2020年2月20日 第8号
ブリティッシュ・コロンビア(BC)州北部でウェツウェテン先住民族が起こしたコスタル・ガスリンク社パイプライン建設反対デモに、警察が介入し逮捕者が出たことをきっかけに、全国に広がったデモはさらに拡大を続けている。
BC州のウェツウェテン先住民族を支援すると表明したオンタリオ州ティエンディナガ・モホーク族が、ベルビル近くにある自治区内で、カナディアン・ナショナル・レールウェイ(CN)が通行止めになるデモを7日から決行。線路を完全に封鎖していないが、デモの場所が線路に近すぎるため列車の運行ができず、トロント・オタワ間、トロント・モントリオール間が運行停止となっていた。13日にはとうとうCNがカナダ東部の運行を全面運休すると発表。これで東部では貨物が動かなくなった。
さらに観光客が利用するVIAレールも、13日に北部の一部路線を除いて全便運休を発表。すでに切符を購入している場合は全額返金に応じるとし、18日までは予約を受け付けないと発表した。
それでも18日には、20日からオンタリオ州とケベック州の一部路線を再開すると発表。オンタリオ州では南部のトロント・ロンドン・ウィンザー線、トロント・サーニア線、トロント・ナイアガラ線を、ケベック州ではオタワ・モントリオール・ケベックシティ線を再開する。
BC州でも各地でデモが決行された。メトロバンクーバーでは13日に、バンクーバーダウンタウン・ウォーターフロント駅とミッション駅までを結ぶ、長距離列車ウエストコースト・エキスプレスが午後に突然運休した。デモ隊がピットリバー・レイルブリッジを封鎖したことが原因だった。ウォーターフロント駅は、怒りと困惑した表情を浮かべる帰宅する利用者でごった返した。ウエストコースト・エキスプレスを運行するトランスリンクは、利用者にコキットラムまでスカイトレインで向かい、その先はバスを運行すると代替手段を提供した。運休は14日朝のラッシュ時まで続いた。
15日には、バンクーバー市を走る線路をデモ隊が占拠した。この影響で貨物列車だけでなく、アメリカ行きのアムトラックが運休を余儀なくされた。アメリカ・ワシントン州ベリンハム発バンクーバー行きのアムトラックがベリンハムに引き返し、乗客をバスでバンクーバーに送った。バンクーバー発ベリンハム行きも運休となった。アムトラックへの影響は、この日1日で終わった。
17日には、オンタリオ州トロントで大規模デモが起こった。ファミリーデーの祝日だったこの日、約2千人が市役所までの4.2キロをデモ行進した。
また、オンタリオ州南部のアメリカとの国境となるサウザンドアイランド・ブリッジを、デモ隊が一時封鎖。車でアメリカへ向かう人々は迂回を余儀なくされた。16日には、ナイアガラフォールズにある国境レインボーインターナショナル・ブリッジが一時封鎖された。 プリンスエドワード島州では、コンフェデレーション・ブリッジが一時封鎖された。
全国に広がりを見せ、止まる様子を見せないデモ。デモ隊の要求は、BC州北部ウェツウェテン先住民族自治区から連邦警察が撤退すること。警察が先住民族の土地から撤退しない限り、デモを続けると活動家たちは主張している。デモは先住民族だけでなく、彼らを支持する支援者、特に若者が多く参加している。
2020年2月20日 第8号
全国各地でブリティッシュ・コロンビア州北部のウェツウェテン先住民族を支持するデモが広がる中、経済への影響が現れ始めていると、連邦政府へ早急にデモを中止させるよう要求が強まっている。
ジャスティン・トルドー首相は予定していたカリブ海諸国への訪問を取り止めて、事態収拾に向けた対応に追われた。
15日には、マーク・ミラー先住民族相がオンタリオ州ベルビル近くでデモを実行しているティエンディナガ・モホーク族を訪問。9時間にわたる話し合いをした後、記者団に対して「緩やかに前進」と説明し、トルドー首相に内容を報告すると語ったのみで、会談の内容については一切明らかにしなかった。
18日の国会では、野党保守党がデモの影響による経済停滞への懸念を追及。保守党アンドリュー・シェア党首は「違法封鎖をいつになったら強制撤去するのか」と詰め寄った。しかし、トルドー首相は対話こそが解決の早道と強制撤去には消極的な姿勢を示した。国民に対してトルドー首相は、いろいろな面で不便を強いられていると思うが「政府の対応をもう少し見守ってほしい」と訴えた。
