2019年3月14日 第11号
アフリカ北東部のエチオピアで10日、離陸間もない旅客機が墜落し乗客乗員合わせて157人全員が死亡した。
墜落したのは、同国首都のアディスアベバ空港から隣国ケニアのナイロビに向かう予定だった、エチオピア航空302便。
エチオピアとケニアの周りにはソマリア、南スーダンなど政情不安から重点的な人道支援が必要な国があり、アディスアベバとナイロビはそのような支援団体や、気候変動や飢餓対策などを行う国際機関がアフリカで活動する際のハブ空港となっている。
このため、墜落した飛行機には旅行者のほかに国連職員など35カ国の人が搭乗しており、カナダ人も18人が犠牲となった。搭乗数が最も多かったのはケニアの32人で、その他はエチオピア9人、中国、イタリア、米国が8人、フランスと英国が7人、エジプト6人、ドイツ5人、インド、スロバキア、スウェーデンが4人、オーストリアとロシアが3人、イスラエル、モロッコ、ポーランド、スペインが2人、またベルギー、ジプチ、インドネシア、アイルランド、モザンビーク、ネパール、ナイジェリア、ノルウェー、ルワンダ、サウジアラビア、セルビア、ソマリア、スーダン、トーゴ、ウガンダ、イエメンがそれぞれ1人ということが判明している。
墜落した飛行機はアディスアベバ空港を離陸後間もなく、問題が生じたため管制塔に対し緊急事態を宣言し引き返そうとした。離陸から墜落までのわずか6分間に何が起こったかについては、エチオピアの当局が調査に当たっているほか、ボーイング社も技術者を現地に派遣した。事故翌日には、飛行状況やコックピット内での会話が記録されたフライトレコーダーとボイスレコーダが回収された。
墜落した機体は、エチオピア航空に昨年の11月に就航したばかりの最新鋭機、ボーイング737型MAX8。メディアの取材に応じていた航空評論家のひとりは、墜落現場を上空から撮影した画像から見て、飛行機はほぼ垂直に地面に激突したようだと指摘している。
また昨年10月29日には、同型機のライオン航空610便がインドネシアのジャカルタ空港から離陸後間もなく、やはり異常な急降下の末に沖合のジャワ海に墜落している。2つの事故が起きた状況は似ているが、同じような原因で墜落したのかどうかは早急に結論づけるべきでないと、専門家は述べている。
ボーイング737型機は1967年に初飛行して以来、世界の航空会社で採用され続け1万機以上が生産されているベストセラー機。機体の設計は50年以上前のものだが、改良が加えられる度に大幅なコンピューター化が図られ、飛行中の異常な状況をいち早く検出し、自動で安全な状態に戻すなど、パイロットのワークロード軽減と安全性向上が図られている。その反面、コンピューターへ情報を伝える各種センサーが異常を起こした場合など、コンピューターが現実とは異なる状況判断をして、飛行機を逆に不安定な状況にさせる可能性もある。
昨年のライオン航空の事故では、機体の上向き角度や飛行速度のセンサー異常から、コンピューターが異常事態と誤判断、極端な機首下げ操作を行ったのではないかとみられている。コンピューターがパイロットの意図に反する危機回避操作を行った場合、パイロットは昔の飛行機のように力づくで操縦桿を操作してもこれを修正できず、コンピューターを無効化する適切な手順を瞬時に行う必要がある。またコンピューターで高度に自動化された航空機の導入にあたっては、パイロットに対し、こうしたシステムに対応する新しい訓練が求められる。