2019年4月18日 第16号
約10年間販売され続けてきた乳児用ベビーベッドが、30件以上の死亡事故の末リコールされた。
この製品は、大手玩具メーカー、フィッシャープライスの『ロックンプレイスリーパー』で、2009年に発売されて以来、470万台ほどが販売されてきた。簡単なスタンドの上に揺れる布製の寝台が付き、乳児を寝かしつけるために用いられる。米国消費者製品安全委員会(U.S. Consumer Products Safety Commission ー CPSC)は12日、この製品の使用を直ちに中止し、販売元のフィッシャープライスに連絡を取り返金かクーポン券を求めるよう、消費者に呼び掛けている。
フィッシャープライスとCPSCは、乳児が死亡した具体的な状況については明らかにしていないものの、ベルトで保持していなかった乳児が、寝返りを打ってうつ伏せや横向きになったために死亡したと話している。また米国の消費者団体が発行しているコンシューマー・リポート誌は、死亡事故のいくつかは窒息が原因だったことを突き止めている。
なお、この製品のカナダ国内での区分は『sleeper(就寝用ベッド)』ではなく、保護者が付き添わないまま乳児が寝ることを禁じた『soother(乳児をあやすためのベッド)』となっていると、フィッシャー・プライスは説明している。
またカナダ保健省は2011年、同省と公衆保健局、カナダ小児科学会が出していた、安全な就寝についての勧告を引き合いに出しながら、フィッシャープライスの親会社であるマテル社に対し、この製品に関する懸念を文書で通達していた。
12日にリコールを発表したフィッシャープライスはそのコメントの中で、同社は製品の安全性を守っており、今回のリコールは使用上の注意や安全性に関する警告を守らなかったことによる事故が報告されたために行ったものだと、説明している。
2019年4月18日 第16号
フランス・パリ市中心部の観光名所であるノートルダム大聖堂で現地時間の15日夕方、大規模な火災が発生し特徴的な尖塔や屋根が崩落した。マクロン仏大統領が「恐ろしい悲劇」と形容するなど、パリ市民をはじめフランス国民の間に衝撃が走っている。
このニュースを受けて、ケベック州モントリオール市では15日夜、市庁舎が灯りを消して、大きな被害を受けた大聖堂に対する敬意を捧げた。
バレリー・プランテモントリオール市長はツイッターで「この珠玉の遺産が炎によって破壊されていくのを目の当たりにするのは悲しい」とコメント、自分の思いはパリ市民とフランス国民とともにあると述べていた。
ケベック市民のマリー=イブ・ジャングラさんは休暇でパリに滞在しており、火災が発生する2〜3時間前にボーイフレンドと大聖堂を訪れたばかりだった。「自分のみならずパリっ子、観光客、すべての人がショックを受けている。信じられない」と語っている。
モントリオール市中心部にあるモントリオール・ノートルダム聖堂も15日午後には聖堂の鐘を鳴らしていた。この聖堂のミゲル・カステラノス牧師は、同聖堂の建築に大きな影響を与えたパリの大聖堂を「まれに見る文化的、歴史的かつ宗教的シンボル」と形容、今回の焼損にショックを受けていた。
フランソワ・ルゴーケベック州知事も大聖堂を宝石に喩え、パリ市民と消火活動に当たった消防隊員に思いを寄せているとのコメントを発表した。
2019年4月18日 第16号
オンタリオ州トロント中心部、オンタリオ湖岸を走る高速道路の高架橋の下に、期間限定の超高級レストランが出現した。皮肉なことに、その場所から少し離れた同じ高架下では先月、ホームレスたちのテント村が強制撤去されていた。
場所は通称『ベントウェイ』と呼ばれ公共施設整備計画が進んでいる、ガーディナー・エクスプレスウェイの高架下。ここに出現したレストラン『ディナー・ウィズ・ア・ビュー』は、屋外に置かれたテーブルを個別に覆う、ガラス製の暖房完備のドームの中で食事をとるという、斬新なスタイル。3コースのディナーは、TVの人気料理バトル番組『トップ・シェフ・カナダ』で優勝経験を持つレネー・ロドリゲスさんによるもの。なおその価格は550ドルからとなっている。
その一方で、同じ高架下でホームレスらが暖房もない暮らしを続けてきていたテント村は、トロント市によって3月13日に撤去され、多くのホームレスが行き場を失った。
この状況に対し、貧困問題に取り組む団体、オンタリオ州貧困と闘う連合(Ontario Coalition Against Poverty ー OCAP)が5日、抗議行動を行った。『金持ちを見るディナー(Dinner With A View Of The Rich)』と名付けられた抗議活動に集まったメンバーらは、ドラムやスピーカーなどでできる限りの大きな音を出し、超高級レストランを訪れていた客のディナーを妨害しようとしていた。抗議を企画したOCAPのヨギ・アチャリヤさんは取材に対し、自分たちの抗議はトロント市とジョン・トーリー市長、そして彼の取り巻きに向けたものだと明言している。OCAPは、ホームレスが高架下のテントで寝る必要がなくなるよう、市が十分なシェルターを用意することと、収入に応じた賃貸料で借りられるアパート建設を求めている。
