2019年9月26日 第39号

 毒キノコを食べた犬が死亡する事件が相次いで報告されている。

 ノバスコシア州ハリファックスでは愛犬のゴールデンリトリバーを失ったカップルが注意を呼び掛けた。デレク・シュローダーさんはCBCのインタビューに、散歩中に食べた毒キノコのせいで4歳の愛犬を安楽死させなければならなくなったつらい心境を語った。

 愛犬ダグが散歩中に毒キノコを食べたのは18日。その日のうちにけだるそうにしたり、嘔吐したりといった症状が現れたという。20日までには獣医に診察してもらい症状は徐々に改善。えさを食べたり、水を飲んだりと、回復の兆しを見せていたと振り返っている。しかし21日には様態が急変。再び獣医に診察してもらったところ肝不全を起こし、内出血を起こしていたという。そこで苦渋の決断で安楽死させることを決めたと語っている。

 獣医は毒キノコが原因とは断定をしなかったものの、シュローダーさんはやはり毒キノコを食べたせいだろうと語っている。

 またブリティッシュ・コロンビア州ビクトリア市では、やはり毒キノコを食べたことが原因とされる16週間の子犬が死亡する事件が起こっている。ビクトリアの動物愛護団体が事象を説明している。子犬の飼い主が病院での治療費を支払うことができないということで、動物愛護団体が費用を負担して獣医がケアをしたが死亡したという。

 2匹の犬が死亡するという原因となった毒キノコは「デス・キャップ」として知られるタマゴテングダケで、9月から10月かけて木の周りに生えているという。毒性が強く世界の毒キノコによる死亡事故の90パーセントは、このタマゴテングダケによるものとの資料もある。症状としては腹痛、嘔吐、下痢、筋肉障害、めまい、肝不全、腎不全などが挙げられている。

 動物だけではなく、2016年にはビクトリアで3歳の子供が食べて死亡したという事故も起きている。

 タマゴテングダケはBC州バンクーバー島、バンクーバー、フレーザーバレーでもよく見られるため、安全かどうかわからないキノコは口にしないよう呼びかけられている。

 

2019年9月19日 第38号

 ジャスティン・トルドー首相の政権維持に向けた厳しい選挙戦が始まった。トルドー首相は11日に記者会見し、「先ほど(ジュリー・ペイエット)総督と面会し、議会解散を要請、了承された」と語り、カナダは10月21日までの5週間にわたる本格的な選挙戦に突入した。

 連邦選挙法では、公式な選挙活動は最低36日間、最長50日間と定められている。そのため9月22日が最短選挙戦開始日だった。2015年の総選挙の時は70日以上という記録的に長い選挙戦を保守党が仕掛けたが、10年間続いた保守党政権は、この選挙で自由党に敗れた。カナダでは選挙戦が短いほど現政権に有利に働くといわれている。

 自由党は2015年総選挙で、338議席中184議席を獲得し多数派政権を実現した。野党第一党となった保守党は99議席、新民主党(NDP)は44議席、ケベック連合党は10議席、グリーン党は1議席だった。

 自由党が今回の選挙で多数派政権を実現するには、前回ほどの議席数は見込めなくても170議席以上が必要となる。

 現在の各党の議席数は、自由党が177議席、保守党95議席、NDP40議席、ケベック連合党10議席、グリーン党3議席となっている。

 自由党は今年2月に全国紙グローブ&メールが掲載して発覚したSNCラバランスキャンダルで、トルドー首相や首相事務所の意向に従わなかったジョディ・ウィルソンレイボルド議員とジェーン・フィルポット議員を自由党から除名した。こうしたことが響いて議席数を2015年選挙時よりは減らしている。

 保守党は党首選決戦でアンドリュー・シェア党首に敗れたマキシーム・ベニエ議員が離党しカナダ国民党を設立するなどで議席数を減らし、NDPは補欠選挙で議席を失っている。

 一方でグリーン党は昨年から連邦・州議会での得票数が伸びるなど人気急上昇中で、連邦補欠選挙で議席を獲得し現在エリザベス・メイ党首を含め3議席を保有している。

 支持率では自由党が、保守党をややリードしているが、ほぼ互角。現在の支持率から算出された議席数では、両党とも選挙には勝っても多数派政権を実現できる確率は低い。そうなれば、どちらが政権を取るにしてもNDPもしくはグリーン党がカギを握る党となる。

 激戦が予想される今年の総選挙。まずは10月7日英語、10月10日フランス語での党首討論会が注目される。

 

2019年9月19日 第38号

 カナダ国民党マキシーム・ベニエ党首が、10月に実施される英語とフランス語の党首討論会に参加することが17日分かった。前回党首討論に参加できる党が発表されたときには参加条件を満たさないとして外されたベニエ党首だったが、再検討の結果、条件が整ったとして党首討論委員会が討論会へ招待し、ベニエ党首が了承した。

 元カナダ総督デイビッド・ジョンストン氏が委員長を務める委員会は、党首討論会への参加の条件として3項目のうち2項目を満たす必要があるとしている。

 3項目とは、選挙戦に突入した時点で議会に党として前回の選挙で当選した議員を有していること、今回の総選挙の選挙区90パーセントで候補者を擁立していること、候補者が前回の選挙で4パーセントの得票率を獲得しているか、もしくは今回の選挙の世論調査で議席を獲得できる可能性がある候補者がいることとなっている。

