2020年2月27日 第9号
アルバータ州上訴裁判所は、連邦政府の炭素税の強制導入は違憲との判断を24日に下した。州政府の自治権を侵害すると説明。連邦政府の温室効果ガス排出への規制は国全体の懸念課題であり、憲法における権力の分立は州政府に非再生エネルギー促進の口実を与えると訴えていた。裁判所が連邦政府の訴えを退けた形となった。
裁判所は、権力の分立は連邦国家カナダにとって重要な役割を果たしているとし、連邦政府と州政府は対等な立場にあり、どのレベルの政府も自治権の範囲内では最高機関であると説明した。
また炭素税を「憲法のトロイの木馬」と強い言葉で比喩。先例を作って連邦政府にあらゆる法律を強要することを許す結果になると述べた。
炭素税導入に反対しているアルバータ州連合保守党ジェイソン・ケニー党首は、「アルバータ州にとって勝利だ」と語った。温室効果ガス排出量の減少という目標については、連邦政府に同意するが炭素税という方法には反対と強調した。
連邦自由党政権は2015年に政権交代を実現した後、環境問題に力を入れることを約束。環境対策の一環として炭素税導入を発表した。当初は2018年に全国導入する予定だった。連邦政府は州独自の炭素税、もしくは排出量課金制度の導入を要請。州政府が導入しない場合は、連邦政府の炭素税を強制的に執行すると推し進めていた。しかし天然資源産業が主要産業のアルバータ州ほか、サスカチワン州、オンタリオ州などが反対を表明。結局2019年1月から導入となった。
連邦政府は2015年にフランス・パリで開かれた国連環境会議で、2030年までに2005年比で30パーセントを削減するとことを発表した。この目標実現のための政策の一つが炭素税導入。温室効果ガス排出に直結する商品や活動に税金を課し価格を引き上げることで、国民によりクリーンな選択を促すという政策。世界的に一定の効果があると認められている。ブリティッシュ・コロンビア州では全国に先駆けて2008年から導入されている。ケベック州はキャップ&トレード制度を導入している。ジャスティン・トルドー首相は連邦炭素税による歳入は全額州民に還元すると約束している。
しかし、炭素税に強く反対していたサスカチワン州が連邦政府を提訴。オンタリオ州もそれに続いたが、両州の裁判では合憲との判断が下されている。
連邦政府ジョナサン・ウィルキンソン環境・気候変動相は、3月の最高裁判所の判断に期待すると語り、「連邦政府の立場が支持されると確信している」と語った。