2019年10月31日 第44号

 総選挙で過半数に足りず少数派政権として2期目を出発することになった自由党ジャスティン・トルドー首相は23日、選挙後初めて公式に記者会見を開いた。

 通常は選挙翌日に党首が記者会見を開くのが通例となっているが、投開票翌日の22日は行わずこの日の会見となった。

 注目されたのは選挙協力について、トルドー首相は、連立を組む予定はないと連立政権を否定。法案によってその時々で意見を同じくする党と協力すると語った。

 21日の勝利宣言では、国民が我々に新たな任務を与えたと支援者を前に興奮気味に語ったが、この日の記者会見ではかなり抑えた口調で第2期政権に向け厳しい現実に直面している実感を込めた。

 アルバータ州とサスカチワン州で全ての議席を失ったという現状がある。第1期政権では、環境問題に真剣に取り組むと宣言しながらトランスマウンテン・パイプライン拡張計画を承認し、環境活動家や先住民族、若者らが離れていった。にもかかわらずパイプラインを推進する両州で1議席も獲得できなかったことは、自由党にとって厳しい現実が待ち受けていることを意味する。

 また少数派政権ということで、法案可決には野党の協力が必要となるが、多くの場面で新民主党の協力を仰ぐことになる可能性が高い。そうなれば、新民主党は自分たちがこれまでに公約としてきた政策を要求してくるとみられ、膨らむ一方の借金財政がさらに苦しくなる。

 とりあえずの仕事は組閣。トルドー首相は11月20日内閣を発表すると語った。その後、最初に取り組む公約は中間所得層への減税。そしてトランスマウンテン・パイプライン計画の実現も断言した。前途多難な第2期政権の船出、議会再開の日程を明言しなかったことが厳しい現実を物語っている。

 

2019年10月31日 第44号

 ブリティッシュ・コロンビア(BC)州政府は24日、国際連合で合意された先住民族への権利を守る宣言をBC州で導入する手続きに入ったと発表した。この日の議会で第一段階として法案41が提出され、全会一致で可決した。

 国連は2007年9月にニューヨーク国連本部での第61期国際連合総会で、「先住民族の権利に関する国際連合宣言」を決議した。これには先住民族の基本的人権の保障、所有権と文化伝統の保護を保証する内容が盛り込まれた。

 この宣言をBC州に導入するというのが今回の法案。先住民族代表らとともに作成された法案41がこの日議会に提案された。この中には、先住民族が所有する権利に関係する事象が生じた場合には先住民族の合意を必要とすることが盛り込まれている。

 BC州スコット・フレーザー先住民族関係相は、法案は、先住民族への差別をなくすこと、基本的人権を尊重すること、経済的公平性を保証することを目的としていると語った。

 可決されればカナダで最初の国連宣言導入となる。カナダは2007年の国連会議で宣言決議に反対した4カ国のうちの一つ。オーストラリア、ニュージーランド、アメリカとともに反対に回った。しかし2015年自由党政権になってカナダでも導入すると発表。2016年に新民主党ロメオ・サガナッシュ議員が動議を提出し、2018年に下院で可決するも、今年6月に上院で廃案となった。

 BC州ジョン・ホーガン州首相は、「この法案は先住民族の権利を基本的人権として尊重している点で非常に重要で、我々はBC州を、先住民族の人々の基本的生活とその他の州民の生活が同じレベルとなる州にしたい」と語った。

 この日のBC州議会には多くの先住民族のチーフが揃い、21日の選挙で当選した先住民族出身で無所属のジョディ・ウィルソンレイボールド議員も姿を見せた。

 

2019年10月31日 第44号

 女性の権利が世界でも認められている国として知られるカナダだが、所得に関しては男性と女性の間で依然として大きな開きがあることが明らかになった。

 カナディアン・センター・フォ・ポリシー・オルタナティブスが28日に発表した報告書によると、過去5年間でその差はほとんど埋まっていないことが分かった。このままのペースで差を埋め続けるとすれば、男女の所得が同じになるまでに164年かかるという。

 カナダでは2015年にフェミニストを自称する自由党ジャスティン・トルドー首相が政権を取り、男女間の差をなくすとして第1次内閣から閣僚の半数を女性議員にしたり、所得について男女平等にしたりと努力をしていると政府は説明している。しかし公共機関では浸透しても、民間で依然として開きがある。特に先住民族や移民者で開きが大きいと報告している。カナダ統計局の調べでは、大学以上の高等教育進学率は男子より女子の方が高く、移民に関しては学歴の高さは男子よりもはるかに女子が高いという。

 報告書は、1995年に中国北京で設定された国連の男女格差をなくす綱領にカナダが署名してから、その目標に向けてどれほど近づいているか、もしくは離れているのかを調査したものと説明している。

 

2019年10月31日 第44号

 連邦自由党ジム・カー前国際貿易相は25日、自身にガンが見つかったと告白した。連邦総選挙の投開票が21日に実施され、2期目の当選を果たしたばかりだった。

 カー議員の声明によると、多発性骨髄腫という血液のガンで、すでに化学療法を開始しているという。

 連邦議会は9月から約6週間続いた選挙戦を終え、10月21日に投開票が終了した。カー議員はマニトバ州ウィニペグの選挙区で自由党から立候補。アルバータ州、サスカチワン州と並んで平原地区と呼ばれる州にあって自由党が惨敗する中、次点を寄せ付けない圧勝で2期目の当選を果たした。

 しかしガンの宣告を受けたのは当選した翌日だったという。カー議員によると選挙期間中にインフルエンザのような症状があったため、医師の診察を受け、定期的に行っている血液検査を受けたと説明。すると当選が決まったその当日にすぐに病院に行くよう医師から連絡があり、翌日にガンの診断を受けたと説明している。

 カー議員は「状態はよく、気分も安定している」と語っている。すでにジャスティン・トルドー首相には状況を報告し、「これからも選挙区住民とカナダ国民のために尽くしたいと思っている」と議員を続ける意志を伝えたと語っている。

 カー議員は2015年総選挙でマニトバ州ウィニペグ・サウスセンター選挙区から立候補して初当選。第1次トルドー内閣で天然資源大臣に抜擢され、内閣改造後は国際貿易多様化大臣を担当した。

 天然資源産業と国際貿易を経済成長の柱に置く自由党政権で重要な大臣を歴任してきただけに、11月20日発表される第2期トルドー政権でも入閣は確実視されていた。

 トルドー首相は「時間をかけて自身の健康回復に集中して、元気になってくれると信じている。そしてマニトバ州民とカナダ国民のために尽力してほしい」とツイッターで励ました。

 

2019年10月31日 第44号

 ブリティッシュ・コロンビア州で続いている架橋の耐震工事で、28日からバンクーバー市ダウンタウンからグランビル・ストリートを南へと延びるグランビル・ストリート橋の補強工事が始まった。

 28日からの工事では橋の南側を集中的に行うため、両方向で中心側2車線が通行止めとなる。さらに11月には北側(ダウンタウン側)のシーモア・ストリートへと延びる傾斜路と、南側の4thアベニューに延びる傾斜路でも補強工事が始まる。工事は来年後半まで続く予定。

 グランビル・ストリートはダウンタウンからバンクーバー市を南に走りリッチモンドへと続くバンクーバーの目抜き通り。常に渋滞しているが、橋の耐震工事でますます渋滞が予想されるため、バンクーバー市は迂回や早めの計画を促している。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。