2019年4月11日 第15号
ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー島で3月29日、家の裏庭で遊んでいた7歳の子供が、若いクーガーに襲われた。家の中から駆けつけた母親は、噛みついたクーガーの口を素手でこじ開けて、息子を救出した。
事件が起こったのは、同島南部のカウチン湖のほとりにある、人口3千人弱の町レーク・カウチン。学校から帰ってきたザックリー・ロックハート君は家の裏庭で遊んでいた時、家を囲んでいる背の低いフェンスの外から若いクーガーが彼を睨んでいたのに気付き、とっさに家に向かって駆け出した。
彼の母親のチェルシー・ロックハートさんはその時家の中にいたが、裏庭の物音に気がつくとすぐさま庭に飛び出した。そこでロックハートさんが目にしたのは、息子を引きずっていこうとするクーガーの姿だった。
彼女は何の躊躇もなくクーガーに飛びかかった。「母親の本能だった」と語るロックハートさん。息子の頭に食いついたクーガーの口に手を入れ、こじ開け始めた。しかし彼女自身の力はだけでは無理だった。息子を見つめながら頭の中で「なんてこと、目の前で息子は食い殺されるの?」と思った次の瞬間、心の底から神に祈ったというロックハートさん。口の中で祈りを3度唱えた時、クーガーは息子から離れ、 走り去っていった。
息子の頭頂部には4センチほどの歯型が残ったほか、首と両腕にも怪我を負った。駆けつけた救急隊員は2人を病院へ搬送した。息子は傷口を縫う治療を受けたが、完治する見込みだという。ロックハートさんは事件を知り2人への支援を惜しまないコミュニティの人々に、取材を通じて感謝の意を伝えていた。
恐怖の体験ではあったが、 ロックハート家はこれを機に子供を家の中だけで遊ばせるような対応はしないと語っている。親が(クーガーの襲撃に)怯えたり不安がったりする対応をすれば、子供たちも同じような態度を取るようになるとロックハートさん。そうではなくて、一般的なクーガーの習性を子供たちによく聞かせ、今回の件は極めてまれなことであり、また何か起こったときには自然保護官がちゃんと対応してくれることを理解させると、語っている。
現在のところ、ロックハートさんの息子は祖父母の家で療養しているほか、ほかの5人の兄弟も事件の影響は受けていないようだという。
統計によると、1900年から2018年まででBC州では8人がクーガーによって殺されたほか、94人が怪我を負ったという。