2019年2月21日 第8号
ジャスティン・トルドー首相の右腕として全幅の信頼を得ていた第一個人秘書官ジェラルド・バッツ氏が18日、辞職した。発表した声明文では、建設会社SNC-ラバラン救済に首相事務所が一切介入していないことを強調。バッツ氏自身も、事務所自体も関わっておらず、非難されるようなことは行っていないと否定した。
バッツ氏は2015年の総選挙で自由党を大勝に導いた影の立役者で、首相事務所では、首席補佐官ケイティ・テルフォード氏とバッツ氏2人が最も力を持っているとされている。その片方が辞職したことで、今秋に総選挙を控えた自由党内でも衝撃が走ったと各メディアが伝えた。
辞職声明文では自身と事務所の潔白は主張しているものの、辞職の明確な理由は述べていない。
野党がスキャンダルと称するSNC-ラバラン救済事件は、予期しない事態を引き起こしている。きっかけは今月7日に全国紙グローブ&メールが掲載した1面トップ記事。記事は、リビア事業関連の贈賄容疑で刑事訴追されたSNC-ラバラン社が司法取引によって裁判を回避できるよう首相事務所がジョディ・ウィルソンレイボールド前法務大臣兼司法長官に昨秋、圧力をかけたというもの。
この記事が掲載されて以降、トルドー首相は自身や事務所にそうした事実はない「記事は間違っている」と否定。しかし、その後何度も記者から記事の真実について聞かれると、発言が二転三転した。ウィルソンレイボールド前法務大臣兼司法長官は、今年1月の内閣改造で復員軍人大臣兼国防副大臣に就任。事実上の「降格」に、首相事務所の圧力に屈しなかったからではないかとメディアや専門家は推測している。
首相事務所の介入については、最終的にはウィルソンレイボールド前法務大臣兼司法長官に直接真実を語ってもらうしかないと野党やメディアが主張している最中に、本人が大臣を辞任。憶測が憶測を呼んだうえのバッツ氏の辞任で、19日に再開した国会は、この問題に終始した。
2019年2月21日 第8号
マニトバ州西部で原油を運ぶ列車が脱線し、オイル漏れを起こしていることが16日、分かった。カナダナショナル(CN)鉄道が発表した。
脱線事故が起きたのはサスカチワン州との境に近いセント・ラザレで、同日午前3時30分ごろに発生したとみられている。事故によるけが人はなく、火災も発生していないという。
しかし原油を積んだ車両が37台あったことから、深刻なオイル漏れを引き起こしている可能性がある。CN鉄道は車両からオイルが漏れていることは確認しているが、脱線した車両数やオイル漏れの量については正確には分かっていない、現在も調査中と18日時点でメディアを通して発表している。
ただ、近くを流れるアシニボイン川を汚染した可能性はないと発表している。CN鉄道の環境専門家が清掃に関わっており、線路はすでにクリアになったため、18日の時点で列車の運行が再開していることも発表した。事故原因については引き続き調査中としている。
カナダでは現在原油の輸送をめぐって、列車輸送よりも安全なパイプラインでの輸送を保守党などが訴えている。パイプライン建設をめぐっては自由党ジャスティン・トルドー政権が、アルバータ州からブリティッシュ・コロンビア(BC)州バーナビーまでのトランスマウンテン・パイプライン拡張工事を承認したが、アルバータ州からBC州北西部までのノーザンゲートウェイパイプライン建設、アルバータ州からケベック州を通って東海岸に抜けるエナジーイーストパイプライン計画については撤回。承認されたトランスマウンテンも裁判所によって工事停止が言い渡されている。パイプライン推進派は、こうした列車事故が起きたことで、その危険性を指摘し、パイプラインの安全性を主張している。原油の列車輸送事故では、2013年7月ケベック州レック-メガンティックで列車の爆発事故が起き、47人が死亡している。
アルバータ州政府は19日、CNとカナダ太平洋(CP)鉄道から同州のオイルサンド輸送のため4400台の車両をリースすることで合意したと発表した。アメリカや海外市場へと輸送するためという。最初の輸送は今年7月頃に開始する予定で、一日2万バレルを輸送する。2020年中頃には、一日12万バレルを運ぶ予定としている。
