2020年2月27日 第9号
ジャスティン・トルドー首相は21日、全国で展開されているデモ隊によるバリケードを撤去するよう呼びかけた。 発端は、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州北西部での連邦警察によるデモ隊逮捕だった。今月初め、LNGカナダの液化天然ガス事業のパイプライン建設を手掛けるコスタルガスリンク社の工事に反対する先住民族ウェツウェテンの住民が工事を阻止するために、先住民族自治区内にバリケードを張るデモを実施した。 そのため、コスタルガスリンク社は裁判所に強制撤去を申請、強制撤去命令を受けた連邦警察がバリケードを強制撤去し、工事着工準備を妨害したとして6人を逮捕した。 これを機にウェツウェテン族首長が他の先住民族に支援を求め、6日から全国で先住民族によるデモが決行された。中でもオンタリオ州ベルビル近くのティエンディナガ・モホーク族のバリケードは、オンタリオ州トロント、オタワ、ケベック州モントリオールを結ぶカナダの大動脈鉄道を完全に停止させる事態を引き起こした。 貨物鉄道CNレールは東カナダの運行を停止、旅客鉄道VIAレールはカナダ北部を走る一部を除いて全面運休を発表した。このバリケードにも強制撤去命令が出されていたが、オンタリオ州警察は慎重に交渉を続けていた。ティエンディナガ・モホーク族のバリケードは線路を占拠していたわけではなく、線路際のモホーク族自治区内にバリケードを作っていた。しかし線路に近すぎるため列車が通れず、運休を余儀なくされた。 ケベック州でもカナワケ・モホーク族による同様のデモが行われた。 鉄道を止められたカナダ最大都市と第2の都市は、貨物が止まるという緊急事態を招き、さらに通勤の足にも大きな影響が出た。 しかし連邦政府は、強制執行しない警察に対して政府が命令する権限はないとして、強制執行は警察の自己判断に任せるとの立場を強調。その間、BC州ウェツウェテン族、モホーク族との対話による解決方法を模索すると説明していた。 各先住民族がバリケードを撤去し、デモを中止する条件は、ウェツウェテン自治区内から連邦警察が撤退すること。連邦政府ビル・ブレア公安相は、BC連邦警察が自治区内に設置していたステーションから撤退する用意ができたと説明。しかし連邦警察が完全に撤退していないことを明らかにした。 連邦政府はこの間に、ウェツウェテン族首長、BC州政府と連絡を取っていたと説明したが、21日、「我慢の限界」としてトルドー首相が「バリケードは撤去されなければならない」と呼び掛けた。 ただ政府は警察に強制撤去執行を命令することはできないとし、強制撤去執行の判断は警察の裁量との立場を改めて強調した。それでも「法は守られなければならない」と強制撤去執行を促した。
2020年2月27日 第9号
ジャスティン・トルドー首相が記者会見してから3日後の24日、オンタリオ州警察は同州ベルビル近くでバリケードを張っているティエンディナガ・モホーク族に対して強制撤去を執行した。警察とデモ隊がもみ合う場面もあったが、重傷者を出すことなく撤去作業が進められた。
撤去された後、モホーク族はオンタリオ州警察のやり方に不満を示した。これまで警察が強制撤去に踏み切らなかった理由に、過去の苦い経験があるという。先住民族と政府は過去に何度も土地を巡って衝突し、警察の介入で、これまでに警察も先住民族も死者を出している。
24日に強制撤去が執行された時もカナダ全体が固唾を呑んで事態を見守り、トルドー首相は「平和的な解決を望む」と語っている。
ティエンディナガ・モホーク族のバリケードが撤去されたことで、CNレールが運行再開に向け準備を進めている。VIAレールはすでにオンタリオ州、ケベック州の一部で運行を再開している。
しかし、オンタリオ州警察が強制撤去に踏み切ったことを不満とする支援者たちが全国各地でデモを続行している。オンタリオ州では24日夜からトロントの南部ハミルトン市近くでCNレールの線路をデモ隊が占拠。オンタリオ州南部とトロントを結ぶGO列車が運休となった。
ケベック州ではカナワケ・モホーク族が変わらずデモを続けている。ブリティッシュ・コロンビア州では、州議事堂の出入り口で24日から座り込みが続いている。バンクーバーでは公共交通機関ウエストコーストエキスプレスが24日夕方に全便運休、バンクーバー港に続く道路もデモ隊が封鎖した。BC州中西部でも再び鉄道にバリケードが張られるなど、トルドー首相の呼びかけに応じた警察の行動に反発したデモ隊が各地でデモを決行。収まる気配を見せていない。
2020年2月27日 第9号
アルバータ州北部でのオイルサンド事業テックフロンティアを申請していた、ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーのテック・リゾース社が23日、突然申請を撤回すると発表した。アルバータ州では、政府と2つの先住民族が、この日に開発で合意に至ったばかりだっただけに衝撃が走っている。
テック・リゾースは理由について、カナダの環境政策と世界的なエネルギー産業を取り巻く変化を考慮したと声明で発表した。
