2019年1月17日 第3号

 アルバータ州南部、人口9万3千人弱の都市レスブリッジの市道で5日夜、けがを負った若い子鹿を安楽死させるため、警察官がパトカーでひき殺す場面を撮影した動画がインターネット上に投稿され、物議をかもしている。

 動画には、パトカーが子鹿を何度かひく度に、子鹿が金切り声をあげている状況が映されている。

 安全な動物の捕獲や扱い、また安楽死に関して30年以上の経験がある、同州カルガリー大学の獣医麻酔学教授ナイジェル・コールケットさんは、どんな理由であれ、安楽死のためにひき殺すことは許されないと取材に語っている。また特に鹿の苦痛と、その対処方法についても研究を続けてきたコールケットさんによると、鹿が叫び声をあげるのはきわめて異例だという。そのことを知っている彼にとって、この動画を見るのは非常に苦痛だったと話している。

 また負傷した野生動物の対処に出動した警察官の置かれた状況に理解を示しつつも、対応する警察官は人道的な方法で安楽死を実行するよう訓練を受けているべきだとしている。またレスブリッジ警察の警察官が所持している拳銃が9ミリ弾や40口径弾を使用している場合、至近距離から発砲すれば動物を即死させることも可能だったかもしれないと指摘する。しかし弾が動物を貫通し、その流れ弾が市民に危害を与える恐れがあることから、拳銃の使用をためらった可能性もあると取材に説明している。

 そのほか安楽死のために適切な器具がなかった場合、自然保護官が勧める方法としては、『クイック・キル』と呼ばれる、頚動脈を切る方法もあり、自分がこの警察官の立場だったら、この方法も選択肢としていただろうと語っていた。

 一方、アルバータ重大事故対応チーム(Alberta Serious Incident Response Team - AIIRT)は9日、この件に関して調査を開始したことを発表した。またその中で、当時は警察官の生命に危険が及ぶ状況だったとしている。また公開された動画は事実であるとしても、それは事件の一部を切り取ったものであり、動画撮影の前に起こっていたことも目撃者の証言などを集めて検証し、事件の全体像を公平に調査する必要があると付け加えている。

 

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