『ディナー・ウィズ・ア・ビュー』は5月末までの期間限定のプロジェクト。同レストランはOCAPの抗議に対し、自分たちもテント村を追い出されたホームレスたちに同情をしていると述べている。その上で、レストランがつくられた場所はテント村から2キロメートル近くも離れており、レストランの土地確保のためにテント村が撤去されたような事実はないと指摘している。さらにこの場所を選んだのは、テント村撤去が行われる1カ月以上も前のことだったとも、取材に説明している。また、土地とレストランはそれぞれ別のオーガナイザーによって企画・運営されており、またトロント市のエージェントでもないと話している。そしてこのレストランのような企画が、ベントウェイの施設整備プロジェクトの資金集めにつながっていると説明、そのおかげでこの場所で年間を通じて低予算のイベントが実現できていると語っている。
レストランは抗議当日には警察に出動を要請、ガラスドーム群の周りには、ディナー客らから抗議活動が見えないよう周囲に目隠し用のフェンスを設置していた。
2019年4月18日 第16号
アフリカ・ウガンダの少年少女合唱団が13日、カナダでのコンサートツアー中に車上狙いに遭い、現金などを盗まれた。
8歳から15歳の8人で構成されるソウティ・アフリカ少年少女合唱団(Sawuti African Children's Choir)は、アフリカで学校へ行けない子供のための学費を募る6カ月のツアーのため、この1月に同国の首都カンパラを出発、カナダを訪れていた。
13日午後には、ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー市中心部のショッピングセンターでコンサートを開いていた。しかしその間、アボット通りとウェスト・ペンダー通りの交差点付近に止めてあった同合唱団のバンが、車上荒らしに遭ってしまった。
ツアーのスポンサーとなっている、マニトバ州ウィニペグにあるキリスト教系アフリカ支援団体セブン・ウェルズ・ミニストリーズの代表ダグ・サドラーさんよると、被害は寄付で集まった現金約8千ドルが入ったブリーフケースのほか、ノートパソコンやiPadなどが入ったカバン2つ。ノートパソコンには合唱団が公演で使用する音楽ファイルなどコンサートに必要な情報が入っていた。またツアーの付添人を務めるクリストファー・スパークさん個人のノートパソコンや、彼と彼の妻アビガイルさんのパスポートもその中に含まれていた。
「これからどうしたらいいのか、途方に暮れている」と、事件直後の取材に語るスパークさん。8千ドルあれば、ウガンダでは14人の子供を1年間学校に通わすことができると話し、ここに来るまでの間は、子供たちにとってもカナダの印象は良いものだったのにと、肩を落とすスパークさん。
しかし彼らは週末、さらに2つの公演をバンクーバーで行った後、次の公演場所である同州カムループスとアルバータ州エドモントンに向かった。「合唱団は逆境にめげず頑張っている。彼らはまるで軍隊のようだ」と、サドラーさんは語っている。またメディアを通じ、ツアーを成功させるため合唱団への寄付を呼び掛けていた。(寄付のサイトは『seven』『wells』『kindful』で検索。)
2019年4月11日 第15号
ジャスティン・トルドー首相と自由党の支持率が下落し続けている。世論調査会社ナノスが9日に発表した報告によると、自由党の支持率は32・8パーセントで1週間前の34・6パーセントから下落。4週間前は34・2パーセント、3カ月前は38・7パーセントと下落を続けている。
一方、野党第一党保守党の支持率は34・9パーセントで自由党をややリード。1週間前は35・1パーセント、4週間前は34・7パーセント、3カ月前は33・3パーセントで、1カ月前に自由党を抜いている。
新民主党(NDP)は自由党支持が下落しているにもかかわらず相変わらず伸び悩み、支持率は16・6パーセント、1週間前と変わらず、4週間前は15・5パーセント、3カ月前は16・7パーセントだった。グリーン党は9・5パーセント、1週間前は4・6パーセント、4週間前は9・1パーセント、3カ月前は6・0パーセントで、徐々に支持率を伸ばしている。ケベック連合党は4・0パーセントでほとんど変わっていない。昨年誕生したカナダ国民党は0・5パーセントだった。
首相にふさしい党首はとの回答では、トルドー首相と答えたのは30・7パーセントで最も多く、次いで保守党アンドリュー・シェア党首27・2パーセント、NDPジャグミード・シング党首8・4パーセント、グリーン党エリザベス・メイ党首7・6パーセント。カナダ国民党マキシーム・ベニエ党首は2・3パーセントだった。トルドー首相は3カ月前には39・3パーセントだったが急落している。一方でシェア党首は3カ月前の23・5パーセントから約4パーセント上昇している。
3月28日世論会社イプソスが発表した結果では、格差はさらに広がっている。自由党を支持するとしたのは30パーセントで、保守党の40パーセントに10パーセントの差をつけられている。NDPは21パーセント。地域別ではその差はさらに大きく、オンタリオ州では保守党が40パーセントだったのに対し、自由党は28パーセントでNDPと並んでいる。この傾向はブリティッシュ・コロンビア州でもみられた。自由党が唯一、圧倒的にリードしているのはケベック州。アルバータ州では保守党が支持率で圧倒している。
トルドー自由党は2015年10月の総選挙で圧勝し、政権発足直後は閣僚を男女同数にしたり、環境問題への積極的な取り組みを表明したり、広く移民・難民を受け入れる姿勢を見せたりと前保守党政権とは異なった政策で支持率も高かった。しかし外交政策やトランスマウンテンパイプライン拡張工事計画問題などで綻びが現れ始めると、支持率は徐々に下降。さらに炭素税の導入、今年2月に発覚したSNCラバランスキャンダルでトルドー首相本人と自由党への支持は大きく揺らいでいる。
現在の支持率では僅差で保守党が政権を取る可能性が高い。総選挙は今年10月に予定されている。