テックフロンティアは、アルバータ州北部フォートマクマレーの北約110キロメートルにある206億ドルのオイルサンド資源を採掘するプロジェクト。連邦政府は25日には申請の可否を投票で決定する予定になっていた。
自由党政権内では、テックフロンティアの可否について意見が二分していた。中には公に反対を表明している自由党議員もいた。ジョナサン・ウィルキンソン環境・気候変動相は、承認した場合の温室効果ガス排出量増加に懸念を示していた。自由党政権は2050年までに実質温室効果ガス排出量ゼロを目指すと公言している。現在のままでは、2030年までに2005年比の30パーセント削減を目標としているパリ協定すら実現できない可能性が高い。昨年の選挙でも環境問題への取り組みを最重要課題とすると公約しているため、新たなオイルサンド事業の承認は自由党にとっても支持を下げる要因にもなる。
そんな中でのテック・リゾースの申請撤回発表となった。ただ同社CEO兼社長ドン・リンジー氏は以前に、オイルサンド事業の経済的持続性について懸念を示していた。現在の申請は1バレル90ドルを基準としているという。しかし、現実的には現在は1バレル50ドル付近で推移し、申請時のような利益を得られるかは不透明との見解を示していた。
ウェルキンソン環境相はテック・リゾース社の決定を尊重し、今後この件についての決定は下さないと発表した。
2020年2月27日 第9号
アルバータ州上訴裁判所は、連邦政府の炭素税の強制導入は違憲との判断を24日に下した。州政府の自治権を侵害すると説明。連邦政府の温室効果ガス排出への規制は国全体の懸念課題であり、憲法における権力の分立は州政府に非再生エネルギー促進の口実を与えると訴えていた。裁判所が連邦政府の訴えを退けた形となった。
裁判所は、権力の分立は連邦国家カナダにとって重要な役割を果たしているとし、連邦政府と州政府は対等な立場にあり、どのレベルの政府も自治権の範囲内では最高機関であると説明した。
また炭素税を「憲法のトロイの木馬」と強い言葉で比喩。先例を作って連邦政府にあらゆる法律を強要することを許す結果になると述べた。
炭素税導入に反対しているアルバータ州連合保守党ジェイソン・ケニー党首は、「アルバータ州にとって勝利だ」と語った。温室効果ガス排出量の減少という目標については、連邦政府に同意するが炭素税という方法には反対と強調した。
連邦自由党政権は2015年に政権交代を実現した後、環境問題に力を入れることを約束。環境対策の一環として炭素税導入を発表した。当初は2018年に全国導入する予定だった。連邦政府は州独自の炭素税、もしくは排出量課金制度の導入を要請。州政府が導入しない場合は、連邦政府の炭素税を強制的に執行すると推し進めていた。しかし天然資源産業が主要産業のアルバータ州ほか、サスカチワン州、オンタリオ州などが反対を表明。結局2019年1月から導入となった。
連邦政府は2015年にフランス・パリで開かれた国連環境会議で、2030年までに2005年比で30パーセントを削減するとことを発表した。この目標実現のための政策の一つが炭素税導入。温室効果ガス排出に直結する商品や活動に税金を課し価格を引き上げることで、国民によりクリーンな選択を促すという政策。世界的に一定の効果があると認められている。ブリティッシュ・コロンビア州では全国に先駆けて2008年から導入されている。ケベック州はキャップ&トレード制度を導入している。ジャスティン・トルドー首相は連邦炭素税による歳入は全額州民に還元すると約束している。
しかし、炭素税に強く反対していたサスカチワン州が連邦政府を提訴。オンタリオ州もそれに続いたが、両州の裁判では合憲との判断が下されている。
連邦政府ジョナサン・ウィルキンソン環境・気候変動相は、3月の最高裁判所の判断に期待すると語り、「連邦政府の立場が支持されると確信している」と語った。
2020年2月27日 第9号
ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー島にあるファーストフードチェーン店主が従業員に旅行をプレゼントするという、粋な計らいが話題となっている。20日、CTVバンクーバーアイランドが伝えた。
バンクーバー島南部東海岸ビクトリアとナナイモの間にある小さな町レディスミスで、A&W経営しているジェイソン・ケラードさんが自身が経営者として10周年を迎えるのを機に何かしたいと思い、勤続10年以上の勤勉な従業員3人に旅行をプレゼントすることを思いついたという。3人とも忙しくて旅行にもあまり行っていないと聞いたのがきっかけだったと話した。
旅行先はどこでも自分が行きたい場所を選んで、費用は全額店側が予算内で負担するという。10年、12年、15年勤務する従業員それぞれは、2人がメキシコに、もう一人はアラスカクルーズを検討中と語っている。
ケラードさんは、店舗が10年も続いたのはこうした献身的な従業員が働いてくれているおかげと語り、感謝の気持ちを込めて今回の旅行をプレゼントしたと語っている。