2019年10月24日 第43号

 自由党は政権を維持したが過半数には満たなかった。要因は、ケベック州でのケベック連合党躍進による議席減少と、アルバータ州とサスカチワン州で議席を全て失ったことが響いた。

 その中には複数の閣僚が含まれていた。中でも驚きを持って捉えられたのが、2015年に誕生した第一次トルドー内閣から公安相を担当していたラルフ・グッドデール氏。1974年に初当選したベテラン自由党議員で、1993年に現在のサスカチワン州レジャイナ-ワスカナ選挙区で当選。自由党のみならず党外からの信頼も厚く、トルドー政権を支え続けた。今回は保守党候補に敗れた。自由党政権で数少ないベテラン議員を失った影響は大きい。

 自由党はアルバータ州エドモントン・ミルウッズ選挙区から出馬したアマジート・ソヒ天然資源産業相も落選した。

 保守党ではオンタリオ州ミルトン選挙区のリサ・レイト議員が落選。スティーブン・ハーパー政権時代には労働相などを務めた保守党の中でも進歩派で知られるベテラン議員。自由党から出馬した夏季五輪カヌー競技金メダリストのアダム・バンクーバデン氏に敗れた。

 元自由党保健相ジェーン・フィルポット議員は、SNCラバランスキャンダルでジョディ・ウィルソンレイボールド元司法長官を支持し、ジャスティン・トルドー首相に反旗を翻したため元司法長官とともに除名処分となり、今選挙では無所属で出馬したが、自由党候補に敗れた。

 

2019年10月24日 第43号

 全国で唯一4党による争いとなったBC州では、投票日前日には4党の党首がバンクーバーに集結する激戦となった。

 2015年の前回選挙では自由党が圧勝、しかし今回は保守党が躍進した。自由党は前回から7議席減らし11議席に、保守党は8議席伸ばし17議席となった。特に内陸部で議席を増やした。

 新民主党(NDP)は2議席減らして11議席となった。オンタリオ州トロント出身のNDPジャグミード・シング党首だが、今年の補欠選挙でバーナビー・サウスから立候補し当選。今回の選挙でも同じ選挙区で当選し、総選挙では初当選となった。

 グリーン党はバンクーバー島で2議席を獲得。エリザベス・メイ党首がサーニッチ-ガルフアイランド選挙区で3度目の当選、ナナイモ-レディスミス選挙区では今年の補欠選挙で当選したポール・マンリー議員が総選挙でも当選を果たした。

 無所属のジョディ・ウィルソンレイボールド議員はバンクーバー・グランビル選挙区で再選した。

 連邦5政党のうち、2党がBC州から党首を輩出する結果となった。その2党NDPとグリーン党が自由党少数派政権で、どれくらいの存在感を示せるのかが注目されている。

 

2019年10月24日 第43号

 カナダが嗜好用大麻の使用を合法化して10月17日で1年を迎えた。闇市場に流れるマリファナマネーを食い止めることが合法化の理由の一つとされていたが、1年経った現在でも闇市場といわれるライセンスのない販売店が依然多く利用されていることが明らかになった。

 カナダ統計局が発表した報告によると、市場調査に協力した回答者のうち29パーセントが合法的な店舗で購入していると答え、10人のうち4人は購入した大麻の一部は違法店で購入したことがあると答えたとしている。調査は今年4月から6月までの3カ月間実施されている。

 大麻愛好家が違法店で購入する背景には、価格と合法店舗数の少なさがあるという。

 大麻の使用は昨年10月17日に合法化されたため、自由に使用してもいいという環境は揃ったが、政府によるライセンス配布の遅れにより店舗の出店が遅れ、そのため違法店で購入して使用している人が多いという。

 また市場価格も違法店の方が安い。カナダ統計局によると、合法店舗では1グラム当たり平均10・23ドルだが、違法店では約半額の5・59ドルという。

 闇市場を正確には調査できないため、統計局の調査結果は使用者への質問による自己申告となっている。

 専門家は合法な市場が確立されるまではまだ時間がかかるとして、それまではおそらく違法販売店での購入者は減らないだろうと語っている。

 

