2019年3月14日 第11号

 連邦政府マルク・ガルノー運輸相は13日、同日からカナダ航空領域圏でのボーイング737MAX8型系旅客機の飛行を全面停止すると発表した。カナダの各航空会社は対応に追われることになる。

 アフリカ東部エチオピアの首都アディスアベバ郊外で10日に起きたエチオピア航空墜落事故を受け、墜落した旅客機アメリカのボーイング737MAX8型の運航を停止する動きが広がっている。

 早々と同型機の運航を停止した同型機保有数が最も多い中国をはじめ、イギリス、ドイツ、フランスなどのヨーロッパ諸国が運航停止を発表。12日午後(ロンドン時間)にはヨーロッパ32カ国が加盟する欧州航空安全局(EASA)がヨーロッパでの運航停止を指示した。マレーシア、オーストラリア、シンガポール、5カ月前に同型機の事故があったインドネシアも運航停止を表明している。その他、各運航会社でも独自に停止措置を発表している。

 しかしカナダでは事故発生直後、ガルノー運輸相が情報不足として情報収集をして検討するが運航停止は現時点ではないと記者団に語っていた。それが12日には専門家との話し合いに臨むに当たり、「全ての可能性を考慮する」と運航停止も視野にあることを暗に示した。

 10日のエチオピア航空墜落事故では、乗客・乗員157人が死亡。カナダ人が18人含まれていた。同型機は昨年10月にもライオンエアがインドネシアで墜落、189人が死亡している。

 カナダの航空会社ではサンウィング航空が12日に保有する4機のボーイング737MAX8型機の運航を一時停止すると発表した。サンウィングは安全性の問題ではなく、運航停止を発表している地域での飛行制限などが理由と説明した。 エアカナダ、ウエストジェットは、12日の時点で同型機の運航を停止する予定はないと発表していたが、今回の運輸省の決定で全ての同型機の使用を停止することになる。すでにヨーロッパをはじめとする各国が停止を決定したことで、それらの都市へ運航する便の欠航を余儀なくされている。

 カナダの航空会社は、エアカナダが24機、ウエストジェットが13機、サンウィングが4機、ボーイング737MAX8型を保有している。

 報道では日本の航空会社では同型機は使用されていないと伝えている。

 

2019年3月14日 第11号

 アルバータ州中部、カルガリー市とエドモントン市のちょうど中間あたりにあるシルバン湖と、その東側にある人口10万人ほどの街レッドディアで4日早朝、マグニチュード4・6の地震が発生した。

 この地震の原因は、地中に高圧水を注入して地層に亀裂を生じさせ、原油を採掘するフラッキング(水圧破砕法)とみられている。同州の採掘事業を監督する政府機関アルバータ州エネルギー監督局は、作業を行っていたベスタ・エネルギー社に対し、付近の住民の安全と環境保全のため、採掘作業を中止するよう命令した。

 この地震による人的被害はなかったものの、シルバン湖畔のコミュニティの大部分が地震直後から停電に見舞われた。

 

2019年3月14日 第11号

 アフリカ北東部のエチオピアで10日、離陸間もない旅客機が墜落し乗客乗員合わせて157人全員が死亡した。

 墜落したのは、同国首都のアディスアベバ空港から隣国ケニアのナイロビに向かう予定だった、エチオピア航空302便。

 エチオピアとケニアの周りにはソマリア、南スーダンなど政情不安から重点的な人道支援が必要な国があり、アディスアベバとナイロビはそのような支援団体や、気候変動や飢餓対策などを行う国際機関がアフリカで活動する際のハブ空港となっている。

 このため、墜落した飛行機には旅行者のほかに国連職員など35カ国の人が搭乗しており、カナダ人も18人が犠牲となった。搭乗数が最も多かったのはケニアの32人で、その他はエチオピア9人、中国、イタリア、米国が8人、フランスと英国が7人、エジプト6人、ドイツ5人、インド、スロバキア、スウェーデンが4人、オーストリアとロシアが3人、イスラエル、モロッコ、ポーランド、スペインが2人、またベルギー、ジプチ、インドネシア、アイルランド、モザンビーク、ネパール、ナイジェリア、ノルウェー、ルワンダ、サウジアラビア、セルビア、ソマリア、スーダン、トーゴ、ウガンダ、イエメンがそれぞれ1人ということが判明している。

 墜落した飛行機はアディスアベバ空港を離陸後間もなく、問題が生じたため管制塔に対し緊急事態を宣言し引き返そうとした。離陸から墜落までのわずか6分間に何が起こったかについては、エチオピアの当局が調査に当たっているほか、ボーイング社も技術者を現地に派遣した。事故翌日には、飛行状況やコックピット内での会話が記録されたフライトレコーダーとボイスレコーダが回収された。

 墜落した機体は、エチオピア航空に昨年の11月に就航したばかりの最新鋭機、ボーイング737型MAX8。メディアの取材に応じていた航空評論家のひとりは、墜落現場を上空から撮影した画像から見て、飛行機はほぼ垂直に地面に激突したようだと指摘している。

 また昨年10月29日には、同型機のライオン航空610便がインドネシアのジャカルタ空港から離陸後間もなく、やはり異常な急降下の末に沖合のジャワ海に墜落している。2つの事故が起きた状況は似ているが、同じような原因で墜落したのかどうかは早急に結論づけるべきでないと、専門家は述べている。

