2019年1月17日 第3号

 ジャスティン・トルドー首相は14日、小規模な内閣改造を実施した。これは予算庁長官兼デジタル政府大臣スコット・ブライソン議員が今月10日に辞任を表明したためで、予算庁長官を含め4閣僚を交代し、新設された省に新たに大臣が就任した。

 辞職したブライソン氏に代わり予算庁長官兼デジタル政府大臣に就任したのは、ジェーン・フィルポット前先住民サービス大臣。先住民サービス大臣にはシームス・オリーガン前復員軍人大臣兼国防副大臣が就任した。復員軍人大臣にはジョディー・ウィルソンレイボールド前法務大臣兼司法長官が、法務大臣には前イノベーション大臣政務次官のデイビッド・ラメッティ議員が就任した。新設された地方経済開発大臣には前民主機構大臣政務次官のバーナデッテ・ジョーダン議員が就任した。ジョーダン大臣はノバスコシア州選出で今回辞任したブライソン議員と同州という関係にある。

 ウィルソンレイボールド前法務大臣の復員軍人大臣就任は事実上の降格とされ、就任式ではウィルソンレイボールド復員軍人大臣の不満そうな表情にメディアが注目した。トルドー首相は記者会見で降格との報道を否定、これまで法務大臣として見せた手腕を復員軍人へのケアでも発揮してほしいと語った。ウィルソンレイボールド復員軍人大臣は「復員軍人への対応が降格とは思わない」と就任式後の記者会見では語った。前復員軍人大臣のオリーガン先住民サービス大臣の復員軍人への対応がかなり批判されていたことを受けての交代となったと各報道機関は分析している。

 しかし先住民族サービス大臣の交代は、これまでフィルポット前大臣が築いてきた先住民族との信頼関係をオリーガン大臣が引き継げるのか問題視されている。先住民族出身のウィルソンレイボールド大臣の降格やオリーガン大臣の起用に、先住民族との関係修復を重要政策と位置付けているトルドー政権で、その重要性が後退しているのではないかとの見方も出ている。

 一方でラメッティ議員の法務大臣起用は大抜擢となった。今秋実施される選挙で重要視するケベック州への配慮ではないかとの見方があり、今回の内閣改造は選挙を見据えた配置転換だったのではとの見方が大きい。

 辞任したブライソン議員は今秋の選挙にも出馬しない意向を公表。利益相反の罪に問われている元海軍中将マーク・ノーマン被告の事件に関わっているのではとの疑惑が浮上している。そのためそれが政界引退の理由ではと質問されると、事件とは関係ないと一蹴。家族との時間を大切にしたいという個人的な理由と語った。ノーマン被告の裁判は今年8月に開始される予定で、選挙戦が開始される直前で火消しに走ったのではとの見方も依然として報道されている。

 ブライソン議員は1997年に初当選。当時は進歩保守党として当選し、後に自由党に移党。ポール・マーティン自由党政権でも閣僚を務めた。自分が同性愛者であることを公表し、同性愛婚をした議員として初めて閣僚に就任。性的少数派(LGBT)の権利や同性愛婚の合法化に尽力した。

 

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