2019年10月24日 第43号

 連邦総選挙は21日に自由党の少数派政権で終了したが、これに納得しない一部の保守党支持者が西カナダ独立を目指して選挙が終わると同時に活発に活動を始めた。

 フェイスブックやツイッターでは#wexit(イギリスのブレクジット同様にウエストとイクジットをもじった造語)がトレンドなり、フェイスブックではアルバータ独立運動を推進するサイトの立ち上げを宣言していた。フェイスブックのwexit参加メンバー数は、選挙直後の4千人から22日零時現在で20万人を超える数になっている。

 背景には連邦政府がアルバータ州を蔑ろにしているという州民の被害者意識があるという。アルバータ州民には、カナダの主要産業である石油・ガス産業が盛んなアルバータ州がカナダ経済の基盤を支えているという自負がある。それにもかかわらず自由党政権は、パイプライン建設を停滞させ、東部カナダには潤沢に支援しているにもかかわらずアルバータ州が苦しんでいるのを見過ごしている、東部カナダへ連邦政府が支援できるのはアルバータ州の石油産業の利益があるからで、それを無視してアルバータ州には恩恵どころか感謝の言葉もないと非難している。

 そんな自由党が再び少数派とはいえ政権を取ったことで、アルバータ州民、特に石油関連に就く州民の不満が爆発し、そんな政権なら独立した方がいいと選挙終了後から一気に火がついた。今回の総選挙でアルバータ州では新民主党が1議席を獲得した以外は全て保守党が当選し、自由党候補は閣僚経験者も含めて全て落選している。同様に天然資源産業が盛んなサスカチワン州でも、自由党が1人も当選しなかった。

 専門家は現実問題としてアルバータ州がカナダから独立することは決してアルバータ州の石油産業にとって現状が改善するとはいえないが、独立を本気で呼びかけるくらいに州民は連邦政府に置き去りにされているという意識が強いのだろうと分析している。

 アルバータ州経済は、2014年の原油価格下落の影響を受けたまま、いまだに立ち直れないでいる。失業率も高く、経済的な不安が拭いきれない。にもかかわらず、トランスマウンテン・パイプライン拡張工事計画は遅々として進まず、他の2本のパイプライン建設工事は白紙撤回、うち1本はアルバータ州からケベック州を通って東海岸に抜ける計画だった。しかしケベック州が猛反対したため計画は白紙となった。ケベック州は優遇するのにアルバータ州は軽視しているとのストレスが爆発した。

 ジャスティン・トルドー首相は開票直後の勝利宣言で、「アルバータ州とサスカチワン州の痛みは十分に伝わっている」とメッセージを送ったが、アルバータ州民には届いていないようだ。

 

2019年10月24日 第43号

 世界で注目を集めるスウェーデン出身16歳の環境活動家グレタ・トゥーンベリさんが18日、アルバータ州エドモントンを訪問した。

 石油・ガス産業が主要産業のアルバータ州は、カナダで最も環境問題に敏感に反応する。特にアルバータ州のオイルサンドは温室効果ガスを大量に排出するとして環境活動家からの攻撃の対象となっているからだ。

 しかも2014年のオイルショック以来、アルバータ州は経済的に厳しく国内でも高い失業率となっている。

 そんなアルバータ州に16歳の環境活動家が訪問し注目を浴びた。この日エドモントンには環境問題に高い関心を示す若者を中心に、約4千人がトゥーンベリさんと一緒にデモ行進をした。

 大勢の若者を前にトゥーンベリさんは「アルバータ州での温かい歓迎に感謝します。エドモントンでみなさんと一緒にいられることを誇りに思います」と語った。

 この日のデモは世界中で若者を中心に金曜日に学校を休んで行われているデモ行進の一部。私たちが学業を犠牲にしてもデモを行っているのは、私たちの未来が危機に瀕していることを訴えるためと語った。

 このデモに反対する石油関係者のデモも行われたが、大きな衝突はなかったと警察は発表している。

 しかし20日には、エドモントンの壁にスプレーで描かれた巨大なトゥーンベリさんの肖像画の上に、彼女を非難する落書きがされているのが見つかった。「うそをつくな」、「ここはオイルカントリーだ」と顔の上にスプレーで書かれていた。書いた本人はCBCのインタビューに答え、「環境活動家がアルバータに来て自分たちの生活をとやかくいうことは絶対に許されない。自分の国に帰って自分の国を良くすればいい」と語っている。

 落書きは他にもトゥーンベリさんを誹謗中傷する単語がフランス語でも書かれていた。

 連合保守党のアルバータ州政府はトゥーンベリさんの健闘を称えたが、面会する予定はないと声明を発表した。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。