2019年1月17日 第3号

 ジャスティン・トルドー首相は14日、中国の裁判所がカナダ人の被告に対して死刑判決を言い渡したのは「恣意的だ」と記者会見で批判した。

 中国遼寧省大連市の中級人民法院が14日(現地時間)、中国で麻薬密輸罪に問われたカナダ人男性ロバート・ロイド・シェレンバーグ被告の差し戻し審で死刑を言い渡した件についてトルドー首相が記者会見で言及した。

 トルドー首相は「中国が今回カナダ人に対して恣意的に死刑の適用を選んだことは、カナダにとって国際社会全体にとって重要な懸念だ」と語った。

 シェレンバーグ被告は15年の有罪判決を受けていたが、不当に軽いとして差し戻されていた。カナダのメディアはこの件について大きく扱い、中国に詳しい専門家の意見として裁判が終了して判決が言い渡されるまで約1時間と異常に早い判決と紹介している。さらに、シェレンバーグ被告の最初の裁判は全く注目されていなかったが、今回の裁判は外国メディアに公開していることも注目される事実の一つという元在中国カナダ大使の言葉を紹介している。

 シェレンバーグ被告は2014年12月3日に麻薬密輸の罪で逮捕され、約4年後の昨秋に15年の判決を受けた。しかし12月29日に差し戻し審が決定した。シェレンバーグ被告の弁護士は控訴すると語っている。

 多くのメディアでは、アメリカの要請によって中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)孟晩舟・最高財務責任者(CFO)が先月カナダ・バンクーバーで逮捕された件に関連しているとの見方を示している。中国では孟氏の逮捕後にカナダ国籍の男性2人が身柄を拘束されている。

 今回の件を受けカナダ外務省は14日深夜、「現地の法律が恣意的に運用される恐れがある」と中国へ渡航するカナダ国民への注意喚起情報を更新した。

 トルドー首相の「恣意的」発言に対して中国政府は15日(現地時間)外務省の定例会見で、中国の主権を尊重し、こうした発言を止めるようカナダに要請した。さらにカナダ外務省の中国渡航に関する注意喚起に対抗して、中国国民にカナダ渡航への注意を呼びかけた。

 

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