2019年1月24日 第4号

 デモグラフィア・インターナショナル・ハウジング・アフォーダビリティ・サーベイで、世界で最も住宅購入が困難な都市第2位にバンクーバーが選ばれた。

 フロンティア・センター・フォ・パブリック・ポリシーが実施した中間所得層の住宅購入の可能性に関するこの報告書は今年で15回目。オーストラリア、カナダ、中国(香港)、アイルランド、ニュージーランド、シンガポール、イギリス、アメリカの8カ国309都市を対象に調査。2018年は第3四半期に実施された。

 その結果、中間所得層にとって住宅購入が最も困難な都市は今年も香港、2位にバンクーバーが入った。調査結果の中でバンクーバーについては、ブリティッシュ・コロンビア州で導入された海外購入者税が住宅価格をやや落ち着かせているものの、高級住宅に限った現象で、中間層を対象にした住宅市場について状況は悪化していると解説している。カナダの他の都市ではトロントが10位に入った。

 トップ10は次の通り。1位香港(中国)、2位バンクーバー(カナダ)、3位シドニー(オーストラリア)、4位メルボルン(オーストラリア)、5位サンノゼ(アメリカ)、6位ロサンゼルス(アメリカ)、7位オークランド(ニュージーランド)、8位サンフランシスコ(アメリカ)、9位ホノルル(アメリカ)、10位トロント(カナダ)、ロンドン(イギリス)

 

2019年1月17日 第3号

 ジャスティン・トルドー首相は14日、中国の裁判所がカナダ人の被告に対して死刑判決を言い渡したのは「恣意的だ」と記者会見で批判した。

 中国遼寧省大連市の中級人民法院が14日(現地時間)、中国で麻薬密輸罪に問われたカナダ人男性ロバート・ロイド・シェレンバーグ被告の差し戻し審で死刑を言い渡した件についてトルドー首相が記者会見で言及した。

 トルドー首相は「中国が今回カナダ人に対して恣意的に死刑の適用を選んだことは、カナダにとって国際社会全体にとって重要な懸念だ」と語った。

 シェレンバーグ被告は15年の有罪判決を受けていたが、不当に軽いとして差し戻されていた。カナダのメディアはこの件について大きく扱い、中国に詳しい専門家の意見として裁判が終了して判決が言い渡されるまで約1時間と異常に早い判決と紹介している。さらに、シェレンバーグ被告の最初の裁判は全く注目されていなかったが、今回の裁判は外国メディアに公開していることも注目される事実の一つという元在中国カナダ大使の言葉を紹介している。

 シェレンバーグ被告は2014年12月3日に麻薬密輸の罪で逮捕され、約4年後の昨秋に15年の判決を受けた。しかし12月29日に差し戻し審が決定した。シェレンバーグ被告の弁護士は控訴すると語っている。

 多くのメディアでは、アメリカの要請によって中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)孟晩舟・最高財務責任者(CFO)が先月カナダ・バンクーバーで逮捕された件に関連しているとの見方を示している。中国では孟氏の逮捕後にカナダ国籍の男性2人が身柄を拘束されている。

 今回の件を受けカナダ外務省は14日深夜、「現地の法律が恣意的に運用される恐れがある」と中国へ渡航するカナダ国民への注意喚起情報を更新した。

 トルドー首相の「恣意的」発言に対して中国政府は15日(現地時間)外務省の定例会見で、中国の主権を尊重し、こうした発言を止めるようカナダに要請した。さらにカナダ外務省の中国渡航に関する注意喚起に対抗して、中国国民にカナダ渡航への注意を呼びかけた。

 

2019年1月17日 第3号

 ジャスティン・トルドー首相は14日、小規模な内閣改造を実施した。これは予算庁長官兼デジタル政府大臣スコット・ブライソン議員が今月10日に辞任を表明したためで、予算庁長官を含め4閣僚を交代し、新設された省に新たに大臣が就任した。

 辞職したブライソン氏に代わり予算庁長官兼デジタル政府大臣に就任したのは、ジェーン・フィルポット前先住民サービス大臣。先住民サービス大臣にはシームス・オリーガン前復員軍人大臣兼国防副大臣が就任した。復員軍人大臣にはジョディー・ウィルソンレイボールド前法務大臣兼司法長官が、法務大臣には前イノベーション大臣政務次官のデイビッド・ラメッティ議員が就任した。新設された地方経済開発大臣には前民主機構大臣政務次官のバーナデッテ・ジョーダン議員が就任した。ジョーダン大臣はノバスコシア州選出で今回辞任したブライソン議員と同州という関係にある。

 ウィルソンレイボールド前法務大臣の復員軍人大臣就任は事実上の降格とされ、就任式ではウィルソンレイボールド復員軍人大臣の不満そうな表情にメディアが注目した。トルドー首相は記者会見で降格との報道を否定、これまで法務大臣として見せた手腕を復員軍人へのケアでも発揮してほしいと語った。ウィルソンレイボールド復員軍人大臣は「復員軍人への対応が降格とは思わない」と就任式後の記者会見では語った。前復員軍人大臣のオリーガン先住民サービス大臣の復員軍人への対応がかなり批判されていたことを受けての交代となったと各報道機関は分析している。