 前回の委員会の発表ではベニエ党首が討論会に参加できない理由として、3項目のうち選挙区90パーセントへの候補者擁立の項目の一つしか満たしていないためと説明していた。しかし、もし他の条件を満たしていると証明できればベニエ党首の参加の可能性もあり得るとの見解を示していた。

 そのため、党は議席獲得の可能性がある候補者のリストを提出し、ベニエ党首ほか、4人の候補者が当選の可能性があると主張、2つ目の参加条件をクリアしたと認められた。

 カナダ国民党はベニエ党首が今年1月に正式に選挙管理委員会に登録した政党で、ベニエ党首自身も前回の選挙では保守党として当選している。

 今回のベニエ党首の参加決定について、新民主党(NDP)ジャグミード・シング党首は、偏った政策により国民を二分するようなメッセージを拡張することで支持を得るというベニエ党首が討論会に参加することは間違っていると思うと記者会見で語っている。

 ベニエ党首は、多文化主義の廃止や環境問題対策の不要などを訴え、白人至上主義者や極右主義者の支持を取り込む政策を打ち出している。

 党首討論委員会が主催する討論会は2回開催される。1回目は英語で10月7日に、2回目はフランス語で10月10日。討論会は主要メディアで放送され、オンラインでも無料で配信される。また英仏以外の言語でも視聴可能になる予定で、先住民族言語でも放送される予定になっている。両討論会ともケベック州ガティノーにあるカナダ歴史博物館で開催される。

 参加するのは、自由党ジャスティン・トルドー党首、保守党アンドリュー・シェア党首、NDPジャグミード・シング党首、グリーン党エリザベス・メイ党首、ケベック連合党イヴ‐フランソワ・ブランシェット党首、カナダ国民党マキシーム・ベニエ党首。

 トルドー党首は他の討論会には参加しないと公表しているため、6人が揃うのはこの2回のみとなる。

 

2019年9月19日 第38号

 公式に選挙戦に突入したのが今月11日、そして14日には議会解散後最初となる世論調査結果が発表された。調査をしたのは世論調査会社ナノス・リサーチ。11日から3日間かけて1200人に電話インタビューで調査した。

 調査は、今日投票が行われればどの党に投票するか選択肢を2党にしてランク付けで回答を得ている。その結果、最も支持率が高かったのは自由党で35・4パーセント、次いで保守党32・8パーセント、その差はわずかでほぼ互角となっている。続いて新民主党(NDP)15・7パーセント、グリーン党9・5パーセント、ケベック連合党3・6パーセント、カナダ国民党2・4パーセント。

 首相としてふさわしい党首はとの質問には、ジャスティン・トルドー党首が約35パーセントでトップ、次いで保守党アンドリュー・シェア党首25パーセント、NDPジャグミード・シング党首9パーセント、グリーン党エリザベス・メイ党首8パーセント、カナダ国民党マキシーム・ベニエ党首3パーセント、ケベック連合党イヴ‐フランソワ・ブランシェット党首は2パーセントだった。ケベック連合党はケベック州のみで連邦議員を選出するため全国的な支持率は低くなる。

 首相としての知名度があるトルドー首相がシェア党首を大きく引き離して首相にふさわしい党首でトップを取ったが、党としては自由党は保守党とほぼ互角。2015年総選挙時には「サニーウェイ」をキャッチフレーズにそれまでの保守党とは異なる男女平等、開かれた政府を実現すると語っていたトルドー党首だったが、4年間の政権ではこれまでの政治と変わらないとの印象が有権者に残ったことは否めないと専門家は語っている。

 

2019年9月19日 第38号

 ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー市ケネディ・ストゥワート市長は増え続ける薬物過剰摂取による死亡者を救済するために、法改正が必要との見解を示した。

 10月の選挙に向け各党党首がバンクーバー入りする中で、すでに自由党ジャスティン・トルドー党首、新民主党(NDP)ジャグミード・シング党首、グリーン党エリザベス・メイ党首と会談している。総選挙でも薬物中毒患者救済は争点の一つで、特にオピオイドによる死亡者数の急増は全国的な傾向として危惧されている。中でもバンクーバーが突出している。さらに最近ではヘロイン関連でも死亡者が急増していて、ストゥワート市長は早急な連邦政府の対策が必要と訴える。

 BC州検視局によると、2016年から2019年6月までの薬物過剰摂取によるBC州での死亡者数は4559人で、そのうち4分の1がバンクーバーで起こっている。カナダ公衆衛生局によると、2016年6月から2018年12月までのオピオイド関連の過剰摂取によるカナダでの死亡者数は1万1577人。

 ストゥワート市長は、薬物中毒者に安全に薬物を提供できる画期的で現実的な方法を実施することが、過剰摂取による死亡者数急増を抑える最善の方法と訴える。それは、一定条件で薬物使用を可能にする薬事法の免除で可能になるという。

 バンクーバー市は2003年に北米では初めて医療従事者が指導する薬物提供施設「インサイト」を開設した都市で、医師や看護師の指導の下で安全に薬物を摂取することで、感染症などを防ぎ、薬物中毒を完治することを目指している。自由党政権時代に薬事法の免除という形で可能になったインサイトは、2006年から政権を取った保守党が閉鎖しようと試みたが、2011年最高裁判所が保守党の閉鎖政策を棄却し公式のものとなった。

 以降全国で同様の施設が開設している。BC州ではさらに8カ所、アルバータ州で8カ所、オンタリオ州で22カ所、ケベック州で4カ所が開設。さらにオンタリオ州で4カ所、アルバータ州で2か所、サスカチワン州、マニトバ州で各1カ所が計画されている。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。