2019年1月17日 第3号

 タイのバンコク空港のホテルに閉じこもり帰国すれば家族に殺されると助けを求めたサウジアラビア人女性ラハフ・ムハンマド・アルクヌンさん(18)が12日、トロント国際空港に到着した。

 空港のロビーにラハフさんと一緒に現れたクリスティア・フリーランド外相は、待っていた報道陣に対して、ラハフさんは長旅で疲れているため、この日は記者会見を行わないと伝えたが、「元気な姿をカナダの人に見せたいという彼女の意向で、こうして記者の前に現れた」と説明、カナダに到着したことをすごく喜んでいると語った。

 15日には記者団の前に姿を見せ、通訳を通して声明を発表。「自分はラッキーだった」と語った。これまでに同じような行動をとり失敗した女性が大勢いる、将来は自分のような境遇に置かれた女性を助けるために尽力したいと語った。ラハフさんは家族との縁を切るためカナダに到着後、自身の姓からムハンマドを外したという。カナダに第1歩を記した時に感じた自由をこれからも享受できる喜びを会見では伝え、カナダ政府、タイ政府、国連に感謝した。

 ラハフさんは家族とクウェートを訪問中にバンコクに移動。同空港内のホテルに立てこもった。この時に自身の状況をソーシャルメディアで発信。サウジ大使館が強制送還しようとしているため危機的な状況にさらされていると助けを求めるツイートを発信し、送還されれば家族に殺されると訴えた。ラハフさんはイスラム教を捨てたと話している。各国メディアの取材には家族から心身に虐待を受けてきたことも明かした。こうした発信が人権団体やメディアの目に留まり、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が合法的な難民と認識。カナダに要請してカナダが難民認定して今回のカナダ到着となった。

 ジャスティン・トルドー首相は11日に、記者団にUNHCRの要請を受け、了承したことを公表。「カナダは世界中の人々の人権と女性の権利のために立ち上がることが重要であることを理解している国として、今回のことに貢献できることをうれしく思っている」と語った。

 ただカナダ政府からは歓迎されたラハフさんだが、ソーシャルネットワークで自身の状況を発信したことから誹謗中傷や脅迫が続いているという。カナダ政府から要請を受けた難民保護活動団体Costiは、当面はラハフさんを24時間体制で警護することを15日に明らかにした。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。