 しかし先住民族サービス大臣の交代は、これまでフィルポット前大臣が築いてきた先住民族との信頼関係をオリーガン大臣が引き継げるのか問題視されている。先住民族出身のウィルソンレイボールド大臣の降格やオリーガン大臣の起用に、先住民族との関係修復を重要政策と位置付けているトルドー政権で、その重要性が後退しているのではないかとの見方も出ている。

 一方でラメッティ議員の法務大臣起用は大抜擢となった。今秋実施される選挙で重要視するケベック州への配慮ではないかとの見方があり、今回の内閣改造は選挙を見据えた配置転換だったのではとの見方が大きい。

 辞任したブライソン議員は今秋の選挙にも出馬しない意向を公表。利益相反の罪に問われている元海軍中将マーク・ノーマン被告の事件に関わっているのではとの疑惑が浮上している。そのためそれが政界引退の理由ではと質問されると、事件とは関係ないと一蹴。家族との時間を大切にしたいという個人的な理由と語った。ノーマン被告の裁判は今年8月に開始される予定で、選挙戦が開始される直前で火消しに走ったのではとの見方も依然として報道されている。

 ブライソン議員は1997年に初当選。当時は進歩保守党として当選し、後に自由党に移党。ポール・マーティン自由党政権でも閣僚を務めた。自分が同性愛者であることを公表し、同性愛婚をした議員として初めて閣僚に就任。性的少数派(LGBT)の権利や同性愛婚の合法化に尽力した。

 

2019年1月17日 第3号

 タイのバンコク空港のホテルに閉じこもり帰国すれば家族に殺されると助けを求めたサウジアラビア人女性ラハフ・ムハンマド・アルクヌンさん(18)が12日、トロント国際空港に到着した。

 空港のロビーにラハフさんと一緒に現れたクリスティア・フリーランド外相は、待っていた報道陣に対して、ラハフさんは長旅で疲れているため、この日は記者会見を行わないと伝えたが、「元気な姿をカナダの人に見せたいという彼女の意向で、こうして記者の前に現れた」と説明、カナダに到着したことをすごく喜んでいると語った。

 15日には記者団の前に姿を見せ、通訳を通して声明を発表。「自分はラッキーだった」と語った。これまでに同じような行動をとり失敗した女性が大勢いる、将来は自分のような境遇に置かれた女性を助けるために尽力したいと語った。ラハフさんは家族との縁を切るためカナダに到着後、自身の姓からムハンマドを外したという。カナダに第1歩を記した時に感じた自由をこれからも享受できる喜びを会見では伝え、カナダ政府、タイ政府、国連に感謝した。

 ラハフさんは家族とクウェートを訪問中にバンコクに移動。同空港内のホテルに立てこもった。この時に自身の状況をソーシャルメディアで発信。サウジ大使館が強制送還しようとしているため危機的な状況にさらされていると助けを求めるツイートを発信し、送還されれば家族に殺されると訴えた。ラハフさんはイスラム教を捨てたと話している。各国メディアの取材には家族から心身に虐待を受けてきたことも明かした。こうした発信が人権団体やメディアの目に留まり、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が合法的な難民と認識。カナダに要請してカナダが難民認定して今回のカナダ到着となった。

 ジャスティン・トルドー首相は11日に、記者団にUNHCRの要請を受け、了承したことを公表。「カナダは世界中の人々の人権と女性の権利のために立ち上がることが重要であることを理解している国として、今回のことに貢献できることをうれしく思っている」と語った。

 ただカナダ政府からは歓迎されたラハフさんだが、ソーシャルネットワークで自身の状況を発信したことから誹謗中傷や脅迫が続いているという。カナダ政府から要請を受けた難民保護活動団体Costiは、当面はラハフさんを24時間体制で警護することを15日に明らかにした。

 

2019年1月17日 第3号

 今秋実施される連邦総選挙へ元新民主党(NDP)議員スベンド・ロビンソン氏が出馬する意向を15日公式に発表した。

 ロビンソン氏は1979年に当時のブリティッシュ・コロンビア(BC)州バーナビー選挙区で初当選して以降25年間議員として活動したが、2004年にオークションに出品された指輪を盗難したことを認め辞職した。その後1度2006年に出馬したが落選。以降、政界から引退していた。

 しかし今回13年の時を経て再び出馬することを決意したと、この日の記者会見で語った。盗難については「ひどい間違いを犯した」と自ら切り出し、当時は精神疾患と闘っていたことを検察も裁判官も認めてくれたと語った。

 自らの過ちで一度は議員を辞職したが、現在バーナビーで問題となっている環境と住宅問題に立ち向かいたいと出馬を決意したと語った。近々NDPの候補者として発表される予定だという。BC州バーナビー・ノース-シーモア選挙区からの立候補を予定している。

 バーナビーといえば、キンダーモーガン社のトランスマウンテンパイプライン拡張工事計画のバーナビーターミナルがある選挙区で、NDPは計画に反対を表明している。計画を推し進める自由党のテリー・ビーチ議員への挑戦となる。またバーナビー・サウス選挙区ではNDPジャグミード・シング党首が補欠選挙への立候補を表明している。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。