばれた。

 彼が臓器提供に関心を持つようになったのは、彼の人生の指導者でもあったフィットネス・トレーナーのリック・サギットさんが、臓器提供者となったことだった。ブレさんは父親に対し、リックが6人の命を救えるのだったら、自分も6人救えるはずだと語っていたという。父親はいずれ、ブレさんの臓器提供を受けた人々に会いに行くつもりでいる。そのためには1年間は待たなければならない。

 

2019年4月11日 第15号

 カナダ最大の建設会社SNCーラバランの贈賄容疑から端を発したスキャンダルの渦中にいる、ジョディ・ウィルソン=レイボールド氏を支持する落書きが8日、ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー市にある同氏の事務所前の道路に書かれているのが発見された。

 場所は同市ブロードウェイとアルダー通りの交差点近く。赤と白のスプレーによる落書きは、片側3車線の道幅ほぼ全部と歩道を使い『カナダ人はジョディを信じている』、『ジョディに語らせろ』のほか『トルドー(首相)は国家反逆罪』、『カナダを再び偉大に』などと書かれていたが、最も大きく書かれていたのは『BC州を再び最高の沿岸部に(Make B.C. the best coast again)』だった。

 事務所の窓ガラスにも落書きがあったらしいが、こちらはメディアの取材前に消されていた。同日早朝に落書きの通報を受けたバンクーバー市警察は、37歳の男を逮捕した。

 この事件に対しウィルソン=レイボールド氏はツイッターで、彼女への支持を表明してくれることには感謝するが、財物損壊につながるような行動は慎むよう、呼び掛けていた。

 

2019年4月11日 第15号

 ブリティッシュ・コロンビア州南部、内陸部にある人口3万3千人あまりの都市ペンティクトン市議会は2日、鹿の害に悩む市民から出されていた、鹿の間引き案を否決した。

 この要請は、同市南部のスカハ湖に近いフィグエイラス・モービルホーム・パークの住人約55人から出されていた。住民の1人ロバート・カートライトさんは、モービルホーム・パークにわがもの顔で出入りする鹿たちは、庭を荒らしたり排泄物を散らかしたりなど同パークに大きな損害を与えていると、取材に語っている。

 鹿が侵入してくることを止められない以上、その間引きが唯一の解決策であり、また州政府からはそのための補助が受けられるとして、カートライトさんらは昨年11月に市議会議員に話を持ちかけた。

 同市の鹿害対策は害を未然に防ぐことに主眼を置いた啓蒙活動で、捕獲して山奥に戻したり間引きしたりする対策は取られてこなかった。カートライトさんらの要請を受けて市はその可能性を調査したが、結果的には現状維持という採決に落ち着いた。

 その大きな理由は、費用。過去に同市の先住民居住区に出没した鹿を捕獲・移動させる計画の妥当性を評価した時、鹿1頭につき約千ドルの費用がかかることが判明、計画は棄却された。また同じような鹿害に悩むBC州内の他のコミュニティークランブルックやインバーメア、グランドフォークス、キンバリーなどでは、専門スタッフを置き委員会が鹿の頭数把握や年間の間引き数をコントロールするという、大掛かりな鹿対策が取られているが、ペンティクトンの鹿害はこれらのコミュニティの案件に比べはるかに小さい(鹿の数は49頭にすぎない)と判断された。

 この決定に対しカートライトさんらは、49頭というのは何年も前の話であり、自分たちは無視され、まともに取り合ってもらえなかったように感じている。同市のジョン・バシラキ市長は、モービルホーム・パークの住人が抱えるストレスに理解を示し、また鹿が自動車や外で遊ぶ子供らにも危険を及ぼす可能性に触れ、何らかの対策を探ると語っている。

 一方住民らは自分たちの声を届かせるため、鹿の糞を市庁舎に撒くなど、より強硬な手段も辞さないつもりだと、取材に話していた。

 

2019年4月11日 第15号

 ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー島で3月29日、家の裏庭で遊んでいた7歳の子供が、若いクーガーに襲われた。家の中から駆けつけた母親は、噛みついたクーガーの口を素手でこじ開けて、息子を救出した。

 事件が起こったのは、同島南部のカウチン湖のほとりにある、人口3千人弱の町レーク・カウチン。学校から帰ってきたザックリー・ロックハート君は家の裏庭で遊んでいた時、家を囲んでいる背の低いフェンスの外から若いクーガーが彼を睨んでいたのに気付き、とっさに家に向かって駆け出した。

 彼の母親のチェルシー・ロックハートさんはその時家の中にいたが、裏庭の物音に気がつくとすぐさま庭に飛び出した。そこでロックハートさんが目にしたのは、息子を引きずっていこうとするクーガーの姿だった。

 彼女は何の躊躇もなくクーガーに飛びかかった。「母親の本能だった」と語るロックハートさん。息子の頭に食いついたクーガーの口に手を入れ、こじ開け始めた。しかし彼女自身の力はだけでは無理だった。息子を見つめながら頭の中で「なんてこと、目の前で息子は食い殺されるの?」と思った次の瞬間、心の底から神に祈ったというロックハートさん。口の中で祈りを3度唱えた時、クーガーは息子から離れ、 走り去っていった。

 息子の頭頂部には4センチほどの歯型が残ったほか、首と両腕にも怪我を負った。駆けつけた救急隊員は2人を病院へ搬送した。息子は傷口を縫う治療を受けたが、完治する見込みだという。ロックハートさんは事件を知り2人への支援を惜しまないコミュニティの人々に、取材を通じて感謝の意を伝えていた。

 恐怖の体験ではあったが、 ロックハート家はこれを機に子供を家の中だけで遊ばせるような対応はしないと語っている。親が(クーガーの襲撃に)怯えたり不安がったりする対応をすれば、子供たちも同じような態度を取るようになるとロックハートさん。そうではなくて、一般的なクーガーの習性を子供たちによく聞かせ、今回の件は極めてまれなことであり、また何か起こったときには自然保護官がちゃんと対応してくれることを理解させると、語っている。

 現在のところ、ロックハートさんの息子は祖父母の家で療養しているほか、ほかの5人の兄弟も事件の影響は受けていないようだという。

 統計によると、1900年から2018年まででBC州では8人がクーガーによって殺されたほか、94人が怪我を負ったという。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。