2019年2月21日 第8号
低迷するアルバータ州の石油・ガス産業の救済を訴え、トラック200台が19日、首都オタワの国会前に集合した。オイルサンドを運搬するためのパイプライン建設の早急な実現と、炭素税の廃止、石油・ガス産業に影響を及ぼす環境審査基準の引き下げを、自由党政権に訴えた。さらに、ブリティッシュ・コロンビア州沿岸北部から石油を運ぶためのタンカー運航禁止の撤廃も訴えている。
「カナダのためのトラック集団」と自称するデモ隊は、トラックや自動車でオンタリオ州オタワを目指して2月14日に、アルバータ州レッド・ディアーを出発。途中、サスカチワン州レジャイナ、マニトバ州ウィニペグ、オンタリオ州スーセントマリー、サドベリー、ノース・ベイを通過。賛同する人たちに参加するよう促し、オタワへと入った。
当初はカナダの「イエローベストトラック集団」と名乗っていたが、他のイエローベスト集団がイスラム教や移民者への差別的な表現を使用していたことで批判が出たため、名前を変更した。ただ、イエローベスト集団は、自分たちは移民への差別を助長しているわけではなくカナダ政府の移民政策を懸念している、と主張。差別的な意図はないとして今回のデモ隊とともにオタワに到着している。
デモの主催者は、カナダの在り方を心配しているということでは移民問題も同じ、暴力的な行為に出ない限りデモ参加に問題はない、との見解を示している。
オタワでは、野党保守党アンドリュー・シェア党首が、「カナダには、そろそろエネルギー産業を誇りに思う首相の誕生が必要だ」と集団に対して語りかけた。カナダ国民党マキシム・ベニエ党首も集団を出迎えた。
2019年2月21日 第8号
アメリカの靴のディスカウントチェーン店ペイレス・シューソースが今年5月までに、カナダ、アメリカの全店舗を閉鎖することが19日、分かった。
同社は18日にアメリカ連邦破産法第11条の適用を申請、カナダでも企業債権者調整法(CCAA)の適用を申請した。カナダ・アメリカにある店舗は3月末から閉鎖していくという。オンライン事業も閉鎖する。
1856年にアメリカのカンザスで創業し、靴のディスカウントチェーン店として成長。現在でも世界40カ国に3400店舗を展開している。
そのうちカナダ・アメリカは約2500店舗で、カナダには248店舗。半数以上がオンタリオ州にあり、アルバータ州、ブリティッシュ・コロンビア州にも30店舗以上が展開されている。国内の全店舗が閉鎖されると約2400人の雇用に影響するとみられている。
2019年2月21日 第8号
注目のブリティッシュ・コロンビア(BC)州バーナビー・サウス選挙区の補欠選挙は、15日に期日前投票が始まり、新民主党(NDP)候補者ジャグミード・シング党首が夫人とともに投票会場に姿を見せた。
会場となったBC州バーナビー市の日系文化センター・博物館で投票を済ませたシング党首は笑顔で記者団の前に姿を見せ、当選に向けての自信をのぞかせた。
同選挙区には6人が立候補している。与党自由党からはリチャード・リー氏、保守党はジェイ・シン氏、カナダ国民党はローラ-リン・トンプソン氏、無所属のテリー・グリムウッド氏とバレンティン・ウー氏。
6人の中で、この選挙で投票できるのはシング党首とウー氏のみ。あとは選挙区外に住所があるため補欠選挙への選挙権を有していない。オンタリオ州出身のシング党首は、バーナビー・サウス選挙区から立候補するために昨年11月に引っ越してきた。この選挙区で当選して、ここから2019年10月の総選挙を戦うという。
期日前投票は2月15日から18日まで実施された。カナダ選挙管理委員会によると、バーナビー・サウス選挙区で期日前投票をしたのは5462人だった。
補欠選挙は、バーナビー・サウス選挙区のほか、オンタリオ州ヨーク-シムコ選挙区、ケベック州アウトレモント選挙区でも実施される。投開票は2月25日。