2019年4月11日 第15号

 ブリティッシュ・コロンビア州リッチモンド市は、電力会社BCハイドロが行った鉄塔建設工事による地盤沈下で、同市南側を流れるフレーザー川の堤防に生じた損害を賠償するよう、BC州最高裁判所に訴えを起こした。

 訴状によると2017年、電力会社はフレーザー川を横断する送電線設置のために、同市ライス・ミル・ロード南端にあるピースアーチ排水ポンプ場近くで、120メートルの高さの鉄塔建設の準備となる地盤改良工事を開始した。

 この場所はジョージ・マッセー・トンネルのリッチモンド側入り口の隣で、当時はこの老朽化したトンネルの代わりとなる橋の建設が計画されていた。トンネル内にはBCハイドロの送電線も通っており、トンネルが廃止された場合には、その送電線を鉄塔でフレーザー川を横断させる必要があった。

 工事に先立ち電力会社が行った調査の報告では、地盤沈下は最大でも15ミリだとされていた。地盤改良工事では地盤の密度をあげるため、水と空気を地中に注入してから、30メートルの深さまで石を圧入していった。しかし市の観測によれば、工事が開始された2017年7月の終わりには、すでに25から40ミリの地盤沈下が確認されていた。その後も沈下は続き、8月3日には20から60ミリまで進んだ。

 市は電力会社に対し、地盤沈下がこれ以上続けば堤防に構造的ダメージが生じる危険性があると警告を伝えたが工事は続けられ、それから1週間もたたないうちに沈下量は75ミリに達した。この段階で市の要請を受け、電力会社は工事を一時中断した。さらに市は専門家の指導に基づく緊急対策工事を行い、その費用を電力会社に請求すると通告した。市はまた、工事がこれ以上堤防に被害を及ぼさないためのプランを、工事再開前に提出するよう要求した。

 しかし9月5日には、電力会社はプランの提出も事前の通達もしないまま工事を再開した。工事はその後1週間続いたが、新民主党政権が橋建設計画そのものを破棄したのを受け、中止された。

 10月には、洪水シーズンに備え市は堤防の修復工事を行わなければならないことを電力会社に伝え、その費用明細を提示するとともに支払いを求めた。

 しかし電力会社は支払いを拒否、市は電力会社の過失により市に損失が生じたとして、訴えを起こすこととなった。

 

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