BC州では連邦警察が裁判所の強制執行命令を受け、ウェツウェテン自治区に踏み込みデモ隊を逮捕する行動に出たが、オンタリオ州では裁判所から強制執行命令が出ているにもかかわらず、州警察は強制撤去を実行していない。
その背景にはこれまでに先住民族と州政府、警察が衝突した歴史の中で、先住民族にも警察にも死者を出すという歴史がある。そのため同じ過ちを犯さないためにも、オンタリオ州警察も連邦政府も慎重に対応しているという。オンタリオ州政府も連邦政府を批判はしているが、強制執行への対応は州警察に一任していると発表している。
トルドー首相は、現在ウェツウェテン族の首長たちとの会談実現に向けて努力していると説明。ウェツウェテンの首長は、自治区から連邦警察が撤退しない限り、対面での会談はあり得ないとの主張を繰り返している。
2020年2月20日 第8号
カナダ外務省は、横浜沖に停泊しているクルーズ船ダイヤモンド・プリンセスにいるカナダ人乗客が帰国するためのチャーター機を手配すると18日発表した。チャーター機は21日に日本を発つ予定としている。
外務省によるとクルーズ船に乗っていたカナダ人は256人で、43人が新型コロナウイルス感染に陽性反応が出たと発表している。
チャーター機で帰国できるのはカナダ国籍と永住権保有者で、感染が確認されていない場合のみ。感染が確認された場合は日本で治療にあたる。
17日にブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーで記者会見した連邦政府パティ・ハイデュ保健相は、クルーズ船乗客の帰国後について、日本時間の19日にはクルーズ船隔離から14日間を過ごしたことになるが、中国湖北省武漢からチャーター機で帰国した国民同様に、オンタリオ州で14日間隔離されると語った。
2020年2月20日 第8号
ケベック州モントリオールに本社のある航空機・鉄道メーカー、ボンバルディア社は17日、鉄道事業をフランスの鉄道車両大手アルストムに売却することで合意したと発表した。売却額は最大67億米ドル。
ボンバルディアは、13日にはヨーロッパのエアバスとケベック州政府に、航空小型機A220事業の保有株を売却。小型機事業からの撤退を表明した。6億米ドルの売却資金は負債の返済に充てるという。ボンバルディアは、座席数が100から150席クラスの小型機Cシリーズを開発していたが、開発費の負担が膨らみ、ケベック州政府と連邦政府が資金を提供。しかし、2018年にエアバスからの出資を受け入れ、事業名称をA220に変更した。
ボンバルディアの社長兼CEOアラン・ベレマー氏は、今回の売却でもケベック州内の3300人の雇用には影響ないと説明した。しかし、ケベック州以外のカナダ国内で、鉄道事業だけでも約3500人の従業員を抱えている。これらの人々の雇用が保障されるかは分かっていない。
ケベック州フランソワ・レガルト州首相は、アルストムはモントリオールに北米本社を置くことで合意したと語り、これで1500人の雇用が創出されるだろうと語った。
2020年2月20日 第8号
世論調査会社リサーチによると、ブリティッシュ・コロンビア州に住む親の多くが、将来自分の子どもたちはメトロバンクーバーを離れるだろうと思っていることが分かった。
18日に発表された調査結果では、調査に参加した親のうち66パーセントが、子どもたちは経済的な理由で将来メトロバンクーバーを離れると思うと回答した。2019年に行われた同様の調査から24パーセントも上昇している。
調査では、BC州の多くの親が、仕事や家計でストレスを感じていることも浮き彫りになった。
また5人に3人は家計に貯蓄をする余裕がないと答え、5人に2人は毎日の生活やチャイルドケア、交通手段への支払いが厳しいと答え、生活費が家計を圧迫している現状が明らかになった。
調査は、今年2月4日から7日まで、BC州に在住する0歳から18歳までの子どもを持つ親を対象に実施された。