 ボーイング737型機は1967年に初飛行して以来、世界の航空会社で採用され続け1万機以上が生産されているベストセラー機。機体の設計は50年以上前のものだが、改良が加えられる度に大幅なコンピューター化が図られ、飛行中の異常な状況をいち早く検出し、自動で安全な状態に戻すなど、パイロットのワークロード軽減と安全性向上が図られている。その反面、コンピューターへ情報を伝える各種センサーが異常を起こした場合など、コンピューターが現実とは異なる状況判断をして、飛行機を逆に不安定な状況にさせる可能性もある。

 昨年のライオン航空の事故では、機体の上向き角度や飛行速度のセンサー異常から、コンピューターが異常事態と誤判断、極端な機首下げ操作を行ったのではないかとみられている。コンピューターがパイロットの意図に反する危機回避操作を行った場合、パイロットは昔の飛行機のように力づくで操縦桿を操作してもこれを修正できず、コンピューターを無効化する適切な手順を瞬時に行う必要がある。またコンピューターで高度に自動化された航空機の導入にあたっては、パイロットに対し、こうしたシステムに対応する新しい訓練が求められる。

 

2019年3月14日 第11号

 ジャスティン・トルドー首相は7日、SNCラバラン社スキャンダルの一部を認めるも、自身や首相事務所の対応に違法性はないという認識を示した。

 スキャンダルが発覚して約1カ月。これまで別件での記者会見では見解を示してきたものの、この件についての公式記者会見はこれが初めて。首相は、対応としてまずい部分があり、前法務相との見解の違いがあったが、違法性はなく、間違ったことはしていないと語り、謝罪の言葉はなかった。

 前日には前第一個人秘書官ジェラルド・バッツ氏が下院司法委員会で証言。2月27日に同委員会で証言したジョディー・ウィルソンレイボールド前法務相兼司法長官の発言内容に食い違いあることを主張した。

 注目されたのは、バッツ氏がSNCラバランの司法取引の件についてウィルソンレイボールド前法務相が司法長官として応じないという決定をしたと聞いたのは2月27日の委員会での証言で始めてだったと証言したこと。雇用や経済的な影響を踏まえてまだ前司法長官が意見を聞く機会が必要と思っていたため、説得していたと語った。

 もう一点、注目されたのは、ウィルソンレイボールド前法務相が内閣改造で法務相から復員軍人大臣兼国防副大臣へと異動となった経緯を語ったこと。前法務相が同委員会で証言をする条件として、SNCラバラン案件以外については証言してしてはいけないという制限があったにもかかわらず、バッツ氏は内閣改造の経緯や前法相が復員軍人相について辞任するまでの経緯を自由に発言できたことが、不公平な印象を国民に与えた。

 さらに、司法取引でSNCラバラン社の賄賂事件を不起訴にする理由をバッツ氏は9千人の雇用を守るためと主張したが、9千人の雇用が守られるか確固たる根拠がなかったことも明らかになった。

 野党は、バッツ氏が制限なく自由に証言できたのに対して、ウィルソンレイボールド前法務相に制限があったことは不公平として、もう一度前法務相の出席を要請した。13日に同委員会でウィルソンレイボールド前法務相の再度証言を認めるか話し合われる。前法務相は再度の出席に前向きな発言をしている。

 この件については、トルドー首相が記者会見で一連の前法相への圧力に対して謝罪すれば、今後に引きずることはなかったと多くの専門家が対応の甘さを批判している。

 SNCラバラン社は、ケベック州モントリオールに本社を置くカナダの大手建設会社。2001年から11年にかけてリビア政権に政府事業受注のために4億5千万ドルの賄賂を贈ったとして2015年にカナダで訴追されている。

 11日には経済協力開発機構(OECD)が今回の件に関して懸念を示した。OECD加盟国は、外国公務員への贈賄を抑止・防止するためにOECDが1999年に発効した「OECD贈賄防止条約」に署名している。カナダも加盟国であり、SNCラバランがリビア高官への贈賄罪で問われる裁判にトルドー首相事務所が介入している疑いを非常に懸念していると声明を発表。今後の司法委員会などの動向を注視していると声明を発表している。

 

2019年3月14日 第11号

 新民主党(NDP)ジャグミード・シング党首は12日、ケベック州モントリオールでケベック州民との「関係再構築」に向けてケベックに特化した選挙戦を展開することを発表、副首相に任命した同党ケベック州選出アレキサンダー・ボレリス議員がその役目を担うと発表した。

 NDPは支持率の低下や資金調達に苦戦するなど、今年10月の選挙に向け厳しい状況が続いている。さらに、これまで党を支えてきたベテラン議員が相次いで引退を発表。シング党首の下で新たな候補者探しからしなければならない状況で、最も厳しいのがケベック州だ。

 そのケベック州での挽回を目指して、今回ボレリス議員をケベック州特命議員に任命しケベック州民の関心の高い事項に特化した選挙戦対策を推進していくという。その中には候補者選びも含まれている。

 カナダではケベック州を制した党が政権を奪取できる確率が高く、選挙戦では常に重要視されている。現在自由党ジャスティン・トルドー首相を襲っているSNCラバラン社スキャンダルも根底にはケベック州の票を獲得したい自由党の思惑がある。

 NDPは現在支持率では、自由党、保守党、ケベック連合党に次いで4番目と低く、現在の支持率のままでは現職議員の選挙区で一人も当選しない可能性もあるという。

 ボレリス議員は「ケベック州でのNDPの現状は我々が望んでいる状況とは違っている」と語り、環境問題などトルドー政権との政策の違いを明確にしてケベック州民に訴えていくと語った。

 

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