2020年2月27日 第9号

 アルバータ州北部でのオイルサンド事業テックフロンティアを申請していた、ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーのテック・リゾース社が23日、突然申請を撤回すると発表した。アルバータ州では、政府と2つの先住民族が、この日に開発で合意に至ったばかりだっただけに衝撃が走っている。

 テック・リゾースは理由について、カナダの環境政策と世界的なエネルギー産業を取り巻く変化を考慮したと声明で発表した。

 テックフロンティアは、アルバータ州北部フォートマクマレーの北約110キロメートルにある206億ドルのオイルサンド資源を採掘するプロジェクト。連邦政府は25日には申請の可否を投票で決定する予定になっていた。

 自由党政権内では、テックフロンティアの可否について意見が二分していた。中には公に反対を表明している自由党議員もいた。ジョナサン・ウィルキンソン環境・気候変動相は、承認した場合の温室効果ガス排出量増加に懸念を示していた。自由党政権は2050年までに実質温室効果ガス排出量ゼロを目指すと公言している。現在のままでは、2030年までに2005年比の30パーセント削減を目標としているパリ協定すら実現できない可能性が高い。昨年の選挙でも環境問題への取り組みを最重要課題とすると公約しているため、新たなオイルサンド事業の承認は自由党にとっても支持を下げる要因にもなる。

 そんな中でのテック・リゾースの申請撤回発表となった。ただ同社CEO兼社長ドン・リンジー氏は以前に、オイルサンド事業の経済的持続性について懸念を示していた。現在の申請は1バレル90ドルを基準としているという。しかし、現実的には現在は1バレル50ドル付近で推移し、申請時のような利益を得られるかは不透明との見解を示していた。

 ウェルキンソン環境相はテック・リゾース社の決定を尊重し、今後この件についての決定は下さないと発表した。

 

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